表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ケラソの家のタゥ  作者: yahagi
劇的な再会
99/191

駆け比べの祭

 いよいよケラソ族の祭の日がやってきた。

 ケラソ族の祭はラプカの駆け比べである。


 中央の広場からスタートし、東西南北の広場を順当に抜け、中央の広場を一周してゴール、である。


 タゥも祭を楽しみにしていたので、コースの下見は何度も行っていた。


「頑張って下さいね……あなた……。優勝賞品はなんと、銀貨100枚だそうですわよ……」


 くすくすと笑うレアは、観戦する気満々だ。


「レア、具合が悪くなったらすぐに休むのだぞ。お前は今月、二度も倒れているのだ」


「わかっておりますわ……」


 今朝のレアは、そのように言っていた。


 時刻は中天、今日のケラソ族は狩りはお休みである。

 今は中央の広場に参加者が並んでおり、がやがやと祭の開始の声を待っていた。


 400名からなるケラソ族でも、参加するのは200名程である。

 皆自慢のラプカを連れて、広場に並んでいた。


 ロープが張られた観客席には、女達が軒を連ねて観戦している。

 今日ばかりは家に閉じこもっている者はおらず、中央の広場に来れなかった者は、東西南北の広場に散っていた。


 笛が鳴り響き、太鼓の音が鳴らされる。

 族長ラピグゥの声が、雷鳴のように響き渡る。


「待たせたな、お前達よ! ここに、祭りを開催する! 優勝者には銀貨100枚を与える故、是非頑張って欲しい!」


 ウォォォと、応える男達の声が爆発した。


「それでは、駆け比べを始める! 用意、スタート!!」


 族長ラピグゥのかけ声に、ラプカに乗った狩人達が、少しずつ走り出した。


 タゥは人混みに紛れながら、なんとか中位置にいた。

 それにしても、人混みの中だとスピードを出し辛い。

 タゥは早くも窮地に陥りかけていた。


 そんな時、寄ってきたのがサランだ。


「タゥ、人混みの中では走り辛かろう。ほら、そこに抜けるのが上手い奴がいる。参考になるぞ」


 見てみると、前の奴にラプカの鼻先を突っ込み、上手に身体をねじ込んでいる。


 タゥはサランに礼を言って、前の奴を真似てみた。

 すると、するすると前に出て、上位5位まで躍り出た。

 ここまで来ると、ラプカのスピードがものを言う。

 セグの本領発揮だ。

 タゥは北の広場を走り抜け、トップに立った。

 しかし、二頭後ろから着いてくる。


 そこからはデッドヒートを繰り返し、中央のゴールテープを切ったのは──


「一位は、キサラの家のサフラ! 二位はケラソの家のタゥ! 三位はゴリキの家のキリト!」


 族長ラピグゥの声に、一斉に歓声が爆発した。


「よう。お前の走りは凄かったぜ。まだ若いのに凄いじゃねぇか」


「あんたが一位のサフラだな。最後の差しは凄かった。俺も得る物があったよ」


「俺はキリトだ。皆、速いラプカに乗ってんだなぁ。一足遅れちまったよ」


 男三人でがっちりと握手して、健闘を称え合った。


 観客席では、特別参加のジャックが上機嫌で待っていてくれた。


「よぉ、惜しかったな。でも初参加で二位ってすごいよな。おめでとさん!」


「応援ありがとう、ジャック。祭はまだ続くから、楽しんで行ってくれ」


「おうよ! これからご馳走が出るって言うし、楽しみだぜ!」


 そこから少し歩くと、レアが見えた。マリアとリマとリズも一緒である。


「二位、おめでとうございます、あなた……。あちらにやぐらが用意してあるそうですわ……」


「じゃあ、行こうか。マリア達も旦那を待っているんだろ?」


「うんっ、そーだよ。アスロはまだゴールしてないみたいなんだよねー」


「エンジュは16位だったよ。あっ、こっち来た! 行ってくるね」


「家の旦那もまだみたい。タゥ、二位って凄いねぇ。おめでとう!」


「ありがとう、リズ」


 レアと共にやぐらに移り、しばし談笑する。

 しばらく経って、全員がゴールしたようである。


「駆け比べの結果を上位三名まで表彰する。やぐらにいる上位者よ、前へ!」


 族長ラピグゥの声に、俺達は前に進み出た。

 100名からなる観客の中、俺達は一人ずつ名前を呼ばれた。


「では一位は、キサラの家のサフラ! 優勝者には、銀貨100枚を与える!」


 キサラは金一封の板を受け取り、懐に収めた。


「では次に、二位はケラソの家のタゥ! タゥには新しき刀を贈る! タゥは二刀流である為、二本贈ることとする!」


 タゥは真新しい刀を二本受け取り、礼をして下がった。


「次に、三位はゴリキの家のキリト! アカネの実の酒を一年分、贈ることとする!」


 キリトは礼をして、下がった。


「この三名に祝福の拍手を! さぁ、宴だ!笛を鳴らし、太鼓を叩け! 今日は年に一度の祭である!」


 ラピグゥの声に、観客は大いに盛り上がった。



 やぐらで料理を待つ間も、レアは大層ご機嫌であった。


「あなたの名はこれで、全てのケラソ族に、行き渡った事でしょう……。あなたは偉業を成し遂げたんだわ……」


「優勝したわけでもないのに、随分な評価だな。まぁ、レアが嬉しいならそれで良い」


 やぐらの外では、未婚の娘達の舞が披露されていた。

 華やかで激しいその舞は美しく、タゥの目を楽しませた。


 やがて夕刻となり、宴料理が届き始める。

 かぐわしい香りがやぐらを満たし、まずは優勝者夫妻から料理が届けられているようだった。


「こちら、ホプマの実入りのシチューです。お熱いのでお気をつけ下さい」


「ああ、ありがとう」


 娘達は料理を配膳して去っていく。


「ホプマの実入りのシチューなんて、気が利いてるな。……うん、美味い。レアもこの味は好きだろう?」


「ええ‥…。大変美味しいですわ……」


 レアも幸福そうに微笑んだ。


 肩肉の煮込みや、胸肉と卵のサラダ、ハンバーグに揚げ物、付け合わせのパンまで食べて、今日の特別料理がやってきた。

 ウスルスの丸焼きである。


「こちら、特別料理のウスルスの丸焼きです。どの部位がお好きですか?」


「背中の肉を貰おう」


「わたくしは……モモがいいですわ……」


 望みの部位を貰い、さっそくかぶりつく。

 脂がじわっと甘く肉も旨味が強く、最高に美味しかった。


 ケラソ族の祭は日没を迎えても続き、実に華やかな様相であったという。

 タゥはケラソ族で二位の称号を手に入れ、益々その名を轟かせる事になったのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