98話:コマキ丘陵
島左近清興だ、例の世継ぎ問題は無事に解決され、ワシとしても心底、安堵した。せっかくの泰平の世を世継ぎ争いで潰してほしくないからな
「とりあえず一安心だな。」
「左様ですな。」
それから一週間が経ち、執務室で仕事をしていると、扉からノック音がしてワシは許可を出すと、与一が入ってきた。与一の報告からすると、シュバルツ王国の家紋の入った馬車が屋敷に近づいているのだと言う。ワシは事前に出迎える準備を進めると、使用人の1人から「ルナ・キサラギがお越しになった」と報告を受けた。ワシはいつものように身嗜みを整え、外にいるルナを迎えた
「お待たせして申し訳ござらん。」
「いいえ、こちらこそ突然尋ねてきて申し訳ない。」
「ささ、中へ上がられよ。」
「では、失礼します。」
ワシはルナを客間へ案内させた後、茶と塩味餡大福を用意させ、使用人たちを下がらせた。するとルナが立ち上がり、懐から勅諚を取り出した
「その前に役目を果たしてからにします。サコン・シマ殿、国王陛下より勅諚にございます。」
「「ははっ!」」
ルナの口から勅諚と出た瞬間、ワシは平伏した。ワシだけではなく与一も共に平伏した
「サコン・シマに【コマキ丘陵】と周辺の土地を与えるものなり。」
「は?」
「さ、左近様。」
思わずワシは頭を上げてしまい、つられて与一も頭を上げ、ワシの名を呼んだ。ルナは突然、頭を上げたワシに問いかけた
「如何されましたか、サコン殿?」
「御止めして申し訳ござらぬ。不躾ながらお尋ねいたすが、それは褒美としてでござるか?」
「そうですが何か?」
「某は何の手柄も立てておりませぬが。」
「手柄なら上げましたよ、サコン殿が陛下に手紙を送った事、忘れられましたか?」
国王が息子のロミオ第2王子の処遇についてどうするか密書の返答した時か。まさか返答による褒美ということか・・・・
「某はあくまで書状の返答をしたまでの事、褒美を賜るいわれはござらん。」
「サコン殿の出された手紙によって陛下の御心が決まり、ロミオ第2王子を廃嫡せずに済んだのです。陛下のご英断により国内外からは平穏そのもの、それを決定づけたサコン殿の手柄による褒美にございます。」
それを聞いたワシはこれ以上、何を言っても無駄と思い、褒美を素直に賜ることにした
「ははっ!謹んでお受けいたしまする。」
「私の役目も終わりました。では茶菓子をいただきましょうか。」
「お役目御苦労に存じまする。」
ワシは再び平伏し、御礼言上を申し上げ、与一も再び平伏した。役目を終えたルナは茶と塩味餡大福を味わった後、そのまま王都へと帰還した。さてワシの方はと言うと・・・・
「【コマキ丘陵】と周辺の土地か・・・・」
「【エメリカ山脈】とは正反対の方向ですな。」
ワシらはルナを見送った後、1つの独立丘陵に注視していた。そう、褒美として賜った【コマキ丘陵】と周辺の土地である。【コマキ丘陵】とその周辺の土地は【エメリカ山脈】と周辺の土地同様、小さい河川によって区切られている。勿論、【コマキ丘陵】はワシの支配地に入っていない独立丘陵であり、標高は60m、丘陵の大きさは、東西約400m、南北約200mである低い丘陵地であり、緩やかな傾斜のため子供でも登れる事が可能だ。その周辺の土地は【エメリカ山脈】同様、わずかな平野のみである。平野部は用水路を作って新田開発すれば良いが、問題は・・・・
「【コマキ丘陵】か、あそこは何もない。精々あるとすれば童でも登れるくらいしか需要がない。」
「左様ですな、他には何もありませんな。」
【コマキ丘陵】は【エメリカ山脈】とは違い、登山以外、何もないのである。ワシは考えに考えた末、桜を植えて、桜の名所にしようと決めた。かつての主である石田治部少輔三成が領地に桜を植樹しようと考えていた。またこの異世界には公園と言う民たちの憩いの場として自然を楽しむ憩いの場があると聞き、公園も一緒に作ろうと考えた
