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魔法の射手(マジックシューター)~この矢はきっと誰よりも遠い場所へと届く~  作者: らる鳥


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「つまりおま……、いや、貴方は、森の奥にゴブリンの町があって、場合によっては万単位のゴブリンがここに押し寄せてくるって、そう言ってるんだよな?」

 僕らが他所の冒険者組合からの応援だからか、或いは格上の冒険者と見做してか、パリファントの冒険者は精一杯に丁寧な態度を取ろうとしながら、そう尋ねた。

 まぁ、あんまりできてないけれど。

 だが別にそれはいいとして、そうとしか聞こえない風に話した心算なんだけれど、何で確認の必要があるんだろう?


 僕は疑問に思いながらも頷いて、

「そうだね。場合によってはというか、やがては対処できない数のゴブリンが送り込まれるのは確実だと思うよ。今回でも防ぎ切れるかは、相当厳しかった筈だと思うし」

 少し言葉を付け加える。

 万単位のゴブリンが押し寄せてくるかはさておいて、次の襲撃では、さっきよりもゴブリンは数を増やして攻めて来る筈だ。

 僕らが加わってるから、二百くらいまでなら、攻めて来ても何とかなるとは思うんだけれど、それ以上となると、先程の戦いで得たゴブリンの魔石を使い潰しながら魔法を使う事になるだろう。


「……だとしてもだよ。本当にそんな数のゴブリンが、その町とやらにいるのか? 対抗する為に大動員をかけて、見間違いだったじゃすまないんだぞ。そもそもさ、そのゴブリンはどうやって増えたんだ?」

 確かに、町も多くのゴブリンも、見たのは僕一人だ。

 人を動かすには大量の物資が、つまり金が必要だから、もしも僕が嘘を吐いてたら、その全てが無駄に浪費される事となる。

 もしそうなったら、責任を追及されるのは僕だけじゃなくて、パーティの仲間はもちろん、同じ村で共闘しているパリファントの冒険者にも及びかねない。

 目の前の彼は、それを心配しているのだろう。


 また、確かに、どうやってゴブリンが増えたのか。

 そこには些かの謎があった。

 森の動物の胎を借りるだけじゃ、そこまで大量にゴブリンは増えない。

 人間の村が幾つも潰され、大勢の女性が攫われたなら、ゴブリンがその胎を使い潰しながら数を増やしてもおかしくはないが、今のところは村はちゃんと守られているのだ。


 確かに多くのゴブリンが攻めては来ているけれど、理屈が通らないじゃないかと、彼が僕を疑うのも、そりゃあ無理のない話であった。

 ただ、それに対する答えを、僕はちゃんと持っている。


「あぁ、それは多分、大量にゴブリンを生める変異種が、雌が生まれたんだと思うよ。上位種はホブゴブリンとか、ゴブリンシャーマンとか、ゴブリンプリーストの事を言うんだけれど、ゴブリンの変異種は雌の事を言うんだ。生まれる確率は上位種よりも低いし、生まれると巣で大切に守られるから、あまり知られてないんだけれども」

 普通の冒険者は、そこまでゴブリンに関して詳しくはない。

 だけど僕は魔法使いで、魔力と同じくらいに知識を武器としなきゃいけない立場だから、今回のゴブリンの大繁殖を知ってからではあるけれど、賢者の学院の文献を色々と漁ったのだ。

 故に僕は半ば確信を持って続く言葉を口にする。

「そして今回の巣は、変異種の中でも上位の、多産のゴブリンが生まれてしまったんだと思う。多分それがあの町の支配者。ゴブリンの女王だ」

 即ち、そのゴブリンの女王こそが、全ての元凶であると。


 こんなの、当たり前の事なんだけれど、僕らだけで話し合っても解決策なんて出てこない。

 パリファントだけでなくシャガルの冒険者組合も、冒険者組合だけでなく賢者の学院や領主も、全て巻き込んで、人間側も数を以て対処せねば、どうにもならない話だった。


「……俺達は、どうすればいい?」

 堂々と告げた僕の言葉に確信を感じたのか、絞り出すように、パリファントの冒険者が問う。

 話の規模が大き過ぎて、自分が一体何をすればいいのか、全く思いつかない様子で、答えを僕に求めてる。


 まぁ、仕方のない話だった。

 仮に僕が逆の立場でも、いきなりこんな話を聞かされたなら、どうしていいかわからずにわたわたとおたついてしまうだろうし。

 僕がこうやって話せているのは、事前に変異種の存在を調べたり、実際に町や多くのゴブリンを見て、既に思考が纏まり、覚悟ができているからに他ならない。


 ……パーティの仲間に動揺がないのは、恐らく、僕を信じてくれているからだと思う。


「まずはパリファントやシャガルの冒険者組合に連絡を送ったら、基本的には今までと同じ。ゴブリンが来たら村を守る。だけど、守り切れない数が来る可能性もあるから、避難の準備も進めよう。ゴブリンの動きや規模は僕が見張るから、村を攻められる前にわかるよ」

 パリファントの冒険者達が僅かでも安心できるように、僕はなるべく平然と、笑みを浮かべながら彼らに告げる。

 どうにかなるとか、大した事じゃないとは流石に言えないが、それでも逃げる時間くらいはあるのだと。

 慌てふためく必要はないし、慌てふためいたところでどうにもならない。

 そう考えれば、開き直るくらいはできるから。


「わかった。貴方にばかり負担を掛ける事になってすまないが、どうかよろしく頼む」

 パリファントの冒険者の言葉に、僕はやっぱり笑って頷く。

 負担に関しては確かにそうだが、これは僕にしかできない事だから仕方ない。

 僕がそれを厭えば、自分やパーティの仲間が危機に晒される。

 他がどうでもいいって意味ではないんだけれど、自分達が生き残る為の行動で、彼らの生存率も上がるなら、それでいいじゃないかと思う。

 どのみち、やる事は変わらない。


 また避難に関しては、来たばかりの僕らが言うよりも、長く村を守ったパリファントの冒険者に言われた方が、エーレン村の住民達も従い易い筈だ。

 互いに、立場もできる事も違うんだから、その範囲内で最善を尽くせばいいだろう。

 そうした最善が積み重なって初めて、今回の依頼を無事に終えられる可能性が生まれる。

 今はそんな状況だから。



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― 新着の感想 ―
ゴブリンの雌といえばゴブリナ!? エイリアンの卵ルームが思い浮かんだけど、ゴブリンクイーンは五つ子とか六つ子とか数日置きに産むんだろうか。 腹が巨大化して複数の子宮かあるとか……?
国が対処しなきゃいけないレベルの話に成ってきたね。
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