二章 六話
あの後、私は泣きやんで浅田君にお礼を言ってトイレに向かった。
そこで目の腫れが引くのを待って、家に帰った。
ガチャ・・・
無言で家の玄関を開ける。そして素早く自分の部屋に入った。
玄関に入った時わかった。美貴はいない。靴がなかった。
すぐあのことを言いたかったんだけどな・・・
あのこと。それは
私は浅田君が好きだということ。
『何かあったら・・・』そう言ってくれたのを思い出したから、美貴に相談しようと思ったが、残念だった。
私は美貴が帰ってくるまで私は予習をした。
もう父親にあんなこと言われないように。
2時ごろから夜の深夜まで、私はシャーペンを離さなかった。
~~~~~~~~~
午前0時ごろ、階段を上る足音がした。
・・・美貴?
こんな時間までどこ行ってたんだろう?
私は恐る恐る廊下を見た。
「あっ・・」
「美貴!遅かった・・・」
「しっ!!」
私はつい大声を出してしまった。美貴は口元で人差し指を立てている。
「お母さんたち起きちゃう。」
「ごめん・・・もう寝ちゃう?」
「いや、眠くはないけど・・・」
相談しよう。私は美貴の手を引いて自分の部屋に入れた。
「どうしたの?」
首をかしげながら聞く美貴。
私は今日解ったことを美貴に告げた。
「え・・・ほんと!?」
つい大声を出しそうになった美貴だが、抑えた。目を丸くしている。
「う・・・うん・・・」
はずかしい・・・誰かが好きってこと美貴に言ったのは初めてだから。というか、これ初恋。
暫く美貴は驚きを隠せないのか、放心状態だった。
そんなに驚いたのかな・・・
「み、美貴・・・?」
私は美貴の前で手を上下に振る。
「あっ!ごめん。」
正気に戻りましたね美貴さん。
「えっと・・・わかった。これは美夏の初恋だよね。協力して何がなんでも成功させるよ!」
美貴は自信に満ち溢れた目で私の両手を握った。
「あ、えっと・・・有難う・・・」
「いいの!嬉しいよ。美夏に好きな人できて。しかもそれが浅田君だし、安心っ!」
何が安心なのか、よくわからなかったけど、とりあえず笑っておいた。
それからしばらくずっとそのことについて布団に入りながら話していた。この日は久々に2人で一緒に寝た。
~~~~~~~~~
その日から2,3カ月ほど過ぎたある日、私は一人で留守番だった。
美貴と両親は出かけている。美貴に誘われたが、私は断った。
あんな親となんて行きたくない。
私は机に立てかけてあるひつつの写真立てを手に取った。
それは、今から2カ月前の林間学園の時の写真。写っているのは、私と浅田君。
美貴が不意打ちだけど撮ってくれた。
林間の班は美貴が仕掛けて、浅田君と一緒になった。その時、いつもより沢山話せて、とても幸せだった。
美貴にはどんなお礼をすればいいか、いまだに悩んでいる。
この写真をみていると、自然と顔がやけてくる。自分が気持ち悪いと思いながらも、顔は笑みに変わってしまう。
この写真のおかげで勉強もいい感じになった。前見たくお父さんに言われることはなくなった。
私は、どんどん浅田君を好きになっていく。
―――――――プルルルルルルルル
電話だ。
私は部屋にあらかじめ置いてあった電話をとり、通話ボタンを押した。
「はい、橘です。」
「え?」
・・・え?
「えっと・・・」
この声・・・友達の・・・
小さな声で、「番号まちがってないよね?」と会話が聞こえる。
まって・・・?
連絡網には、美貴の番号はそのまま家の番号が書いてある。私は親が美貴に買ってあげた携帯の番号が書いてある。
この電話は、美貴?
「その声・・・美夏だよね・・・?」
その時、足元から何かが崩れていく音がした。