影が差す国
あの戦いの事は今も良き思い出として鮮明に残している。
『――捕まえた! お願いします、トマリ! リヒトっ!』
『わかった! ――トドメだ、リヒト!!』
『こいつで終わりだ……シャトゥンッ!』
魔法がボクの身を縛り、異能の光がボクの身を焼き、凄烈な風を思わせる刃がボクの身を切り裂く。
あの瞬間の事は忘れようがない。
完膚なきまでに刻みつけられたあの敗北の感覚を。
*
――ボクは人間に魅了されている。
一つの種族に詰め込むには余りに膨大なその多様さはなんと素晴らしいことか。
喜び、怒り、悲しみ。
様々な感情を織りなして創り出す彼らの在り方はなんと美しいのだろう。
他種の命からは決して見られない奇妙で複雑な感情行動。
とはいえボクも最初からそう感じていたわけじゃない。
他の同胞と同じように人間はボク達よりも生命として遥かに格下だと思っていた。
人間はボク達にとっての食糧であり、時に玩具にもできる。
人間はその程度の存在なのだと疑いもしていなかった。
まあ、あれだ。
フリュクトの奴に色々と文句を言ったが、ボクだって最初は相手にどうこう言えた立場じゃなかった。
そう、ボクは愚かだった。
そんなボクの認識を正してくれたのはーー彼らだ。
剣士リヒト、魔法使いクルク、そして未知の力を操る男、トマリ。
ボクは彼らと戦い、敗れた。
あの瞬間からボクの認識は、価値観は揺らいだ。
ボクは考えた。
人間はボク達より劣っているはずじゃなかったか?
だって、あんなに人間のことを劣等種だとみんなで蔑んでいたじゃないか。
食料"兼"玩具だとみんなで笑っていたじゃないか。
じゃあ何故ボクは負けた? 劣等種。たかが人間。
彼らへ向けた評価が正しくそのままであったのなら、あんな結果は有り得なかったはずだ。
だからボクは考えてしまった。
魔族の認識は何か間違っていないか?
崩れていく自分の身体に反して思考は疑問で埋まっていく。
本当に魔族は人間を支配するに相応しいのか?
もしこれまでの認識がただの勘違いであったのなら。
ああ……このまま消えてしまうのは、あまりにも――――……
***
休息を挟んだ後の出発からゲルプへの到着は早かった。
700mの標高など散歩にもならないとばかりに。
変化したヴンダーの疾走は麓から山道を一気に駆け抜け、あっという間にヴェルメ達を目的地へと運んだ。
敵の完全なテリトリー。
いつでも戦闘が可能であるようヴンダーは変化を解かず、周囲を警戒する。
"ここがこの世界の真ん中……”
アシュティンとヴンダーはゲルプ国の入り口を前にする。
落とし格子はその役割を忘れたかのように上がりきっており、城門の大きな口は開き続けている。
「いつでもご自由にどうぞって感じだな」
アシュティンの呟きを横にヴンダーは城門を見上げている。
誰が出入りしようが気にしないかのように、無防備なほどぽっかりと開いたその口は初めてグリューン国を訪れた時とよく似ていた。
違うのは。
"……なんだろう。騒がしい?”
