コール
暦が2月に変わり、マリアのお腹もだいぶ目立って来た頃、タゥが楽しみにしていたイベントが開かれる事となった。
当日はアスティ家の馬車に迎えに来てもらい、馬車の中で着替えたタゥである。
今回の下準備として、タゥは下の毛をしょりしょりと剃られていた。
それが恥ずかしかったなんて、もう言わない。
今日は、本番なのだ。
タゥとジャックはある屋敷に乗り込み、馬車を止めた。
裏口から入り、支配人に挨拶する。
支配人はロマンスグレーな紳士だった。
「当家のショーをご愛顧頂き、ありがとうございます、ジャック」
「よっ。今日も無垢な女の悲鳴を期待してるぜぇ?」
「それはもう、たっぷりとご堪能頂けます。そしてこちらの方が、シルベスター卿……。素晴らしい。素敵なショーの花となりましょう。……では、早速着替えて頂けますかな」
タゥは小さなブーメランパンツを手に、着替え室に向かった。
着替えて出てくると、支配人は二番の札をタゥに付けた。
「素晴らしい肉体美ですな。交配の時に番号を呼ばれると性交の合図ですが、6番までは見せ餌、コールされる事はありません」
「わかった。舞台に立っていれば良いんだな」
さて、いよいよ開場か、と言ったところで、剣呑な声が響き渡った。
「だから、手違いだって言ってるだろう? 支配人を呼んでくれ、ヨーハーがこんな事をするはずがないんだ」
「支配人、キャストが一人暴れ出しまして……」
「わかった、行こう。ヨナス、準備しておいてくれ」
「はい……」
乗りかかった船なので、タゥとジャックもついていく。
ヨナスと呼ばれた男は、一種異様だった。
背が低く、ぶくぶくと太っていて髪は禿散らかしている。
着ているジャケットはかなり高級なものだったが、どう見ても醜い男だった。
男はジャケットを脱ぎ、何やら準備をしている。
「私が支配人だ。私を呼んだのは君かね?」
「ああ、そうだ。ヨーハーを呼んで欲しい。こんな馬鹿げた催しに参加するなんて、ある訳ないんだ」
「ヨーハー・ブラントンなら確かに金を受け取っています。今頃はローゼン町を抜けて海の上かもしれませんね」
「そ、そんな馬鹿な……」
「では、下準備を。ヨナス」
「かしこまりました、支配人……」
ヨナスは騒いでいた男の檻に入ると、香油の瓶をちゃぽん、と振った。
「いきなり突っ込まれない為の準備でさぁ。全裸になって、足を開いておくんなせえ」
「だっ、誰だお前は。嫌だ。お前みたいな化け物に、僕は屈しない……!」
「じゃあ無理矢理やらせて貰いますねぇ」
ヨナスは男に覆い被さり、唇を吸った。
シャツはボタンがはじけ、ズボンが無理矢理脱がされる。
尻に指が入れられたらしく、男の抵抗は少し弱々しくなった。
「気持ち悪いっ! 指を抜け……!」
「じゃあ良いようにしましょうねえ」
ヨナスは男のものにしゃぶりついた。
口淫しながら指を動かし、そこを刺激される。
前立腺をこねられて、男はたまらず腰を振った。
「あっ……、うう……っ」
「さぁ、いきましょうねぇ」
「あっ、あああーーーっ」
ヨナスは男の出したものを飲み下した。
男はひっくひっくと泣き出している。
「本番では、素直に身体を開くことですな。意固地になっているとますます客がヒートアップするから」
ヨナスはそう言って檻から出て行った。
「なんかヨナス、上手かったな?」
タゥがそう言うと、ジャックは笑顔で頷いた。
「あたぼうよ。ヨナスはこのショーの、目玉俳優なんだぜ」
なるほど、それであの醜さか。
タゥは納得して、縄のレクチャーを受けた。
さて、開場である。
ジャックは10番の札を付け、客席へ去っていった。
タゥは同じブーメランパンツ仲間と舞台そでで待つ。
やがて支配人の声が響きわたった。
「紳士淑女の皆様、お待たせ致しました。今日のショーを開催致します! まずは生贄の紹介を致しましょう。トップバッターは花屋の看板娘、ベス! 二番目は──」
支配人は10人目まで紹介し終えた。
タゥが気になったのは10人目の貴族の娘で、紫の瞳が美しい金髪の少女だった。
「さて、我がショーの誇る男役を紹介しましょう。一番、マーイク!」
一番の札を付けた奴が舞台上に上がっていく。
六人全員が舞台に上がった後、改めて交配タイムについて説明がなされた。
交配をさせたい男の番号に賭け金をベットし、当たれば壇上で生交配が見られる。
客席の男も抽選で当たるので、楽しみにしておいて欲しい。
そんな説明の後、早速ベスの名前が呼ばれた。
なんでも、哀れに見えるように縛って欲しいとタゥは頼まれている。
ベスの衣服を乱し、乳房を露出させて縛り上げると、ベスはひっくひっくとしゃくりあげて泣き出した。
「さぁ、番号が出ました! 16番のあなた! おめでとうございます、壇上へどうぞ!」
それは、ごつごつと骨ばった顔の男だった。
男はまっさきに乳房にしゃぶりついた。
壇上にベッドなど気の利いたものはない。
ただ赤い絨毯の敷かれた床の上で、ベスが襲われている。
そこで、コールが始まった。
「犯せ! 犯せ! 犯せ!」
客席の心は一つだ。
男はベスのスカートを剥ぎ取り、秘部を露出させる。
そして起立している自身を晒し、ベスに覆い被さった。
ベスの悲鳴があがる。
「犯せ! 犯せ! 犯せ!」
まだコールは止まない。
ベスは壊れた人形のように、揺さぶられ続けた。




