リズとの別れ
翌朝、ヤジュの家へ行くと言い、家を出てきた。
ヤジュの家まで徒歩で向かう途中、ラプカがいればなぁ、と欲しくなる。
今月ラプカを見に行こうと思っていて、まだ見に行っていない。
明日、町に行くつもりだったからちょうど良い。
明日はラプカを見に行こう。
「ケラソの家のタゥだ! リズに会いに来た!」
名乗りをあげ、戸板を鳴らすと、中で閂を外す音がした。
「ヤジュの家へようこそ、タゥ。待ってたよっ」
中から出て来たのは、元気いっぱいのリズであった。
リズの案内でリズの部屋へ向かうと、そこには布団が敷いてあった。
ごくりと唾を飲みつつ、布団に座る。
リズはタゥの隣に座り、身体を寄せてきた。
「ね、タゥ……、脱いで……。あたしも脱ぐから……」
タゥは装束を脱ぎ去り、布団の中に入る。
そこへ、全裸となったリズが滑り込んで来る。
タゥはリズを抱きしめて、ゆっくりとその胸に顔を埋めた。
「あっ、あっ、何か良いねぇ、こういう秘密の関係」
「何かあったのか?」
「あのね、お見合いの準備があるって言ったでしょ? それが本格化してきて、近日中に日程も決まるらしいの。近所のお家の次男でね、知らない子じゃないんだ。あっ、私達より一個下ね」
「へえ、そうなのか。めでたい話じゃないか」
俺はリズのへそを舐め、更に下へ──布団に潜り込んだ。
リズの足を開かせ、敏感な場所に唇を寄せた。
「あっ、あんっ、結婚したら、こんな風にタゥに会えなくなっちゃう……っ」
それには答えず、舌でそこを一心に舐め続けた。
半刻程経ったろうか。
リズの嬌声は止まず、部屋に響く。
「あっ、あっ、んっ、あんっ、いく、いっちゃう、あああーーーっ」
絶頂に酔いしれたリズが、起き上がってきたタゥに向かって両手を広げる。
「抱きしめて……っ、私はお姉ちゃんと違うの、結婚したらタゥとはもう……会えない……っ」
タゥはぎゅっとリズを抱きしめた。
「そうしたら、友達に戻ろう。寂しくなるけどな……。リズの幸福の方が大事だ」
「……うんっ……」
リズは涙声で頷いた。
「来週には、日程が決まると思うんだ。そうすると、ちょっとは身を慎まなきゃならないから……」
「そうか。じゃあ、今日が最後だな。リズ、今までありがとう。楽しかったよ」
タゥは、気持ちを込めてリズの頬に口付けを落とした。
「あたしも、いーっぱい楽しかったよ! タゥ、ありがとう。友達に戻っても、仲良くしてね」
「ああ。……ひとつ聞いて良いか? リズの旦那になる男はどんな男なんだ?」
「真面目で一本気で、浮気なんてぜーったいに考えない人。こないだちょっと会ったんだけど、言葉少なめで、でも、すっごく優しいの。聞いた話だけど、私のことを好いてくれているらしいんだ」
「そうか。見合いがまとまる事を祈ってるよ」
「うん。最後に、口吸いして……?」
タゥはちゅ、ちゅ、と口吸いし、舌を絡めた。
リズと舌を絡め合い、軽く舌を吸って離れた。
「これでタゥとお別れかぁ……。寂しいけど、しょうがないよね」
「ああ。旦那と喧嘩したらいつでも頼って来い。……俺も寂しいよ」
俺達は二人、力なく笑った。
服を着て、身支度を整える。
俺は狩りに向かい、リズは部屋に戻る。
背中に泣き声が聞こえたが、振り返らなかった。
今日の狩りは順調だった。
二頭のウスルスを追い、罠に追い込む。
とどめは、エンジュが刺した。
夕刻の茜色の空を見ながら、解体小屋を目指す。
空は真っ赤に染まっていて、タゥ達を真紅に染め上げていた。
解体小屋に着き、解体する。
分け前を分けて、リュックに詰めた。
さぁ、凱旋である。
今日の出迎えは、ルネーの家のマリアと、ヤジュの家のリズ、ナッキの家のリマである。
「おーい、こっちだよーっ! 今日も怪我がなくて何よりだね!」
そう言って来たのは、マリアだ。
今日も元気いっぱいで、その生命力を身にたぎらせている。
「出迎え、感謝する」
短く言って、キーヤは礼をして去っていった。
「エンジュ、お帰りなさい。無事な帰りを、待ってたよ」
赤い瞳をゆらめかせ、リマが言う。
「ただいま、リマ。どうしてそんなに不安げなんだ? 何か怖い目に遭ったのか?」
「二つ隣の狩り場で、怪我人が出たの。結構深い傷で、大騒ぎになってたんだよ」
「そうか。腹を空かせたウスルスにでもやられたのかな。どっちみち、うちは無事だ。安心しろ」
エンジュの言葉に、リマは頷いて微笑んだ。