ヴンダーは中の様子を見る。
人の姿は見えないが、町の奥からガヤガヤと音が聞こえてくる。
グリューン国では人間こそ生きていたもののアンデルに目をつけられることを恐れて、誰も家から出てくることはなく町全体が静まり返っていた。
しかしここは何か活気づいているような、楽しそうに賑わう声がたくさん聞こえてくる。
「よし、ヴンダー。一発気合いが入ったのを頼むぜ」
アシュティンの言葉を受け、ヴンダーは大きく息を吸い込んだ。
ヴェルメとシュテルに聞こえるように。
この国の隅々まで届くように。
「ーーーーーーッッッ!!」
大きく長く。
黒い巨獣は全力で吼えた。
「…………」
ヴンダーの咆哮が山全体に轟き、やがて静音が辺りを支配する。
先程まで町の中から聞こえていた喧騒もピタリと止んでいた。
「! ーーおい、ヴンダー」
見てみろ、と不意にアシュティンが声をかけてきた。
言われずともヴンダーの視界にもすでに入っている。
正面から魔物が一匹、こちらへ歩いてきていた。
「あれはオークだ。けど、なんでたった一匹でこっちに来てんだ……?」
確かに何か妙だった。雄叫びを上げ襲ってくる様子もない。
奥からやって来る魔物は敵意はないとばかりにゆっくりとした足取りで向かってくる。
「っ!」
ヴンダーとアシュティンは身構える。
しかし魔物は目の前まで来てもその場で止まり、依然として襲う意思を示そうとしない。
そして一人と一匹を見下ろしていた魔物はやがてゆっくりと大きな口を動かした。
「……ヨウ、コソ。イラッシャイ……マシタ。エンポウ、カラノ……ライホウ。カンゲイ、イタシマス」
"え――っ”
「なっ……魔物が、しゃべった……っ?」
ヴンダーが知らないだけで言葉を使う魔物も中にはいる――というわけでないのはアシュティンの反応を見る限り確かのようだ。
魔物の口から発された音はたどたどしくもハッキリと人の使う言語そのものだった。
「オマエ、なんだっ? ただの魔物じゃないのか?」
「シャトゥンサマノ、モトヘ、ゴアンナイ、シマス……ドウゾ、ツイテ……キテ」
アシュティンの疑問に構わず、魔物は客人を中へと招く。
「っ……おい、質問に答えーー」
「そう怒らないでやってくれ。この子なりにボクに言われたことを守ろうとしてくれただけだからね」
"……!"
その時、どこからともなく辺りに声が響き渡る。
姿は見えないがこの軽薄な口調と声は忘れていない。
「シャトゥンか!」
水から浮き上がるかのように、魔物の影からシャトゥンが現れた。
「やあ――ようこそゲルプ国へ! 君達がやって来るのを今か今かと待ちわびていたよ」
シャトゥンは嬉しそうに話す。
本人の言うようにその言葉の端々から興奮の色が見て取れた。
「ーーーーーーッッ!!」
シャトゥンの姿を認めるとヴンダーは再び大きく叫んだ。
「おおっと、すごい声だね。どうやら歓迎してくれてるのは君達も同じようだ」
ヴンダーの威嚇を楽しそうに受け止め、立っている魔物に手で追い払うような仕草で話す。
「客人の応対、ありがとう。彼らはボクが直接案内するから下がっていいよ」
シャトゥンの言葉にグルルと小さく唸りながら、魔物は町の奥へと戻っていった。
「さて、聞いての通りだ。ここからはボクが案内役をさせてもらうよ」
「リーベは無事だろうな?」
「まだ生きているかという質問であれば安心するといい。大したものだよ彼女は。呪いを耐える精神力はもちろんだが、何より諦めない為の気の持ちようというのをよく弁えている。"生きる物”としては最高級だ」
ところで――と、シャトゥンはこの場にいない者を気にかける。
「君達二人だけかい? ペンダントを持った彼女と魔法使いの可愛い女の子が見えないようだけど……」
わざとらしく首を傾げながらシャトゥンは疑問を口にした。
「さあな。お前の顔なんて見たくないってことなんじゃねえのか」
相手の反応にアシュティンもわざとらしくとぼける。
