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ケラソの家のタゥ  作者: yahagi
無理矢理な結婚
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自分は無害

 ラプカに乗って帰り道、サランが穏やかな声で切り出した。


「タゥよ、ルキには何と耳打ちしたのだ?」


「ああ、あれか。この生意気な女を口吸いで黙らせろ! って言ったんだ。効果てきめんだったみたいだな」


「なるほど、イズカのような美人は好みに合わぬか。タゥは本当に猛々しい性を持っておるのだな。病弱なレア一人では、もの足りぬのではないか?」


「正直言って、ちょっともの足らないとは思っている。だけどレアも頑張ってくれてるし、十分満足してるよ。虚しいのは、心だけさ」


 そう、虚しいのは心だけなんだ。

 それを浮気をする免罪符にしてしまっている。

 タゥはそれがサランに対して後ろめたかった。


「タゥ。三年後の話を今しても仕方なかろうが、候補はヤジュの家とルネーの家だけなのであろうか?」


「何だい、父さん。改まって。他の候補は三年後の見合いで決めるだろう? 他に心当たりはないよ」


「いや、黙して三年後を待っている娘に心当たりがあってな。まだ15だが、美人に育つと周囲に噂されるような娘だ。一度会ってみないか?」


「父さん、俺は何も約束出来ない。三年後のことは、三年後に決めようと思ってるからだ。それでも良いなら、会うよ」


 サランは頷いて、薄く笑った。


「お前の未来に繋がるかはわからんが、好みの娘であると良いな。それでお前に足りないものが、満たされる事を願っている」


 その娘には、明後日会いに行く事に決まった。今週は人に会う予定が特に多かった。明日は町に行くので、その次の日にその娘に会って、週の最終日はレアの相手をしようと思う。


 やがて家に着き、サランと解散した。

 今日の目的は達成したので、気分も晴れやかだ。


 中天になり、森に入る。

 今日の狩りも上々で、早いうちから一頭、罠に追い込んで仕留める事が出来た。


「今日の狩りも絶好調だなーっと。キーヤもタゥも動きがいいし、こりゃもう一頭来ちまうかなー」


 上機嫌で森を歩きながら、そう言ったのはエンジュだった。


「そんな事を言っていると、腹を空かせたウスルスに遭遇してしまうぞ。……うん、ウスルスの痕跡がある。このまま北西に進もう」


「了解、キーヤ! おーい、次、タゥが先行な!」


「わかった、木に登って先行する!」


 タゥが先行してしばらくすると、北西にウスルスが二頭も見えた。それを草笛で伝え、一頭が罠に追い立てられていく様を見送った。


 そこでタゥは素早く地上に降り、逃げようとするウスルスの頸動脈をかき切った。

 血抜きの為、木に吊していると、エンジュ達が戻ってきた。


「おー、タゥも仕留めたか。こっちも問題なく仕留めたぜ! 今日は収穫が三頭だなー!」


 三頭の収穫は、珍しいことだ。

 タゥも自然と上機嫌になって、鼻歌を歌いながらウスルスを運んでいた。


 今日の分け前は、全員一頭である。解体を終えた後、リュックに皆で肉を詰め込んだ。

 臓物を貰う礼だと言って、ウスルスの左右の巨大な牙を、キーヤとタゥはエンジュから貰っていた。


 今日の出迎えは、ヤジュの家の双子と、ルネーの家のマリアだ。

 夕刻の茜色に染まった空に、彼女達は美しく調和していた。


「今日もお疲れ様! 無事で何よりだよーっ」


 元気いっぱいに手を降ったのは、マリアである。


「それとね、レアが熱を出しちゃったんだって。かまど仕事はいつも通り、次姉が取り仕切るって言ってたよ」


「そうか。連絡ありがとう。大事ないと良いが」


「いつもの熱だから心配いらないって言ってたよ」


 そうは言っても心配は心配である。


「あっ!  タゥ! 聞いて聞いて! 私、明後日お見合いする事になったの!」


「リズ。そりゃあおめでとう。相手は、ダイの家のヤッハか?」


「うん。でもすっごく意気込んでる家がいるらしくて、結婚は難しいだろうって言われた。それでね、折角だから、他の家とも数件、お見合いするんだって」


「へえ。例えば、どこの家とだ?」


「リューナンの家のライチとか、アシバロの家のカサザとかだね。タゥも、ちょこっとなら聞いたことあるかな?」


 タゥは「なるほど」と目を細めた。


「みんな顔が良いって有名な男じゃないか。しかしリューナンの家のライチはちょっと年上だろう?」


「ライチはまだ20歳だよー。どうやら女の子に手を出しまくってるから、落ち着かせたいんだって。カサザは大人しい印象だけど、やっぱり顔が良いから、年上の女に可愛がられてるらしいよ」


「その見合いって、リマも出席するのか?」


 そこで「えっ?」と言ったのはエンジュだった。


「マジで? あいつらも顔が良いからなぁ。しかしライチは手を出すだけ出して、責任も取らないクズだからな。カサザだって巨乳好きって逸話があるくらいだから、安心は出来ねぇ」


「何というか、顔の良さだけで集めた人選だな。見合いって、人柄重視するもんだと思ってたよ」


 タゥがそう言うと、リズがにやにやと笑った。


「そりゃあお姉ちゃんは来月の2日に、エンジュとお見合い予定があるもんね。本決まりになる前に、良さげな男と会わせておこうって思ったんじゃないの? なんせタゥとエンジュを両天秤にかけてるからねぇ」


「ほ、本決まりってそんなわけないじゃん。エンジュにだって、色々あるだろうし……」


「俺? 何にもないよ。清く正しく生きてきて良かった! 俺は本決まりになるのを夢見てるからさ。リマは他の男に揺れないでくれよな」


 リマは真っ赤になって、閉口してしまった。


「あーあ。お姉ちゃんてば、エンジュにお熱だねぇ。ってそんなわけで、来週は忙しくなっちゃうの」


「わかった。会いに行くとしたら再来週だな」


「なぁ、タゥって毎週リマとリズに会いに行ってんの? 俺も真似て良い? リマに会いに行きたい」


「お姉ちゃん、いいよねーっ? 良いってさ。あー、なんか見合いの予定があるって楽しみだよね! 胸がわくわくするよ!」


「目一杯楽しんで来いよ、リズ。顔の良い男には気をつけてな」


「自分は無害って顔してるけど、タゥが一番危ないんだからね?」


 リズは意味ありげに微笑むと、真っ赤な姉を引きずって帰って行った。


「あたしも帰るよ。また明日ね、タゥ、エンジュ」


 マリアも帰って行ったので、残された男達も解散した。

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