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ケラソの家のタゥ  作者: yahagi
劇的な再会
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犬になれ

「なぁタゥ、今日の相手はちょっと意地が悪いかもしれないんだけど、頑張ろうな」


 そのように声をかけてくるジャックも、今日は盛装だ。

 今日は二人揃って悪ふざけに挑む。

 それには、ひとつの理由があった。


 ある女性を、紹介して貰う為である。


 タゥは着飾られた己の身をピンと弾くと、明るい声を出して言った。


「ジャックがいてくれるなら、何とでもなるさ。ベッドの約束はないんだろう?」


「ああ。だから余計におかしくってさ。どうせ何かおふざけを仕掛けてくるに決まってるんだ」


 そんな懸念を持ちながら向かった先は、ある屋敷で早朝より開かれたガーデンパーティだった。


 出席者はいずれも女性で、20名ほどいただろうか。

 色んな色のドレスが洪水のようで、タゥは目を白黒とさせた。


「ようこそいらしたわね、シルベスター卿とジャック。お待ちしていたわ。私はリーディア。宜しくね」


 そう言ってきたのは、水色のドレスを着た20代前半の女性だった。


「早朝からこのような会を開いて下さり、感謝の念にたえません。どうかお礼を言わせて下さい」


「いいのよ、ジャック。他ならぬあなたの為だもの。時間が早いから菓子の立食パーティーにしたわ。どうぞ楽しんで? テラスに席も用意してあるわ」


「ありがとう、リーディア。では、また後で」


 リーディアと別れ、美しい庭園へ足を踏み込む。

 そこには美しき女性達と、美味なる菓子が待っていた。


 最初は挨拶する女性の勢いに目を回したが、大抵はジャックがうまく答えてくれた。


 タゥはタルトタタンを食べながら、ジャックの会話を横で聞いている。

 ジャックは菓子を食べるよりも会話に熱心で、まだ芋のプティングしか食べていない。


「ええ、エランジュ姫の仰る通り、シルベスター卿はうちの居候ですよ」


「まぁ、素敵。お二人とも男前で目移りしてしまいますわ」


 女性のきゃいきゃい言う声を聞きながら、タゥは次に、チェリーパイを食べていた。


 そこに聞こえてきたのは、しっとりとした美声だった。


「……私も、チェリーパイが好きなの」


 それは黒髪で、どこか影のある女だった。

 深い赤のドレスが似合う、30代位の肉感的な女性である。

 タゥはチェリーパイを食べ終え、女性に向き直った。


「……失礼した。シルベスターだ。……あなたは?」


「ナタリーよ……。こっちに美味しいチョコレートケーキがあったわ。お口に合うかしら……」


 タゥはチョコレートケーキを食べると、思わず唸った。

 タゥはチョコレートを食べた事がなかった。

 その魅惑の味わいに、すっかり心を奪われたのである。


「これは美味いな。教えてくれて、ありがとう」


「うふふっ。三口で食べちゃったわ……。後はこっちの、シュークリームがおすすめよ……」


 タゥはシュークリームを食べ終えた後、ジャックに呼ばれた。


「すまない、呼ばれた。美味しい菓子を、ありがとう」


「いいのよ……。楽しい時間をありがとう、シルベスター卿」


 ナタリーは微笑んで見送ってくれた。



 テラスには厚手の絨毯が敷かれ、真っ白なテーブルクロスですっぽりと姿を隠した机に、椅子が2脚ずつ、対になるように並べられていた。


 そこに座っていたのは、リーディアともう一人の女性で、タニアというらしい。

 二人ともにこやかに座しており、食べかけのミルフィーユには赤い果実が光っていた。


「ご歓談の最中、お呼び出ししてごめんなさいね、ジャック。例の件を話し合いましょう」


「宜しく頼むよ、リーディア。条件は今日話すって話だったからな。さて、俺達は何をしたらいい?」


「性急ね。でも、嫌いじゃないわ。ふふふ、あのね……」


 そこで扇を取り出したリーディアは、こっそりと歌うように言った。


「あなた達には、いっとき私達の犬になって欲しいの」


 くすくすと笑うリーディアに、タニアが頬を朱に染めて言う。


「つまり今、四つん這いになって私達の……」


「そう、私達の蜜を求める犬になって欲しいの」


「……わかった。やってやる。タゥも、わかったな? お嬢様達は俺達の舌技を今堪能したいと仰せだ」


「……わかった。他の客は、知っているのか?」


「知らないわ。ふふふ、バレないように楽しむのが好きなのよ。さぁ、始めて頂戴」


 タゥはジャックとテーブルクロスの下に潜り込み、スカートの中で舌を伸ばし、犬となった。


 四半刻くらい経った頃、俺達を探しに来た娘達がいた。

 テーブルクロスに近寄られ、タゥは冷や汗をかいた。


「あら、ミドリー。どうなさったの?」


「いえ、男性二人が見当たらなくて……あらタニア、顔が真っ赤よ。どうかなさって?」


「紳士二人ならお手洗いよ。タニアは紅茶にブランデーを垂らしたら、酔ってしまったみたい。ここで休ませておくから大丈夫よ」


「あら、そうなの? じゃあ、お大事にね、タニア」


 ミドリーは心配げに菓子のテーブルの向こうに去っていった。


 タニアが身体をくの字に曲げて、苦しげに息をつく。

 漏れ聞こえてきたのは、嬌声だった。


「あんっ、……あんっ、またいくっ、ああ、いいっ、あんっ、あんっ」


「私も今いっちゃったわ。……んっ、ああ……っ、まだ時間はあるわ。たっぷり楽しみましょう……」

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