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ケラソの家のタゥ  作者: yahagi
無理矢理な結婚
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新しい仲間

「ラプカは叔父から借りた。これから毎日北からこの狩り場まで通うから、よろしくな! 俺が未婚なのは、アレだよ、見合いの希望者が多くてな。見合い期間を長めに取ってんだ。ついでに今は時期が悪いとかで見合い話も一旦止まってんだよ」


「ああ、タゥの結婚が契機になってしまったようだな」


「キーヤは既婚者なんだろ? タゥに幸せな結婚生活のコツでも教えてやりゃあいいじゃねぇか。とはいっても、無理矢理の結婚ってのは重たいよなぁ」


「タゥの結婚は特殊だからな。とは言え、相談があるのならいつでも聞くぞ」


「良かったな、タゥ! じゃあ自己紹介もこのへんにして、森に入るか!」


「ああ。リーダーは俺のままでいいか?」


「勿論だぜ。索敵は先行してキーヤだろ? 追い込みは俺とタゥ。臨機応変に草笛吹いて対応でいいか?」


「ああ。行こうぜ」


 タゥはにこやかに笑って森へ入った。

 エンジュは期待していた通り、足が速く、木登りも上手い。視野も広く、引くところは引いて見せた。


 今日の収穫は二頭である。

 小さい方をタゥがひとりで運び、もう一頭をキーヤとエンジュで運んできた。


 森の入り口の解体小屋では火が焚かれており、湯が用意されている。どうやら日没までは後一刻程らしい。


 空いている解体小屋で解体を開始する。エンジュは流石の手際で解体を終わらせていた。

 分け前の分担はタゥが背中の肉と足肉、残りをキーヤ、小さめな一頭をエンジュに、という事になった。


「一頭を持ち帰るのは役回りなんだ。いつもではないよ」


「でも、二頭狩ったら一頭は誰かが持ち帰れるんだな。そんなら毎日二頭狩ろうぜ。タゥだってラプカが欲しいだろ」


「うむ。狩れるものなら頑張りたい」


 男達は一致団結してウスルス狩りに精を出す事に決めた。


「それにしてもさ、迎えの娘達が一人もいねーんだな。実際、寂しいよなぁ。北から一人ぐらい連れてくるか?」


 そうエンジュが言い出したので、タゥは慌てて今日の成果を声高に言いつのった。


「明日の迎えだったら、二、三人来ることになってる」


「へーぇ。可愛い子?」


「うむ。とびきり可愛くて、美人な子達だよ」


「キーヤは?」


「俺は嫁さん一筋だ。力になれず申し訳ない」


「なるほどなぁ。お前たち、真面目すぎるんだよ。狩りももうちょい、やりようがあるし、楽しくなってきたぜ!」


「じゃあ、続きは明日だな。今日はこれで失礼する」


「お疲れ様~!」


 キーヤと俺はエンジュに挨拶をしてから、帰路に着いた。おしゃべりに興じていた時間が思ったり長かったのか、家につく頃には日没を迎えていた。


 戸板をたたきながら名を告げると、閂が外され、戸板がからりと横に開いた。


「……おかえりなさいませ……あなた……。晩餐の準備は整っています……」


「レア、復調おめでとう。大事ないか?」


「いつもの熱でしたので……問題はありませんでした……」


「そうか。じゃあ中へ入ろう」


 広間に着くと、ご馳走が待ち受けていた。

 上座に腰を下ろしたタゥは、食前の文言を唱えてから汁物料理の皿を取った。

 汁物料理は、レアの好む足肉の煮物だ。

 そして焼き物料理はタゥの好む背中の肉をたっぷり使った野菜炒めだ。ルッケ多めで作られているのが腹立たしいが、嬉しくもある。

 それと作り置きのパンで全部だ。


「そう言えば、ルネーの家のマリアから伝言がある。揚げ物の日をご一緒しませんか? だとさ。俺が今まで一緒に揚げてたからだろうな」


「せっかくのお申し出ですが……わたくしは本家で揚げてきますので……お断りさせて下さい……」


「わかった。それなら仕方ないな。それと不在の間のかまど仕事の取り仕切りもありがとう。でも、俺が作ってもいいんだぞ?」


「旦那様の手を煩わせる程の事ではありません……。それよりあなた、笑顔が見えていますよ。よっぽど嬉しいことがあったのでしょうね……」


 食事が一段落ついたので、タゥは今日の出来事を語って見せた。


「ヤジュの家で子供を作らないかと誘われた。子供を産んで、三年後を待ちたいそうだ。俺なんかの為に、凄い提案だろう? 俺は心から嬉しかった。……丁重にお断りしたけどな」


「それは……断っても良かったんですの? あなたにとって、希望となり得るのではないでしょうか……?」


「断って良かったんだよ。大事な相手は大切にしなきゃな。それと勝手で悪いが、週に一度はヤジュの家とルネーの家に顔を出すことになった」


「それは……何をしに向かわれるのですか? そのような提案の後にうかうかと近寄るなんて……あなたは、ひどいお方です……」


「幼なじみ達の健康伺いだ。森の入り口での出迎えが減って、顔を見る機会が減じていた故だ。時期は関係なかろう。俺がしっかりしていればいい事だ」


 タゥはするすると嘘が口から出てくる事に驚いた。自分はこんなに器用な男だっただろうか。ケラソ族は嘘を嫌う。それなのに、嘘をつく自分を叱責するつもりになれなかった。


 レアは下座に横座りで座りながら、じっとりとした目つきでタゥを睨んでいる。食事はすっかり止まってしまっていた。


「レアよ。良い機会なので話し合いたい事がある。それは、子供についてだ」


「はい……。今の所、授かってはいないようです……」


「俺は毎夜夫の務めを果たしているが、子供が出来たら何とする? そなたの病弱な体質では、子供を産むことも困難なのではないか?」


 タゥは密かに心配していた事を言葉にしてみせた。レアの病弱な身体を組み敷くたび、一度で終われた試しがないので、本当にこれでよいのかと自問自答していたものである。

 レアの身体に良くないのであれば、閨もすっぱり取り止める覚悟であった。


 しかしレアは毅然とした声で、きっぱりと「いいえ」と発言した。

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