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影が笑えばその身、戦慄く

「おねえちゃん!?」


「っ……、ぁ……」


 呼びかけられているリーベから返事はない。


 仲間との待ち合わせ場所としてやってきた小屋。

 強雨の中で一夜を明かして朝となった空はすっかり晴れて白んでいる。


 後はシュテルと合流できたら今後を相談し、ここを発つ――はずだったが。


「リーベ! リーベ、おいっ! しっかりしろ!」


 突然、倒れたリーベ。

 大量の汗と蒼白になった顔が彼女を蝕む異常な事態を示していた。


「おねえちゃん! ……どうしよう、アシュティンさん。おねえちゃん、すごく辛そう……っ」


「……ひでえ熱だ。昨日はかなり雨に当たっちまってたからな。だけど……」


 アシュティンは腑に落ちないといった表情をしている。


 確かに――少し体の具合が悪いといったふうではない。

 体が冷えたせいで風邪を引いたというのであれば話は単純だが、それを理由と考えるには彼女の苦しみ方は尋常ではなかった。


 リーベは皆の声が聞こえていないのか、それとも答える余裕がないのか床に伏したまま目を閉じて荒い呼吸を繰り返している。


「とにかく熱だけでもどうにかしねえと……そういやケニンヘが餌にしてる野草には解熱効果もあるって教わったことがあったな。――俺、もう一回外に出てその野草を取ってくるからリーベを見ててやってくれ」


「おねえちゃん、悪い病気……なのかな?」


「……わからねえ。病気のことなんて俺にもさっぱりだ。けど試せることは試さねえと。シュテルが来てくれれば、あいつなら何かわかるかもしれねえんだけどーー」


「呼んだ?」


「え? あーーシ、シュテルさんっ?」


 いつのまにかシュテルが扉を開けて外に立っていた。


 銀の髪と金の瞳をした少女。


 わずかに青みがかった黒いローブを身に着け、腰には小物が入りそうな小さい革袋が一つ肩から下げられており、片手には冊子のような物が握られている。

 シュテルはそれを袋にしまいこんでから、どいてと言いながらツカツカとリーべのもとへ近寄った。


「ぅ……っ、はぁ……はぁ……っ」


「…………」


 シュテルは苦しむリーベをジッと観察している。

 やがて何かに気づいたようにその表情は段々と険しくなっていった。


「――どうしてこうなってるの?」


「俺達にもわからないんだ。ただこの小屋に着いた夜からリーベは少し調子が悪そうだった。それで今朝、起きた時には……」


「シュテルさん、何かわかりますか? やっぱり昨日の雨に当たったせいで、おねえちゃん、体を悪くしちゃったんでしょうか?」


 不安そうに尋ねるヴェルメ達を見ながらシュテルは少し呆れた顔をしながら否定した。


「違うってば。何、勘違いしてるのさ。これは病気なんかじゃないよ。――ごめん、リーベ。少し服を脱がせるよ」


 そう言ってリーベの衣服をまくり、腹部から胸にかけて露出させる。


「見て」


「!? なっ――」


 露になった彼女の肌には黒い痣が広がっていた。

 腹部から胸――特にその右半分が酷く、黒い斑点状の痣がいくつも現れている。


「な……なんだよ、これ」


「……こっちか」


 驚くヴェルメ達をよそにシュテルが今度はリーベの右腕の袖をまくった。


"!! これは――”


 右腕はより酷かった。

 黒い痣に加えて赤黒い血管のようなものが浮き出て、手首から肘の辺りをびっしりと覆っている。


「お……おねえちゃん……これ、なんで……」


「おい、シュテル! こいつは一体なんだ!? まさか――」


「これは病気なんかじゃない。魔族の呪いだよ」


 魔族のもたらした毒が彼女を蝕んでいる。

 シュテルは確信を持ってそう告げた。


 でも呪い? リーベが呪いを受けてるだって? なぜ?