「桜にございますか、良き策にございますな。」
「うむ、問題は商人たちだな。」
「商人たちに利点を説明すれば協力致しましょう。普通なら。」
そこで商人たちを呼び【コマキ丘陵】に桜を植樹し、更に公園を作って、桜の名所にしようと相談したところ、商人たちも賛成した
「【コマキ丘陵】を桜の名所にでございますか。」
「そうだ、桜の名所にすれば、花見目的で人が集まる。人が集まれば自然と金も落ちる。そなた等にとっても悪い話ではないであろう。」
「それは名案ですな!」
「そのためには、そなた等の協力が必要だ、やってくれるか?」
「分かりました、謹んでお引き受けましょう!」
「うむ、忝い。」
商人たちは桜の名所にする事で多くの人が集まり、金を落とす事に目を付け、左近の案に乗り、早速、商人たちは桜の苗木を購入に躍起になった。更に【コマキ丘陵】を調査し、公園作りにワシを含め商人たちも投資を行った。資金の方は特産品による莫大な収益により賄った。桜については四季に咲く桜があり、季節問わず桜を楽しめるとのこと。桜を植樹する場所、公園を作る場所を設け、設計図を作った後、工事に取り掛かった
「左近様、楽しみですな。」
「あぁ、殿もきっと現世で喜んでいよう。」
「殿はあの後、どうなったのでしょう?」
「さあな。今となっては知らぬ方が良いのかもな。」
島左近は関ヶ原で死亡した後、石田三成が六条河原で斬首の刑に処された事は知らずにいた。左近は知らない方が幸せということもあると己を納得させたのである
「さて、これから忙しくなるな。」
島左近は屋敷へ戻り、【コマキ丘陵】開発の報告書とにらめっこするのであった
一方その頃、全国指名手配になったギュンター・フェスティバルと15人の側近たちはシュバルツ王国国境付近に到着していた
「ギュンター様、国境に到着しましたな。」
「あぁ、問題はここからだ。」
自分は指名手配されており、シュバルツ王国にも手配書が出回っている。普通なら国境の関所を通るのだが、ギュンターは別の方法でシュバルツ王国に入る手筈を整えていた
「これだ。」
ギュンターが取り出したのは、通行手形だった。通行手形とは重要な任務をする際に他国へ無条件で通行できる代物である。身分証と違い、取り調べを受ける必要がないのが利点である
「さて参るぞ。」
「はい。」
国境付近に近付き、国境の兵士が近付くと例の通行手形を見せた。すると兵士はすんなりとギュンターたちを通したのである
「どうぞ、お通りくだされ。」
「ありがとうございます。」
通行手形によって、すんなりとシュバルツ王国に入国できたギュンターたちはニヤニヤしながら、その場を立ち去った
「くくく、馬鹿な奴らよ。」
「上手く行きましたな。」
「さて、まずは拠点作りをせねばならぬ。」
「何処に致しますか?」
「そうだな、やはり王都だな。」
「王都?危険ではありませんか?」
「ふふふ、まさかお尋ね者が王都に潜伏しているとは奴等も思うまいよ。」
ギュンター等はそのまま王都へと向かった。その道中で町に到着し、そこで一旦、宿を取った。宿を取り、ギュンター等は部屋に入った。部屋に入った後、今後の事について話し合いが行われた
「ギュンター様、本当に教祖はこの国にいるのでしょうか?」
「あぁ、奴の性格を考えれば、絶対にいる。」
「しかしシュバルツ王国は広いです。その中で教祖を探すとなると、砂漠の中で小さな針を探すようなものです。」
「ふふふ、誰が全部を探せと言った。奴は治安にいい町に潜伏するだろう。」
「治安のいい町?そこはどこですか?」
「それをこれから探すのよ。」
ギュンター等は宿で一泊した後、食料の買い出しをし、そのまま王都へ向けて出発するのであった




