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ケラソの家のタゥ  作者: yahagi
無理矢理な結婚
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襲撃

「今、帰った。本家の男達が来ていたが、詳しく聞いただろうか?」


「お帰りなさいませ、あなた……。戸板ごしに聞きましたわ……。盗賊団なんて恐ろしいですわ……」


「人数は50名程いるとの事だが、ケラソ族の男は100名をくだらない。襲いに来ても、返り討ちさ」


「タゥ……あなたは恐ろしくないの……?」


「恐ろしくはないね。レアも、俺を信じてくれ」


「信じていますわ……あなた……」


 レアとの静かな時間は、荒ぶる俺の心を静めてくれた。



 平穏無事に日没となり、晩餐の時刻である。

 今日は足肉にパルの実の粉を練り込んだハンバーグであった。

 焼き立てのパンと共に頂く。


 タゥは食前の文言を唱えてから、ハンバーグにかぶりついた。


「うん、美味い。これならいくらでも食べられそうだ」


「ふふ……。お代わりもありますわ……」


 レアはくすくすと笑い、自身もハンバーグを美味しそうに食べている。

 昼間は流石に緊張していたが、今は陰りも見られない。

 タゥはほっと息を吐いた。


 食事の最中も、二本の刀を吊ったままのタゥは、警戒心だけは忘れずに、ひとときの団欒を楽しんでいた。


 そして、食事も尽きてきた頃──何かの振動が伝わってきた。明らかな異常である。


「もしや、ラプカの群れかもしれん。盗賊団がいるやもしれぬ故、広間から動くなよ、レア」


「は、はい……」


 タゥは刀を手に、戸板に近付いていった。

 戸板が大きく鳴らされたのは、その時であった。


 ドンドンドン、と力任せに戸板が鳴らされる。

 聞こえてきたのは、下卑た笑い声だった。


「あっはっはっは! おい、ここを開けろ! 盗賊団、ミゴリ様が酒を所望だぞ! あーっははは!」


 扉の前の気配を探ると、せいぜい4、5人といったところだ。多くても8人強、──殺れる、と考えた。


 閂を引き抜き、闇に躍り出る。

 両手には一本ずつの刀があった。


「金髪だ! とっつかまえろ!」


「殺せ! 殺せ!!」


「金髪は捕らえて犯せ! 女はどこだ?!」


「威勢は良いが子供じゃないか。刀の錆びにしてくれる!」


「ミゴリ様に献上するぜ! ヒャッハーッ」


 怒声のような声がかけられる中、タゥは冷静に一人目を袈裟切りにしていた。

 絶命した仲間を見て、男達が一斉に斬りかかってくる。

 二人目は手を切り、胸を突いた。

 三人目は首を切り裂き、事なきを得た。

 四人目と五人目はタゥを捕まえようと、突進して来るので、相手の持っている剣をぶったたいて取り落とし、一人ずつ片付けた。


「これで五人。次は──」


 タゥは飛んできた斬撃を、二本の刀で受け止めた。重い太刀筋である。


「やられちまったのか、お前ら。おやおや、よく見たら別嬪じゃねぇの。あはは、よし、今宵の閨はお前を所望する。了承するなら盗賊団を引かせてやろう。お前の身一つで村一個が助かるんだ。いい話だろう?」


「お前とそいつ。あと二人殺せば良いだけだ」


「俺を殺せるつもりか? 仲間達はさぞかしおいしい思いをしてるだろうぜ。女は犯し、男は皆殺しだ。俺の盗賊団は50名はくだらねぇぜ! こんな辺鄙な村ァ、俺様の敵じゃねぇ」


「み、ミゴリ様……そいつは、危険です」


「そんなのわかってて言ってんだよ。お前、俺の女になれよ。かーわいがってやるぜぇ?」


 ミゴリの粘ついた視線に、今日のアランの姿が浮かんで、消えた。


「断る!! ケラソ族を馬鹿にしてタダで済むと思うなよ! お前らなんて、皆殺しだ!」


「仕方ねぇ、いっちょ揉んでやっかァ」


 ミゴリは立派な鎧を着ていた。

 そして、その大刀も見事なものであった。

 一合、二合と打ち合う度、もう一人の男が斬りかかってくる。

 タゥはミゴリよりちょこまか切りかかってくるそっちの男の方が相手にしずらかった。


 五合目。力でタゥが吹き飛ばされる。

 ぶつかった背中に戸板を感じながら、タゥはちっと舌打ちをした。


「俺の女になる覚悟は固まったよな? 手加減してやってるの、わかっているだろう?」


 ミゴリは大きく手を広げて、大笑いした。


「おおい、お前ら。今夜はこれで帰るぞ。戦利品はとびきり上等な金髪の、俺の女だ!」


 もう一人の男が伝令を頼まれ、ラプカに乗って去っていった。

 闇夜に笑い声が木霊する。


 タゥは後ろ姿のミゴリに、斬りかかった。

 まだ、届かない。

 ミゴリも大刀を振り回し、タゥの二本の刃を受け止める。

 まだ、浅い。


 そこに一閃、闇夜から抜け出た影が、ミゴリに切りかかった。

 その一瞬の隙を逃さず、タゥはミゴリの首をはねた。


「大事ないか、タゥ?」


 先程の影は、サランであった。

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