「アハハ。もしかしてコッソリと侵入して彼女を取り返そうって腹づもりかい? だとしたらボクはこうしてまんまと誘き出されちゃったし、君達の思惑は成功と言えるのかな」
「……そう思ってるにしてはどうってことなさそうだな」
「そりゃあそうさ。君達は彼女にかかった呪いを解く為に来たんだろう? その為に何をする必要があるかは君達もよくわかっているはずだよね?」
ヴンダー達がここへ来た目的を再確認するように尋ねる。
わかっている。リーベをここから連れ出しただけでは根本的な解決にはならない。
呪いを受けた彼女を完全に救出するにはこの男の打倒をなんとしても果たす必要がある。
「理解しているようで安心したよ。だったら別にコソコソしなくていいじゃないか。どっちにしろボクを殺さないと彼女を助けることはできないんだから」
その通りではある。
とはいえ仲間の身がどんな状態でどこにあるかはこっちの心境にも関わる。
解決にならないとしても無事を確かめ、彼女の身を保護することは必要だ。
「ボクなりに丁重に保護してあげていたつもりなんだけどなぁ……それに言ってくれれば彼女の身柄を渡すくらいしてあげたのに」
少し拗ねたような口調だが、まあいいやと気にせずシャトゥンは前を歩き出す。
「とにかく客人を城まで案内しないとね。さあ、ボクについてきてよ。せっかくだから道中、ゲルプ国の中を眺めていくといい」
楽しそうに観光を促すシャトゥンに対し、二人は戦闘態勢を取る。
「わざわざ出迎えに来てくれたんだろ? 別に城まで行く必要なんてねえさ。ここでカタをつけてやる、シャトゥン……ッ!」
シャトゥンは小さく笑うとトントンと辺りを指差した。
「見なよ――キレイな町並みだろう? 初めてこの国を見た時は感動したものだよ。それにゲルプ王はとても手強かったからね。彼とその兵達を打破し、この場所を手に入れた時の達成感は忘れられない。感動もひとしおってヤツさ」
当時の思い出を振り返りながら災魔は語る。
「苦労の末、手に入れたこの場所の一つ一つが大事な資源だ。人間は特にそう。怖がって出てこないだけであの家々には今も多くのゲルプ民が生きている。本当だよ? 消費はしても浪費はしていないからね」
「グルル……ッ」
ヴンダーはシャトゥンを睨む。
――グリューン国と同じだ。
アンデルがしていたようにコイツはたくさんの人をこの国に閉じこめている。
自分のテリトリーとしたこの巣箱の中に。
「テメエ……」
「君達の血気の溢れようはボクの好むところではあるんだけど、ここはお互いに気を遣わないかい? この国の民が無駄に減るのはボクとしても望まない。場所を気にせずに君達との闘争に夢中になることは、そういう結果を招きかねないからさ」
そう言い、だからついてきてよとシャトゥンは再び歩き出した。
「……行くぞ、ヴンダー」
アシュティンに促され、ヴンダーも一先ず牙と爪を収める。
グリューン国と同じようにこの国でもたくさんの人間が捕まっている。
確かにここで戦ってしまえば周りに被害を出さない保証などできない。
魔族の方から持ちかけたという点は気に入らないが、場所を選べるというならこちらにとっても望ましい話かもしれない。
"……落ち着け。大丈夫、怖くない――絶対に負けたりしない”
獣は大丈夫だと何度も自分を落ち着かせる。
災魔と呼ばれる未知の怪物。
初めて相対した時のような、恐怖で我を失うことは絶対にしない。
"テツロウ……勇気を分けてーーーー”
すぐにでも噛み殺したい衝動を抑えつけ、町の中へと歩を進めた。
**
その頃、ヴェルメとシュテルはヴンダー達とは別行動をとっていた。
この国の入り口には南門と北門があり、ヴンダーとアシュティンは南門から町に入る。
シュテル達はその裏手。北門側へと移動していた。
しかし二人は壁に沿いながら門から少し離れた場所で止まっていた。
ヴンダー達とは真逆で敵に気づかれずにリーベを救出する側のこちらとしては門から入るのは避けたいというシュテルの希望からだ。
