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97話:世継ぎ問題

島左近清興だ、例の視察騒動でかかった費用は国王であるロバート・シュバルツが全て弁償してくれたおかげで赤字にならずにすんだが、この視察騒動にて王太子であるロミオ・シュバルツの次期国王への資質に問題ありと世間に知られるようになり、国内外で波紋を呼んだのである


「とんだとばっちりを受ける羽目になったわ。」


「左様ですな。」


「幸いなのは国王が全て弁償してくれた事で民からの不満が減ったが、これによって王太子殿下の評価がかなり下がったな。」


「御意。」


ワシが地主になる前、ロミオの兄で第一王子であったロゼオ・シュバルツは女子の間者に籠絡され婚約破棄騒動を起こし廃嫡となった。此度の事でロミオは王太子の座を剥奪されたが、廃嫡には至らず第2王子のままである。手柄次第で王太子の座を戻す腹積もりなのだろう


「何事も起こられねば良いが。」





その頃、王宮では国王ロバート・シュバルツは家臣たちとロミオの処遇について話し合いが行われた


「畏れながら陛下、ロミオ第2王子の評判は芳しくございませぬ。」


「左様、先に廃嫡されたロゼオ元第1王子のようになるのではないか取沙汰されております。」


「うむ。」


すると一人の家臣がロミオを廃してロバートの親戚の1人を世継ぎにすべきと進言したことで、更に波紋が広がった


「陛下、もしも場合、陛下の妹君のお子で実の甥御に当たられるチャベル王子を世継ぎにすべきかと。」


「いや流石にそれは早すぎるのではないか?チャベル王子はまだ8歳だぞ。」


「万が一ということもある、陛下、御裁断を!」


「畏れながら長幼の序は守られねばなりませぬ!」


「左様、先人の言葉に大器晩成という言葉がございます!すぐに廃嫡をするのは早計かと存じます。」


家臣たちからは長幼の序、廃嫡という言葉が出た。ワシは家臣たちを一旦、下がらせることにした


「相分かった、すぐには決められぬ。しかと吟味の上で発表をいたす、皆の者、大儀である。」


「「「「「ははっ!」」」」」


家臣を下がらせた後、ロバートは1人悩み続けた。第1王子である息子のロゼオに続いて、今度はロミオをどういたすか考えに考えた


「大器晩成か。」


1人の家臣が申したこの言葉にロバートの心に響いた。確かにこの件を糧としてロミオは成長を促すのも良いが、家臣や貴族たちはどう捉えるだろうか、親馬鹿と見るかもしれん。国王としても父親としても板挟みに苦しむ思いだ


「もしサコン・シマなら如何いたすだろうか。」


ふとあの男の顔が浮かんだ。あの者の手紙を書かれた事、特に【準男爵】創設を実際に行ったら、他国も真似をするほどの影響力があった。恥を忍んで奴に手紙を書くことにした。第3者の意見は他と違い、ありのままを伝え、公明正大にうつる。特にあの男ほど無欲で公明正大な男は他にいない・・・・


「サコン・シマ、今になってこれほど小賢しき男はおらぬ。」






それから数日が経ち、視察騒動も落ち着きを見せたころ、左近の下に国王の書状が届いた。いつ見ても立派な文箱(王家の家紋入り)が目につく


「左近様、陛下からの書状にございまするな。」


「うむ大方、視察の一件だろう。早速、拝見しよう。」


ワシは文箱を有り難く掲げた後、文箱を開けると封をした書状をあった。早速、封を切り書状を広げ、内容を拝読した






【サコン・シマへ】

「突然の手紙、さぞ驚いたであろうな。それはさておき先日の視察の事、すまなかった。息子のロミオの浅はかさに親として恥ずかしい思いだ。さて私は悩んでいることがある。息子のロミオの事だ、家臣や貴族たちの間ではロミオに次期国王の資格があるのか疑問視する動きがある。中にはロミオを廃嫡して別の者を王太子にする動きもある。ワシとしてはそれだけは避けねばならぬ。そこでそなたの知恵を借りたい。もし手立てがあってもなくても書状で書き記してほしい、あて先はルナ・キサラギに出してほしい。他の者に見られでもしたら大変だからな。では吉報を待っている」