「だから訊いてるんだよ。いつこんな事になったの? 私がここに来るまでの間で魔族に襲われたの?」


 そんなことはない。マーギアを発ってから他の誰かに出会うことすらもなかったのだから。

 何かが近づくこともなければ怪我の一つだってしていなかったはずだ。


 それを理解している全員がシュテルの問いに対して首を横に振る。


「昨日今日じゃなくても――私とマーギアで会った時より前でもいい。リーベが魔族に呪いを受けたこと、なかった?」


 それもないだろう。

 そもそもこれまで出会った魔族は全員、間違いなく倒しているのだ。


「でも何の要因もなく呪われるはずないよ。魔族の呪いはデタラメで理不尽に近い力も多いみたいだけど、その理不尽を発動させるにも特定の条件が必要なんだから」


 いつでもどこでも好きな時に好きなだけ呪えるなんてことはないとシュテルは言いたいらしい。


「そ、それはわかるけど――でもリーベは本当に昨日まで普段と変わりなかったんだ。心当たりなんてないぜ」


 アシュティンの言うことは尤もだ。

 さらにリーベも自身の体の不調に戸惑っている様子だった。

 以前からの症状を彼女が隠していたということもないだろう。


 つまり――何故かは理解できないが。

 リーベを苦しめるこの現象は今朝、あるいは昨夜に突然現れたことになる。


「――――」


「? ヴェルメ……」


 皆が原因を探しあぐねているとヴェルメが呪いに浸食されたリーベの右腕にそっと触れた。

 一瞬、大丈夫なのかヴンダーは警戒したがヴェルメに影響が及ぶ様子はない。

 ペンダントの力が発現もしていないことから、どうやら触れる分には問題ないようだ。


「…………」


「ヴェルメ、どうしたんだ?」


 ヴェルメはリーベの手に触れながらじっと考えこんでいるようだった。

 だがしばらく黙っていた彼女はどこか狼狽えた様子で話しはじめた。


「……これ……同じ、かも……」


「――同じって?」


「そ、その……グリューン国を呪ってた力と……同じかもって。……ううん……同じ、です」


「――――なんだってっ?」


 ヴェルメの言葉に全員が驚愕した。


「グリューン国を呪った力と同じ? つまりこれはアンデルの呪いってことなのか?」


 そこまで口にしてからアシュティンはいやいやと自分の発言に首を振った。


 確かにそれは有り得ない。アンデルは間違いなくアシュティンが仕留めた。

 実際、グリューン国の住民を呪っていた力は消えていたのだ。

 あの魔族の死を疑う要素はない――はずだが。


 ヴェルメを含めるあの場にいた二人と一匹はそう納得しかけたが、シュテルがすかさず異を唱える。


「待ってよ。どうせ何もわからないんだから、せっかく出た説をそんなすぐ否定することないでしょ。グリューン国を呪ってた力と同じモノがリーベを苦しめてる――まずは一旦その前提で考えてみようよ」


 そう諭してからシュテルはヴェルメに問いかける。


「ねえ、ヴェルメ。間違ってるかどうかはひとまず気にせずに思い当たることがあるなら言ってみて。あなたのお姉ちゃん、グリューン国で何かあった?」


 落ち着いて、細かく思い出してもらう為にシュテルはなるべく優しくヴェルメにそう尋ねた。

 そのおかげかヴェルメも少し冷静になれたようだ。


「そ、その……あの時グリューン国で私とおねえちゃんは魔族のかけた呪いの元を探してたんです。……アシュティンさん達を助けるために」


「ああ。あの時リーベ達が動いてくれなかったら俺やロミー達は助からなかった」


「塔の一番上に隠されてた呪いの元を見つけて、呪いは確かに解きました。このペンダントの力を使って……でも」


「うん」


 ヴェルメはゆっくりと当時の状況を振り返りながら語る。

 シュテルは初めて聞く話に相槌を打つも決して話を遮らない。

 あくまで彼女のペースに委ね、その言葉に耳を傾けている。


「最初に呪いの元を見つけた時……おねえちゃん、ソレに直接触れちゃったんです。危険だから自分がやるって私の代わりに、ペンダントを持って……だけど私が持ってないとペンダントは力が出ない、から」


