巨体
中天になり、森へ入る。
今日の狩りの最中に、大人二人分位ある、馬鹿でかいウスルスを発見。
しかもこのウスルスは、腹を空かせていた。
人間に、襲いかかって来たのである。
「このでかさはやべぇっ! キーヤ、応援を呼んでくれ!」
エンジュの判断で、早速草笛が吹き鳴らされる。
タゥは二本の刀を持ち、ウスルスに立ち向かった。
通り過ぎ様、頸動脈を切り裂いたが、ウスルスは止まらなかった。
タゥは弾き飛ばされたが、すぐに木に登る。
「タゥ!」
「大丈夫だ。しかし、有効打がない──」
そんな刹那、ウスルスに何本もの矢が降り注いだ。
「タツのチームだ! 助太刀に参った!」
「タツの家か、助かった!」
「見たところ頸動脈は切ってあるようだが、まだ浅い! 矢をもう一度降らせろ!」
巨体のウスルスに雨のような矢が降り注ぐ。
何本も命中し、目を奪うことに成功した。
次は、刀の出番である。
「いくぜ、タゥ。おりゃああああっ」
雄叫びと共にウスルスの前に躍り出たエンジュと共に、タゥも反対側に陣取った。
ウスルスの突進に合わせて、刀を振るうエンジュを弾き飛ばし、タゥへと向かってくる。
タゥは裂帛の気合いを吐いて、右の刀と左の刀、両方で頸動脈を断ち切った。
勢いで吹き飛ばされたタゥであったが、無事である。エンジュも無事で、ウスルスは倒れた。
見れば見るほど、巨体のウスルスである。
「無事に討伐出来て、何よりだ。これほどの巨大なウスルスだ。俺達も運ぶのを手伝おう」
タツのグループがそう言ってくれたので、六人で巨体のウスルスを運ぶ。
解体小屋に着いた頃には、空は茜色に染まっていた。
六人で等分割して、分け前をリュックに詰める。
「今日は応援ありがとう。チームを代表して礼を述べさせて頂く」
キーヤがそう言うと、タツの家も礼を取った。
「少なからず助力になったのなら幸いだ。"英雄"の太刀筋は鮮やかであったな。では、失礼する」
そう言って去っていく三人を見送り、凱旋だ。
今日の出迎えは、ルネーの家のマリア、ヤジュの家のリズ、ナッキの家のリマである。
「おーい。エンジュもタゥも、泥んこだよ? 怪我はどうなの?」
そう、心配そうに問いかけてきたのはマリアだった。
「怪我はかすり傷だ。今日はさぁ、馬鹿でかいウスルスと当たっちまって、大変だったのよ。でも、皆元気に帰ってきたろう? そんな不安そうな顔すんなよ」
エンジュがリマを小突くと、皆も安心したように微笑んだ。
「タゥも、大変だったね。お疲れ様。怪我は大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ。心配かけちまったな」
「遠目に見えた時は怪我してるかも、って、マリアも真っ青になってたんだよー。ま、元気そうで本当に良かったよ」
そう話すリズは、まだ涙目だったりする。
「皆、心配かけてすまなかったな。出迎え感謝する。では」
キーヤは、礼をして去っていった。
しばらくマリア達とおしゃべりをして、解散だ。
タゥはセグに乗って家路に着いた。
「あなた……。マルスの家のランディを覚えていますか……? 嫁を交換して犯したいという願いを持った少年です……」
帰宅し、着替えた後。
晩餐を食べながら、レアの話を聞いていた。
「ああ、覚えているぞ」
「そのランディが……北で婚礼の儀を上げました……。お相手は、ナディアです……」
「ほう、そうか。めでたいな」
「ええ。初夜は済み、早速違う夫婦と嫁を交換して、楽しんでいる、というお話でしたわ……」
「初夜が済んだばかりなのに、もう他の嫁か。それにしても、いるものなんだな」
「ええ……。ケラソ族は結構融通がきくのだと、キリクが言ってましたわ……。筆頭はタゥ、あなただと言う話よ……」
「身につまされる話だな。しかし、ランディが幸福になれたなら良かったな。俺のところにまた来るんじゃないかと危惧していたのだ」
「ええ……。本当に良かった事……」
晩餐の時間は静かに過ぎていった。
夜、床を延べて、レアと二人、床につく。
柔らかなレアの身体を抱きながら、タゥはゆっくりと眠りについた。




