2話
「待ち合わせ場所ってここだよな...?」
デートというのは待ち合わせ時間よりも前に行くのがいいとネットに書いてあった。確かに、例えほんとに付き合っていなかったとしても、相手を待たせるのはあまりよくないだろう。というわけで、三十分ほど前に行くことにしたのだ。
「人多いな...もしかして見つけるの苦労するんじゃないか...?」
流石に休日だからか人が多い。満員電車みたいなとまでは行かないが、人探しは苦労しそうである。待ち合わせ場所は変えた方がいいかもしれない。
『人が多すぎて待ち合わせきつそうなので、場所変えませんか?』
「待ち合わせに良さそうな場所を探さないと...」
『変更了解です!あと十分ほどでつきます。
変更場所決まってなければ、Dripという喫茶店でもいいですか?』
『大丈夫です。先に行ってます』
Dripという店を検索してマップに道案内して貰う。少し古びた外観だが、あまり人が来ないようなところにあるので逆に合っていた。
「おしゃれ...というより趣があるというのか...?」
(ここが行き着けってもしかしてちょっと変わってるのか...?まぁ、好みは人それぞれだし口出すつもりもないが...)
中は想像通りというか、結構レトロチックな内装をしていた。今時のおしゃれなカフェもいいが、こういうのもいいな!
「いらっしゃい」
店員は奥にいた70前後くらいの男が一人のみ。おそらく店長だろう。カウンター席が8席、テーブル席が3席と一人でやっている店なのか席の数が少なかった。とりあえずテーブル席に座る。
「初めて見る顔だな。この店はどこで知ったんだ?」
「えっと...知り合いから聞いたんです」
「で、興味持ってきたのか」
「いえ、その知り合いがここを待ち合わせの場所に」
「待ち合わせにこの店を選ぶとは変わったやつだな」
「ハハハハハ!違いねぇ!」
店主とカウンター席にいた50歳ほどの男性が笑いながら言った。俺の他にはカウンター席に1人、テーブル席に1人客がいる。テーブル席の客はイヤホンを着けていて、聞こえていないようだった。カウンター席にいたそのおじさんは中々気の良い人だったので、談笑しながら待っていると、ドアが空いた。
「すみません!お待たせしました!」
ひどく息を切らしながらベルを鳴らして入ってきた彼女は、店内を見回してすぐに俺を見つけ、こちらに歩いてくる。
「はぁ...はぁ...えっと...雨宮総司さん...であってますよね...?」
「あ、そうです。えっと...大丈夫ですか...?」
かなり走ってきたのだろう。結構しんどそうだ。
「一旦休んでください!なにか飲みます?」
「す、すいません...じゃあ、アイスコーヒーを...」
店主に注文して、彼女が落ち着くまで待つ。アイスコーヒーが運ばれてきた頃には、ある程度元気になっていた。
「まずは...遅れちゃってすいませんでした!」
「いえいえ、遅れたと言っても10分くらいですし、大丈夫ですよ」
「そう言って貰えると助かるっす...」
彼女はホッとしたような表情になる。流石にたかが10分ほど遅れたくらいで文句を言うほど心が狭い訳ではない。そもそも俺も待ち合わせに遅れたことあるしな...
「えっと...コスプレOKってことだったんで一応してきたんですよ!なんのキャラかわかります...?」
そう言われて、そういえばそれ目当てでこの娘を選んだんだったと思い出す。
どれどれ...と改めて彼女を見る。髪は、茶色にをベースに髪の先だけ違う色...確かバングカラー...だっけ?次に、目は...すごい色だな何色だ...?服は...全身赤と黒で、上着の赤の部分には花が書かれている。
(わからねぇ...)
「わからない!って顔してますね。普段ゲームとかしてますか?」
「いや、ほとんどしないかなぁ...」
「そっかー...コスプレOKの人ってアニメとかゲームとかそれなりにしてる人が多いんだけど...雨宮さん変わってますね~」
「ちなみに、なんのキャラ何です?」
「えっと、緋○美琴です! こういうゲームのキャラなんですけど...」
「あー、何か見たことあるかも...」