表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ケラソの家のタゥ  作者: yahagi
劇的な再会
86/191

今夜はここまで

「タゥハリス様! まさかご存命とは……! そのお顔、しかと覚えておりますぞ! よくぞ生きていて下さった……!」


 家屋に入ったタァーレは、タゥを見るなり跪いて頭を下げた。

 細身の、壮年の男性で、眼鏡をかけている。

 タゥはタァーレに見覚えがあった。


「タァーレ、世話をかけたな。だが、俺はもう、ただのタゥだ。頭を上げてくれ。王籍を抜けた事は、何遍でも陳謝させて貰う」


「どちらにせよ、奴の在位中は危険が伴った事でしょう。奴はタゥハリス様を危険視しておりました。奴の力を削ぐのに時間がかかりすぎた事だけは、悔やんでも悔やみ切れません」


「タァーレ、とにかく兄さんが生きてて良かったよね。奴も始末したし、良いことづくしだ。僕の治世は、明るいよ」


「はっ、誠にようございました。これで陛下の孤独も埋められる事でしょう。ところで、そのご婦人はもしやタゥハリス様の……?」


 レアに視線が集中し、レアは静かに挨拶した。


「タゥの妻、レアですわ……」


「おお、やはり! ご結婚おめでとうございますぞ! これで御子が産まれれば、何にも言うことはありませんな!」


 レアは俯いて、頭を下げた。


「そしてジャック! お前は陛下に重用される事になった。ゆめゆめ陛下にお仕えするが良い」


 そう言われたジャックは、困り顔だ。


「ジャックの仕事は道具屋だもんね。大丈夫、本業に支障のない程度だよ。たまには僕の為に力を使ってくれると嬉しいな」


 イェヤクリスが屈託なく笑う。

 ジャックは観念して、笑顔を見せた。


「わかったよ、陛下。俺に出来ることならやってやるよ」


「頼りにしてるよ、ジャック。僕はこれでも鍵を持つ人間を調べ尽くしていてね。君のことは良く知っているつもりだ。伊達や酔狂で君を選んだ訳ではないと、信じてくれ」


「ええ、そりゃどうも……。参ったな、国王様っておっかねぇな、タゥ」


「そりゃあ、そうだろ。国を統べるだなんて、今の俺には想像もつかないが、綺麗事だけじゃやっていけなかっただろう。俺のことは陛下に隠し立てしなくていいからな、ジャック」


「それは助かるなぁ。兄さんの事はこれから調べ上げるからね。ジャックが協力的だと嬉しいな」


「いいのかよ? 俺、かなりお前のこと知ってるぜ? あんな事やこんな事も喋っちまっていいのかよ?」


「線引きはジャックに任せる。それに俺、そこまで隠し立てするような生活してないつもりだからさ。ま、陛下は何でも知りたがるだろうから、程々にな」


「商談成立だね。所でキリクっていう情報通がいるでしょ? ケラソ族で有名だよね。僕、そいつにも鍵を渡したいんだ。情報は、力だ。力の使い方が上手い男には、僕の身分を明かしていいと思ってる。渡りを付けられるかな?」


「キリクを引っ張り出すのは、俺が引き受けましょう。明朝で宜しいですか?」


 そう言ったのは、サランだった。


「うん。いいよね、ジャック?」


「ああ。これはキリクにも良い話だし、俺も賛成だ。明朝、キリクに道具屋まで来るように言ってくれ。馬車を用意しとく」


 サランは頷いて、頭を下げた。


「じゃあ、今夜はここまでかな。随分夜も更けてきたし、切り上げよう。兄さん、また会いに来るからね。貴族関連の手配は、ジャックに伝えておくから、宜しくね」


「ああ。本当に、会えて嬉しかった、イェヤクリス。お前も無事で……本当に良かった」


 タゥはイェヤクリスとがっしりと抱擁した。

 弟の小さな身にのしかかる王の重責を思うと胸が痛むが、もう、過ぎた事だ。

 俺が王になる日はやって来ない。

 その事実が、タゥの胸を慰めた。


 イェヤクリスは、しっかりとかつらを被ってから帰って行った。

 去り際に、ジャックに囁く。


「悪いな。迷惑をかける」


「これぐらい、何てことねぇさ。弟と再会出来て、良かったな、タゥ」


 ジャックの笑顔は心強く、タゥも笑顔を返した。


「タゥが余所からやってきた事は族長ラピグゥのみ、知っている。俺が話に行くから、任せておけ。何、迎えは来たが連れ帰られる事はないと伝えるだけだ」


「父さん。俺を拾ってくれて本当にありがとう」


「タゥ、お前は俺の誇りだ。お前という息子を得られて俺は本当に幸せだ」


 サランは静かにラプカに乗って去っていった。


 残されたレアに促され、床につく。


「わたくしは……あなたが余所からやってきた子であると……知っていました……。あなたは8歳の時にやってきて、自分の事を私と呼称しておりました……。あなたは知的で、大人っぽくて、わたくしはすぐに熱を上げてしまいました……」


「そうか。俺がケラソ族に馴染もうと、努力していた頃だな。そんな頃から俺を好きでいてくれたのか。まぁ、初めは浮いていたように思う」


「あなたのようなケラソ族は他におりませんでしたもの……。でも、父ラピグゥに口外してはならないときつく言われて……それっきりでございました……」


「族長ラピグゥも俺が国王の兄であるとは知らない。お前も秘密を固く守ってくれ」


「かしこまりました……」


 そうして、劇的な再会を果たした夜は更けていった。

 タゥはイェヤクリスとまた会うのは、数年後の事になると考えていた。

 しかし、以外と早い再会になるのは、また別の話である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