エオリオの主張
広間に着くと、兄ガイとその父が上座で、そしてもう一人が下座に座っていた。
前髪をまっすぐ切りそろえた男である。髪は群青色で、瞳は緑色だ。純朴そうな、優しそうな男である。
「ジュネ、来てくれたか。思いとどまってくれたようで何よりだ」
「何を言ってるのかわかんないよ。あんただれ?」
「失礼した。アイムの家のエオリオと申します。以後、お見知りおきを」
「ふーん。そのエオリオが、どんな用向きで僕に会いに来たの?」
ジュネの声は、辛辣だ。よっぽどエッチの邪魔をされた事が気に触ったんだろう。
「俺は、ジュネの身を案じている。タゥは男前だが、妻も子を産む娘もいる。お前が傷つく姿を見たくはない。出来れば即刻別れて欲しい」
「そんなの僕の勝手でしょ。っていうか、僕の身は僕のものだから。どうしようと僕の自由でしょ。その結果泣くことになっても、後悔しないよ」
「それでは遅いのだ。俺はジュネの幸福を守りたい。ジュネの幸せを守れるのは、決してタゥではあるまい。二人きりでいては、何をされるかわからん。こうして出て来てくれて、良かった」
「何って、エッチしてたんだよ。邪魔しといて偉そうに。一体、何が言いたいんだよ」
興奮気味のジュネを抑えるべく背中に手を回し、撫でてやる。
プンプンしていても可愛らしいジュネである。
「要するにこいつもジュネとエッチしたいんだろう。だから俺と別れて欲しいんじゃないか?」
「お、俺はそんな浮ついた気持ちでここに来たわけではない! とにかくジュネはその身を大事にして欲しい」
「へえ。僕とエッチしたくないって言うんだね?」
「…………したいです、ごめんなさい」
「じゃあさ、言うけど何で他の人の邪魔をするわけ? 自分だってエッチの邪魔されたら腹が立つでしょう?」
「お、俺はただ、ジュネの身体を守りたくて……」
「そういうのはお兄ちゃん達だけでお腹いっぱいなんだよ! だいたい、もう処女でもないのに何を大事にするって言うのさ!」
「そんな……。もうすでに汚されてしまったというのか、ジュネ」
「そうそう。もう汚れてる僕はお呼びじゃないんでしょ? お帰りはあちらだよ」
ジュネは打ちひしがれる男に容赦がない。
しかし、エオリオは諦めなかった。
「汚れた君も美しい。どうか君を愛させてくれ、ジュネ。俺も君に触れたい」
やっぱりそういう話になるわけである。
「お生憎様。僕はタゥに夢中なの。いい? タゥと楽しいことをしてる時に邪魔してきた男となんて、する気にならないね」
エオリオはがっくりとうなだれた。
「俺なら……君だけを愛する事が出来る! ずっと、ずっと大切にする。俺を選んでくれ!」
「ごめん。僕、女の子と見合いを考えててさ。男はそんな重いのいらないんだ」
「そんな……」
今度こそエオリオは精魂尽き果てたような面持ちで去っていった。
「お兄ちゃんも父さんも、次はああいうの、入れないでよね! 僕とタゥの邪魔をしないで!」
怒った小型犬のような様相であったジュネだったが、怒ってスッキリしたようである。
「まだ、ちょっと時間あるよね。部屋に行っていちゃいちゃしようよ」
「ああ、いいぞ」
それで、ジュネの部屋である。
俺達は布団の上で口吸いをしていた。
ちゅ、ちゅっと音を出して吸い、舌を絡める。
舌を軽く吸ってから、そっと離れた。
「そろそろ時間だな」
「えー、もう? しょうがないなぁ、またすぐ会いに来てね?」
揺れる銀色の瞳に誘われて、俺はもう一度口吸いした。
玄関で見送られ、セグに乗って家路につく。
正直、不完全燃焼だ。
もっとジュネといやらしい事がしたかった。
言っても始まらないので、次に訪問した時の楽しみにさせて頂く。
時刻は中天、森に入る刻限が迫っていた。
今日は夕刻までに、二頭のウスルスを仕留める事が出来た。
解体小屋を目指し、三人でウスルスを運ぶ。
解体小屋に着いたら、解体だ。
三人で分け前を分け、リュックに詰める。
さぁ、凱旋だ。
今日の出迎えは、ルネーの家のマリアに、ヤジュの家のリズ、ナッキの家のリマである。
「おーい、こっちだよ! 怪我がなくて何よりだね!」
そう声を上げたのは、マリアだ。
「出迎え感謝する。では」
キーヤは礼をして去っていった。
「今ね、リズのお見合いの話をしてたの。両家とも乗り気でね。これで決まったら、リズも人妻だね」
「まだわかんないよ、お姉ちゃん。でも、今回の相手は、私も好みなんだよね」
「見合いの日程は決まったのか?」
「うん。来週の30日に決まった」
エンジュの言葉に、リズは笑顔だ。
「じゃあ、来週が楽しみだな」
「うん。結果は、皆に教えるからねっ」
俺の言葉に、リズは元気よく頷いた。
暫く雑談し、解散する。
タゥは薄暗い夜道をセグで疾走し、家路についた。