 その場にいなかったヴンダーとアシュティンにもその光景は目に浮かんでくる。

 確かにあの時はまだペンダントが発動する条件さえよくわかっていなかった。

 ヴェルメの身が脅かされるのを危惧し、リーベが代役を引き受けたのも無理からぬことだっただろう。


 あのペンダントは持ち主であるヴェルメが危機にさらされた時にのみ発動する。

 グリューン国での経験があったから、その実感を得たとも言えた。


 ただ、今はそれよりも。


「アンデルの呪いの元に触れたのかっ? じゃあ、まさかそれが――」


「で、でもなんでもなかったのっ 触った時も少し手がヒリヒリしたけど平気だって言ってた――その後だってずっといつも通りのおねえちゃんで……」


 それはヴンダー達も知っている。

 それになによりアンデルが死んでいるのは確かなのだ。

 いくらグリューン国の出来事を思い返したところで今の彼女の状況には結びつかないのではないかと皆、考えていた。


「……きっとそれだ」


「え?」


 しかしシュテルだけはそう思わなかったらしい。

 きっとと言いつつも確信を得たかのようにその言葉には迷いがなかった。


「リーベが呪われた原因はそれと考えていいと思う」


「け、けど――」


「わかってる。その魔族は倒したし、今までなんともなかったんでしょ? でも他に心当たりがないならそう考えるべきだと思う」


「じ、じゃあ……だとしても。なんで今になって?」


 その時、疑問を口にするヴェルメの手をリーベの手がそっと触れた。


「ヴェ、ルメ……?」


「っ! おねえちゃん、大丈夫っ!?」


 リーベはぼんやりとした表情でヴェルメを見つめている。

 意識は戻ったようだが荒い呼吸と顔色の悪さは依然変わっていない。


「あ……れ? わた、し……どうして、こんな……」


 リーベは自分の身体を見て驚いている様子だ。

 やはり彼女も自身に起きていることに気づいていなかったのだろう。


「ひどい……有様、ね。……ごめんなさい、みんな……わた、し……」


「いいからっ 今はしゃべるな、リーベ」


 息も絶え絶えに謝罪の言葉を口にするリーベを見て、ヴンダーは気が気でなかった。

 このまま目を閉じれば、そのまま二度と目覚めないのではないかと考えてしまう。


 嫌でもあの時の。あの光景を思い出す。


 倒れる大切な人。苦しんで青白くなった顔。

 動かなくなっていく大切な人の体。助けられなかった自分。


"イヤだ……あれはもう、イヤだ。やめて……お願いだからーーもう、あんなのは……っ"


「……シュテル。このままだと、リーベはどうなる?」


 なんとか冷静さを保ち、アシュティンはシュテルに問いかける。

 シュテルもその問いに対し、なるべく落ち着いて答えた。


「……リーベを苦しめてるこの呪いは並大抵の力じゃない。普通の人ならとっくに死んでる。彼女は魔法使いだから自分の魔力で多少、魔族の呪力に抵抗はできてるけど……それもいつまで持つかわからない」


