あどけない少女
「お祭り……でございますか……?」
「ああ。この国の王様が変わったんで、その祝いを来月から雨期前までずーっと騒ぐんだってさ。前祝いはもう始まってるし、費用は国の振る舞いだって言うんだから、豪気な話だよな」
「まぁ……三ヶ月もお祝いをして、雨期明けにもお祭りでございましょう……。凄い話ですわね」
今は、狩りを終えて帰宅したその夜の、晩餐の最中である。
レアは復調して家に戻って来ていた。
タゥはジャックから聞いた話を、簡略化して話して聞かせていた。
まずは、無難な話題からである。
タゥは、緊縛を趣味にする事を告白するつもりなのである。
晩餐を食べ終え、後片づけをした後で、レアを呼んだ。
「実は、ひとつ趣味が出来た。緊縛という、人を縄で縛る行いだ。まずは先生に弟子入りして、緊縛のいろはを教わるつもりでいる」
「それは……あなたが誰かを縄で縛る……という意味ですの……?」
「将来的にはそうなるが、見習いのうちは縛られるのが俺になるそうだ。病弱なレアには合わぬ趣味で少し散財してしまうが、俺の幸福の為、どうか見逃して頂きたい」
「わたくしには……施して貰えませんの……?」
「悪いがレアに、緊縛に耐えれる体力があるようには思えない。お前には違う方法を考えている故、どうか納得して欲しい」
レアはじっとりした瞳でタゥを見てきたが、か細い声で「了承致しました……」と答えた。
「わたくしは……縛られているタゥに興味を惹かれます……。叶うことなら、見学させて貰いたかったですわ……」
「お前を連れていくことは、まかりならんぞ」
「やっぱり……。せめて感想位は聞かせて下さいませ……」
それを了承すると、レアは仕方なさそうに微笑んだ。
その後、夜伽をしたが、買ってきた玩具は大活躍してくれた。
高い買い物だったが、これだけ喜ばれるのなら買って良かったと、胸をなで下ろした。
「あっ、あっ、あっ、またいく、あああーーーっ、はぁ、はぁ、また……っ、あっ、あっ、あっ、あああーーーっ」
幾度もいかされたせいで声は掠れていたが、身体は大変喜んでいたので、タゥは満足だった。
「はぁ、はぁ、あなた、お覚悟を……」
その後、どうやら情欲に火がついてしまったレアにのし掛かられたが、気が済むまで思い通り鳴いてやった。
どうやら、それがいたく良かったらしい。
「あなた……わたくし、これからも嫁として頑張りますわ……」
なんて言いながら、こっそり銀貨1枚お小遣いに貰ってしまった。
持つべきものは、理解力のある妻である。
さて、翌日の朝である。
今日は、サランの知り合いの娘に会いに行く日である。
「あなた……いってらっしゃいませ……」
レアの見送りを背にして、サランのラプカに乗り込んだ。
「父さん、今日はどこの家に行くんだい?」
「ああ、教えていなかったな。マロンの家のミクという娘だ。西の中間あたりに家がある」
ラプカで雑木林を駆け抜けながら、タゥは更に言いつのった。
「父さんはその娘と俺の気が合うと思ったの?」
「さてな。その娘がタゥに興味を示していたのだ。家庭的で気だても良く、健康的だ。俺は良い娘だと思ったぞ」
「そっか。仲良くなれるといいな」
タゥはあんまり期待していなかった。
タゥが今欲しいのは緊縛に耐えうる人材である。早く趣味を充実させたくてたまらないのである。
「そう言えば、ヤジュの家の見合いの話は聞いたか? リューナンの家のライチにアシバロの家のカサザだろう。どちらもあまり評判が良くないな」
「うん。ちょっと心配だよ。再来週会いに行くから、そこで結果を聞こうと思ってる」
「ああ。見合いでは二人きりになるからな。そうしてあげなさい。ナッキの家のエンジュの見合いを受け入れたから、ヤジュの家も断りきれなかったのだろう」
「顔と性格の良さではエンジュの圧勝だろうな」
「お前はエンジュともうまくやれてるのだな。俺の息子も顔と性格の良さでは負けておらんぞ」
サランの言いように、タゥは思わず笑ってしまった。いわゆる親バカに相当する発言だと思ったからだ。だからタゥも「ありがとう、父さん」と、素直に言葉を返した。
やがて、マロンの家に到着した。
近くの木に手綱を縛り付け、戸板を叩く。
「ケラソの家のサランとタゥだ! ミクに会いに来た!」
やがて閂が外され、戸板が開かれる。
中から出て来たのは、薄紅色の髪を左右で三つ編みに括っている、あどけない顔立ちの美少女だった。
身体つきは豊満で、少女らしからぬ程である。
瞳は緑色で、サランとタゥを見て、喜色を爆発させた。
「マロンの家にようこそ! サラン、タゥを本当に連れてきてくれたんだね! 本当にありがとうっ」
「ミク、タゥが驚いているぞ。まずは自己紹介をするべきではないか?」
すると、ぴょこんと頭を下げたミクはタゥに向き直り、自己紹介をした。
「は、はじめましてっ! 私、マロンの家のミクと言います。よ、宜しくお願いしますっ」
「ご丁寧にどうも。俺は、ケラソの家のタゥ。宜しくな」
タゥがにこりと微笑むと、ミクも嬉しそうに破顔した。
「サランは、広間へどうぞ。父と母が待っています。タゥは、私の部屋へどうぞ」
「ではまたな、タゥ」
「うん。じゃあまた後で」
短く挨拶を交わすと、サランは広間に入っていった。
タゥより頭ひとつぶん位小さな背で、ミクは自分の部屋へ案内してくれた。