【ロバート・シュバルツより】





ワシは書状を仕舞うと同時に溜め息をついた。ワシの様子を見た与一はたまらず声をかけた


「左近様、書状には何と。」


「見よ、口には出せん。」


「で、ですが・・・・」


「ワシが許す。」


「は、では拝読いたします。」


与一は書状を受け取ると、有り難げに大きく掲げた後、書状の内容を拝読した。書状を呼んでいくうちに与一の表情が青白くなった。書状を読み終えた後、ワシの方を向いた


「これは難題ですな。」


「ああ、頭の痛い事よ、なぜワシにこのような大事を・・・・」


そう世継ぎ問題、いつの時代にもあった。太閤秀吉公と淀殿との間に秀頼公をご誕生した事で、秀次公に謀反の濡れ衣を着せられ自害に追い込まれ、一族にいたるまで処刑された。下手をすれば国を危うくしてしまうほど厄介この上ないものはない


「左近様、ご返答は如何いたしますか?」


「はあ~、書くしかあるまい。与一、紙と筆を。」


「はっ!」


ワシは早速、返答を書くことにした。ワシはある例を書状に記すことにした。これを見てどう判断するか国王に裁断してもらおう






【国王陛下へ】

「畏れながら御書状を拝読仕りました。お世継ぎ様に関しては国王陛下がお決めあそばすことが肝要にございます。一つ例をあげれば、我が故郷、ヒノモトとは別の国にて御家騒動が起きました。エンショウとリュウヒョウという二人の貴族が世継ぎを嫡男ではなく、次男・三男に家督を譲った事で御家が二つに割れ、やがて骨肉の争いが起き、結果滅亡をいたしました。某が言えることはこれだけにございます。」

【サコン・シマより】





ワシはあえて誰を推すことはせず、悪い例として三国志演義に出てくる袁紹と劉表の事を書き記したことで、国王の決心を促したのである。ワシはルナ・キサラギ宛にし、添え状を文箱に一緒に入れて、早便に送った


「さて後は国王次第だな。」


左近の送った書状はそのままルナの下へ送られた。ルナは左近からの書状が来たとき、驚きと共に何事かと思い文箱を受け取った。そして文箱を開けると封のついた書状とルナ宛の書状が入っていた。まずは自分宛の書状を読むことにした





【ルナ・キサラギ殿へ】

「突然、書状を送ったこと、申し訳ない。実はもう1つの書状をさる御方宛に送ったものだ。さる御方は貴殿宛に書状を送るよう命じておられた。故に貴殿の手から、さる御方に渡して欲しい。くれぐれも他の者に他見及び他言無用に願いたい。もし読み終えたら添え状を燃やして欲しい。」

【サコン・シマより】





「(さる御方・・・・他の者に他見及び他言無用・・・・・まさか!)」


ルナはすぐに添え状を暖炉で燃やした後に、そのまま国王の下へ向かった。国王の執務室に到着し、衛兵の許可を取った後、執務室に入った。執務室で仕事をしていたロバートはルナを見かけた


「陛下、大事な話がございます、お人払いを。」


「人払いだ。」


家臣ら退席した後、ルナは例の書状をロバートに渡した


「うむ、誰にも見られていないようだな。」


「はっ!」


ロバートは早速、封を開けて手紙を広げ、内容を拝読した。拝読し終わり、手紙を畳んだ後、暖炉に入れて燃やした


「陛下、サコン・シマは何と?」


「ふん、やはり奴は曲者よ。ワシの腹が決まった!」


それから数日が経ち、ロミオ・シュバルツを始め家臣や貴族を朝議の場へ呼び出した。そしてロバートが参内した後、全員に発表をした


「ロミオ・シュバルツよ、そなたのした事は誠に赦しがたき事なれど、そなたの働き次第で、王太子の座を復位する事も考えんでもない。」


それを聞いたロミオを始め、家臣や貴族たちは驚きの表情を浮かべた。つまりはロミオを廃嫡せず、実績次第で王太子に戻す、つまり次期国王の座を約束するということである


「ロミオよ、今回の失敗を糧とし、これからも自己研鑽せよ!」


「ははっ!」


「皆の者も大儀であった!」


「「「「「ははっ!」」」」」


朝議が終わり、ロバートは部屋へ戻り、一息ついた


「ふぅ~、疲れたわ。」


ロバートの宣言は国内外に広がり、各国は様子見を決め込んだ。その話を知った島左近はというと・・・・


「薬が効いたようだな。」


影の功労者である島左近は椅子に座りながら、茶を飲みつつ、難題を解決したことに心底、安堵したのであった






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