「どうやったら助けられる? ――その方法はあるのか?」


「そりゃ呪いをかけた魔族を倒すのが一番確実……というか唯一だとは思うけど。その魔族は死んでるんだったよね。……でも、多分これは」


「…………」


 皆がリーベを案じる横でシュテルは真剣な面持ちで何か考え込んでいる様子だった。


 そしてアシュティン、ヴェルメ、ヴンダーと一人一人に目線をやる。

 その顔は怒っているような困っているような複雑な表情を浮かべていた。


 言いたいことがあるが口にしていいかどうか迷っているーーそんなふうにも見えた。


 シュテルは最後に苦しそうにうめくリーベに目線を移す。

 そんな彼女を見て決心がついたのか観念したように息を一つ吐くと、皆に声をかけた。


「みんな、聞いて。リーベにかけられたこの呪いの原因だけど……もしかしたらーーーー」


「ああ、こりゃあ僕のせいだね」



〇〇●〇〇〇



「ーーーーーー」


 いつからそこにいたのか。

 横になっているリーベを中心に集まっていた一行の中にソレは混じっていた。

 この中で明らかに特大の異物であったソレはまるで最初から仲間として一緒にいるかのような自然さで皆の間に入っていた。


 影のように現れたソレは――その男はヴェルメ、そしてヴンダーを交互に見た後。


「ああ――――、会えて本当に嬉しいよ」


 そう、心の底からの喜びを表した。


 それは圧倒的な蹂躙を。

 一方的な狩りを悦楽とし慣れた魔こそが見せる最上で最悪の嗤笑(ししょう)だった。


「――――ッッ!!」


 ヴンダーの咆哮。

 そして凄まじい轟音と共に小屋は崩壊し、バラバラに吹き飛んだ。



*****



 ――――恐ろしい。


「……、…………」


 耳に聞こえる何かの音が恐ろしい。頭に流れ入るような誰かの声が恐ろしい。


「……、……」


 鼻に漂う何かの臭いが恐ろしい。肌に触れる何かの触感が恐ろしい。


「…………、」


 目に入る一切合切が悍ましい。


 かといって眠るのは――――もっと恐ろしい。



 北の地にあるのは五国の一つ。

 そこに(そび)える王城の最上階にある大広間。


 激しい戦いがあったのか、部屋のあらゆる個所には破壊の痕が見られた。

 天井や壁には巨大な穴ができて、外の光が無遠慮に入りこんでいる。


 半壊した部屋の最奥には大きな天蓋のベッドが一つ置かれている。

 カーテンで遮られた中には何者かが一人。

 頭まで全身を毛布に包めており、どんな様相の人物かは知れない。


「――魔王様」


「…………」


 天蓋の奥に向かって声がかけられる。

 ベッドから数メートル離れた場所に男が一人立っていた。


「ご様子を伺いに来ました。お身体の具合はいかがでしょう?」


 丁寧に物腰の柔らかい態度で語りかける男の側頭部には二本の角。


 魔族の男は軽く会釈をした後、天蓋の奥の人物に向かってそう確認する。


「……、……」


 魔族の声かけに天蓋の人物は反応しない。

 その存在に気づいてすらいないのか、うわ言のようにブツブツと一人呟いている。


「未だ休まれていないのですね。御身が抱えておられる憂い事は、余程その心を縛るものであるらしい」


「……」


「どうか我々に――我々、災魔にお任せください……魔王様。貴方の欲する望みは我々が全て叶えて差し上げます。何も心配はいりません。……どうかご安心を」


 どこか気品を感じさせる魔族は恭しく頭を下げる。


 その口もとは、薄く笑んでいた。


「……、……」


 魔王と呼ばれた人物は一切呼びかけに答えることがなかった。

 全てを拒絶するように毛布に包まったまま、ブツブツと独り言を繰り返す。


「……では失礼いたします」


 既に承知の事なのか、魔族はその態度に不満を漏らすこともなく静かに立ち去っていった。


「……、…………」


 天蓋の人物はぶつぶつと繰り返す。