「……」
ヴェルメは上を見た。
見上げると町を囲う巨大な外壁が通さんとばかりに威圧感を放っている。
次にチラリとシュテルの様子を伺う。
彼女は玉石を二つ取り出し、撫でるような動作を繰り返しながら何か呟いていた。
集中している様子のため、話しかけるのはやめておいた。
「ーーーーーー……ッ!」
その時、聞き慣れた咆哮が山頂に響き渡る。
「! ヴンダーっ」
ヴェルメは南側を見る。
自分達をここに降ろした後、ヴンダーとアシュティンは南門へと向かっていった。
正面から堂々と入り、こちらに目を向けさない為の言わば囮役。
作戦と言えるほど立派なものではないが、上手くすればシャトゥン本人を誘き出せると期待してのことだ。
(大丈夫かな、二人とも……)
思惑通りにいこうといくまいとあの二人が一番危険な役目になる。
少女なりに腹を括りはしたが、それが不安まで全て拭ってくれるわけではなかった。
「ーーーー……ッ!」
その心配に答えるようにヴンダーの咆哮がもう一度、山に響いた。
「あ……!」
「2回目の大声――ヴンダーの合図だね。シャトゥンと接触したみたい」
黙って何かの作業に集中していたシュテルが口を開いた。
「こっちも準備できたよ。ーーはい、これ持って」
そう言ってシュテルが手渡したのは彼女が愛用する玉石だった。
「それ、足下に置いて」
「は、はい。ーーーーきゃっ?」
言われるままにすると玉石が光り、星型の物体へと形を変えた。
その星型の真ん中にちょうど座りこむカタチになる。
ヴェルメが星型に乗ったのを確認してからシュテルも同じ物を作り出し、よいしょと乗っかる。
「シ、シュテルさん、これーーっ」
「これに乗って壁を上るよ。暴れなければ落っこちたりしないけど、なるべくじっとしててね」
すると星型がふよふよと浮き上がり、二人をゆっくりと上へと持ち上げた。
*
「わぁ……っ」
山の頂上から更に高度が上がっていく。
遠くの景色を見て、ヴェルメは思わず目を輝かせた。
「怖い? 走ってるヴンダーの背に乗って楽しそうにしてたくらいだから、これくらい平気でしょって思ったんだけど」
「い、いえ。怖くはないです。ただ、すごくて……」
「ホントは自由に飛び回るくらいしてみたいんだけどね。私じゃふわふわ上がったり下りたりが限度だよ」
「……ホントに不思議です。だってお姉ちゃんが言ってました。魔法は普通の人ができることをほんの少し大げさに表現するだけなんだって」
普通の人は星に乗って空を飛ぶことはできない。
シュテルの見せる魔法は姉から教えられていた魔法の定義とは大きく異なって見えた。
「謙虚な言い方だね。魔法使いクルク様は勇者一行の仲間として魔王討伐の一翼を担ってたんだよ? 間違ってるとまでは言わないけど、その言葉は"ナメんなよ”って怒る魔法使いもいるかもだよ」
それは確かにその通りだった。
勇者の仲間として危険な獣や魔族の襲来から人々を守った実績を持つ偉大な魔法使いは間違いなく存在している。
「それにさ、リーベの回復魔法だってメチャクチャすごいじゃん。"傷を治す”って括りで言えば確かに普通の延長線なのかもだけど……喰いちぎられた身体をあっという間に治療できるのは十分、常軌を逸した力だよ」
さすがに自分を卑下しすぎでしょ、とシュテルは自分の肩をポンポンと叩きながら呆れたように言った。
「要は魔法って自分の思い描いたものを形にする力だよ。"出来るに決まってる”って思いこむことで魔法は"空想”から"不思議”となって内から外に顕現する。だからこれも同じ。私、星は人を運べるって本気で思ってるからね。へへ」
ポリポリと頬をかきながらシュテルは少し恥ずかしそうに話した。
「魔法は空想力……やれるって思いこむことさえできれば、どんなことも可能なんでしょうか?」
災魔や魔王に勝てるほど強い力を出すこともできるのか。
苦しんでいる全ての人を救うことは?
