生誕の日
カーネルの家にはすぐに人を送り、麻薬か否かを調べる方針だ。
婚約者の家にも捜査の手は及ぶはずである。
ミモザは護送されて連れていかれた。
「何だか酷い騒ぎになってきたな」
タゥはイザベラのベッドで寝ていた。
部屋の外では、聖騎士が警備をしていて、何とも物々しい雰囲気だった。
「ねぇ、シルベスター卿。聖騎士に内緒で、エッチしましょう? 声は、抑えるから……ね?」
タゥはイザベラを押し倒して、そっと押し入った。
「ああん……っ、あんっ、あんっ」
イザベラの身体は柔らかく、嬌声は闇に溶けていった。
早朝、アスティ家に戻ったタゥは、事態が思ったより大きいのだと、実感せざるを得なかった。
ジャックも戻っており、ヨナルドと共に聖騎士に指示を飛ばしている。
部屋に詰めている聖騎士の数は、30名を下らなかった。
「よっ! ありがとうな、タゥ。ミモザの買っていた薬は麻薬でビンゴだ。婚約者の家からはな、まさに育成している麻薬畑が出た。お仲間がいるはずだから、今はそっちを追ってる。まだしばらくは道具屋に戻れそうにないや」
「そうか。それじゃあ、また俺が力になれそうな時には連絡をくれ。頑張ってくれ、ジャック」
俺はそう言ってアスティ家を後にした。
暦が六月になり、まだまだジャックは忙しそうであったが、ジュネは順調に逢い引きを重ねているようであった。
6月16日は、タゥの生誕の日である。
今年も本家で祝って貰えるようで、タゥはレアと一緒に参加した。
「あなた……。生誕の日おめでとう……。お祝いの花を、受け取って頂戴……」
「ありがとう、レア。俺はこれで、17歳だ。これからも頑張っていくよ」
「あっはっは。タゥよ、誠にめでたき事だな。これからもレアを頼むぞ」
「ああ、任せておいてくれ」
タゥは胸を叩いて請け負った。
族長ラピグゥはご機嫌だ。
タゥは宴料理に舌鼓を打った。
背中の肉のステーキにホプマの実入りのシチュー。ルッケたっぷりのコロッケに、ハンバーグまで取り揃えられていた。
添え物として、チーズたっぷりのピザが出されたが、これも絶品だった。
「これ、チーズが熱々だ。うまいな、レア」
「ええ……。おいしゅうございます……」
レアの機嫌も上々だ。
族長ラピグゥは神妙な顔をして、タゥに向き直った。
「何やらまた町が騒がしいようだな。先月の大捜索網のときもそうだったが、ジャックがずっと不在だとケラソ族にも動揺が伝わりやすい。タゥ、どうか手助けしてやってくれ」
「わかった。俺が抜けるたびに本家には迷惑をかけてしまうが、どうか宜しく頼む」
タゥが狩りを抜けるたびに、本家は交代要員を出しているのだ。
タゥはこの機会に頭を下げておいた。
「この程度、何ほどの事でもない。シルベスター男爵としての顔も持つタゥには、計り知れぬ苦労もあろう。どうか、両立を出来るように、頑張って欲しい」
「ありがとう、族長ラピグゥ。俺はケラソ族に迎えられて、幸福だよ」
タゥは幸せだった。
家に戻り、レアとエッチして眠りにつく。
朝、目覚めてレアに言った。
「今日は狩りを休んでジャックの手伝いをしてくる。夜は戻らないから、戸締まりだけはしっかりな」
「かしこまりました……。お土産話を、楽しみにしてますわ……」
タゥはレアに見送られて、ジャックの元へ向かった。
「今日は一日時間を開けてある。さぁ、何でも言ってくれ」
ジャックは相変わらず忙しそうにしていたが、聖騎士の姿はない。
少しは落ち着いたのだろうと、予測する。
「おお、タゥ。丁度良いとこにきた。ある家の協力が欲しいんだが、条件が合わなくてな。タゥならぴったりだ。丁度俺の息抜きにもなるし、この依頼を受けよう。おおい、タゥに着替えを!」
現れたメイドに脱がされ、着せられ、タゥは驚いた。
ビスチェにドロワーズ。銀色のドレス。
そして、髪は解かれて櫛けずられ、軽く化粧をされた。
口紅を塗られたタゥは、たまらず声を上げた。
「ちょっと待ってくれ。これは、女装だよな……?」
「そっ。似合ってるぜぇ、タゥ。王族の姫君みたいだ。こりゃあ、夜が期待出来るな」
「ジャーック? 相手は男だろう? 俺は無事でいられるのか?」
「俺もついてくし、その点は大丈夫だ。ただ、一晩中男に舐め回される苦行だ。タゥ、着せといて何だけど、大丈夫か……?」
「ジャックが貞操を守ってくれるなら、俺は安泰だ。それくらい、耐えて見せるよ」
「よく言った! たまにゃ、こういう馬鹿騒ぎもしねぇと落ち着かねえや。タゥ、恩に着るぜえ」
ジャックは嬉しそうに笑った。
その屋敷は、貴族街の奥まった所にあった。
見事な庭園を抜けて廊下を進み、幾つか角を曲がって、その部屋に着いた。
タゥはピンヒールの為、歩きづらかったが、持ち前の運動神経で乗り切った。