 その言葉の一つ一つに意味があるのか誰も――本人さえもわからない。



 恐ろしい。恐ろしい。

 視えるモノも聞こえるモノも臭うモノも触れるモノも全てが恐ろしい。

 ここはダメだここは地獄だ助けてくれ救ってくれ誰かダレかナニかダレか。

 壊れろ壊れろ全部壊レろ死ネ消エろ全部無くナレ。

 世界は気持チ悪イ世界ハいらナイ世界は許セナい。



 ――――アア、ヨクモ。


 カナラズ、オマエヲ、コロシテヤル。



*****



「ーーーーッッ!!」


「うわ……っ!?」


 ヴンダーが黒い怪物となり咆哮する。

 変化の衝撃に耐えられない小屋が瞬く間に崩れていった。


「……あっぶねぇ! ヴンダーの奴……!」


 アシュティンは間一髪でヴェルメとシュテルを引っ張り、外へと脱出していた。


「っ、おねえちゃんは……!?」


「あそこ! あいつが連れてった……!」


「ーーッ!!」


 ヴンダーが巨大な尾を振るい、瓦礫の山を吹き飛ばす。

 小屋があった場所から十メートル以上離れた先を獣の四つ目が睨む。

 そこには異物として紛れた男が愉快そうに笑みを浮かべながら立っていた。


「好戦的なんだねぇ。嫌いじゃないーーというかかなり好きではあるよ。だけどあまり興奮しすぎないほうがいい。危うく君の友人達を瓦礫に埋めてしまうところだったからね」


 そう口にする男の腕にはリーベが抱えられていた。


「おねえちゃんーーっ!」


「リーベ! ……テメエ、魔族かッ!!」


 そこでアシュティンも戦闘態勢に入るがシュテルがそれを制止する。


「待って、アシュティン! ……あいつ、災魔だ!」


「!? なに……っ」


 災魔の名前を聞き、アシュティンの動きが止まった。

 ヴンダーだけが唸り声を上げながら今にも飛びかかろうと構えている。


「災魔だと? あいつがーー」


 アシュティンは相手を観察する。


 深く黒い瞳。魔に類するものであることを示す二本の角を持った男は黒い貴族服に身を包んでいる。

 明るく他者に語りかける態度と肩まで伸びた金髪の長い髪。

 一見するとその風貌は爽やかな好青年といった印象に見える。

 しかし影のように突然現れたその不気味さとはどこか不釣り合いにも思えた。


「見たことがあるわけじゃない……でも、わかるっ 魔法使いは普通の人よりも他の魔法使いや魔族の持つ力に少し敏感なの。だから、わかるっ 前のネストよりもずっと濃くて、ドロドロして、気持ち悪いっ こんな強くてヒドいの、災魔以外にありえない……!」


「君こそ酷い言いようだねぇ。君達からしたら僕は腐った食べ物と同義ってわけかい? 僕は自分が楽天家だと自負しているけど、さすがに少し傷ついちゃうなぁ」


 確信を持って告げたシュテルの言葉に肩をすくめながら魔族の男は返事を返す。


「だけど、まあ――ご名答だ! 災魔であることを見抜いた君達に自己紹介はいらないと思うけど、一応名乗らせてもらおう」


 そう言うと男は右手を体に添え、左手を水平に伸ばしながらお辞儀を始めた。


「初めまして、勇敢なる御一行。僕の名はシャトゥン――魔王様の配下であり君達が災魔と呼ぶ者の一人だ」


 男は堂々と名乗るとニコリ、と明るく微笑む。


「とても君達に会いたかった――僕の部下達が世話になったね。見事、皆殺しにしてくれた君達の勇気と手腕に心からの感謝と礼賛を。勇者達の死後に君達のような勇士と出会えたことを心より嬉しく思おう……」


「……災魔、シャトゥン」


 そこでようやく敵の正体を全員がハッキリと理解した。


 災魔。


 魔王を倒すという意思を持った一行にとって避けようがない敵。

 ()の手の魔族を数度退けたことで、いずれ直接ぶつかる事になるであろうことはわかっていた。


 それでも余りに突然現れたその脅威の存在を前に、自身の内から湧き上がる戦慄を誰も隠すことができなかった。


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