「……まぁ口だけなら無限の可能性が広がってるような話にも感じるけどね。残念だけど人の頭はそこまで自在じゃないんだよ。大なり小なり、人には理性ってものがあるから」
魔法は空想から発現する。
その個々で思い描く想像を“これはこうなるに決まっている"、"あれはああなって当然だ"という思いこみに転換することで、魔法はより非現実的な妄想を実際のカタチとして現わす。
例えば星型の乗り物で空を飛ぶメルヘンチックなこの魔法も。
マーギアという小さな村で幼い頃から母の魔法を目にし、星にまつわる様々な話を寝物語に聞かされてきた少女独自のものだろう。
妄想すら現実へと形にできるのなら確かに魔法という力には無限の可能性があるようにも感じる。
しかし銀髪の魔法使いはそれを否定する。
魔法はそんなに万能じゃないし、何より自分達も人間だからだと。
魔法使いと呼ばれていようが世界の見方と解釈のしようは普通の人間とそう大差はない。
どんなに豊かな想像力で何かを思い描こうと、それが思いこみへと変わる前にどこかでその妄想にはブレーキがかかってしまうものだ。
何故なら"実際には無理だってわかっている”と認める理性を持つ賢い生き物が人間なのだから。
そもそも魔法でどこまで実現できるかなど、個人ごとのスペックに委ねられるのだから制限のない妄想の具現化なんてあり得ないのだ――シュテルはそう考えていた。
「こういう時、魔族お得意の"たかが人間”って言葉がしっくりきちゃうよね」
「え?」
「――なんでもない。さあ、上に着くよ」
魔族なんかの言葉に少しでも同調した自分に”ばか”と悪態をつき、シュテルとヴェルメは胸壁部分に降り立った。
**
町を囲う外壁の上からはゲルプの町を一望できる。
それは本来であれば壮観の一言だったのだろうが、天候は晴れているにも関わらず町全体はどこか暗く、どんよりとして見える。
「え――シ、シュテルさんっ あれっ――町を見てっ」
ぼんやりと見下ろすだけでも町の異様な光景はすぐに目に入ってきた。
魔物が町の中を歩いている。
それも1匹や2匹だけではない。たくさんの魔物が大通りや狭い路地をひしめき合うように動いていた。
「な、なに……これ」
「……シャトゥンの奴、どういうつもりなんだか」
二人は町を歩く魔物の群れを観察してみる。
……何をしているのかハッキリとはわからないが、その動きは無秩序というかただ思い思いに行動しているだけのように見える。
まるで人間に代わって生活をしているかのようでもあった。
「……この国の人達は、無事なんでしょうか」
「わかんない――パッと見た限り人の姿はなかった。どっちにしろ今、確かめる余裕はないね。――それよりヴェルメもあれを見て」
シュテルに促された方に目をやると、そこには大きな建造物が一つ置かれている。
城というよりは宮殿であるその建物は、立ち並ぶ家屋を押しのけて町の真ん中に堂々と立っていた。
「あそこにお姉ちゃんが……」
「きっとね。この星に乗って一気にあそこまで行くよ。ただ滑空することになるから位置を間違えたらとんでもないことになっちゃう……角度を調整するからちょっと待ってね」
「ヴンダーとアシュティンさんは……」
「シャトゥンとは接触したはずだけど、南門の方を見ても戦ってる様子はなかったね」
確かに戦いが始まっているのなら、恐らくここからでもその様子はわかるだろう。
それに町をのんきに歩き回っている魔物の様子から見ても、まだ何も起きてないのかもしれない。
「シャトゥンの歓迎ぶりを考えると今頃、宮殿に案内されてるのかもね。まぁ、だとしてもこっちのする事は変わらないし。――さあ、これで大丈夫。準備はいい、ヴェルメ?」
「は、はいっ」
シュテルに倣い、ヴェルメは星型に乗りなおす。
奥に見える宮殿を真っ直ぐ見据え、姉を強く思い浮かべる。
(待ってて、おねえちゃん――無事でいて……っ)
「――――いくよ」
シュテルの合図と共に宮殿の上階部の窓へ狙いを定めて飛んだ。




