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96話:視察騒動

島左近清興だ、アルトリア・スレイブが居なくなってから一週間が立った。まぁ、それはさておきワシに吉報が入った。そうアリーナが2人目を懐妊したのである。心当たりがあるとすれば風呂や寝室等で励んだ事ぐらいだが、アルグレンにとっては年子の兄弟が誕生するのである


「アルグレン、主に弟か妹ができるぞ。」


「おとうと?いもうと?」


「まぁ、ワシらの家族が増えたといえばいいか。」


「おとうと!いもうと!」


アルグレンは分かっているかどうかは分からぬが2人目ができたのは喜ばしい事だ


「旦那様。」


「つわりの方はどうだ?」


「はい、今は何ともございません。」


「そうか、無理はするなよ。」


「はい。」


2人目の誕生をどこで聞き付けたのか知らぬが、祝いの品が屋敷に運ばれた。使用人たちはせっせと多くの品を運ぶ姿にワシは苦笑いを浮かべた


「いくらなんでも多すぎだな。」


ようやく祝いの品が運び終わり、使用人たちはくたくただった。ワシは使用人たちを休ませ、ワシは執務室へと向かった。執務室には与一が先に待機しており、ワシを見かけると両腕に多くの書状の束を見せてきた


「左近様、お祝いの書状が届きましてございます。」


「見てば分かる。」


「早速、ご返答を。」


「相分かった、はぁ~。」


ワシは書状の束とにらめっこしながら返書を書き続けた。馴染みのある者もいれば、交友を持とうとする者、数え切れないほど多くの書状に思わず眩暈がしてしまう


「左近様、半分は終わりましたぞ。」


「うむ。」


ワシは残り半分の返書を書き記した。もう少しで終わるからといって決して手抜きをせず、一言一句間違えることなく、全ての書状の返書を書き記した


「はあ~、終わった、与一。」


「はっ!」


ワシは全ての書状の返書を書き記し、与一にもっていかせた。手首が痛い・・・・


「主様、お茶と茶菓子をお持ちしました。」


「おお、気が利くな、ウルザ。」


そこへウルザがお茶を持ってきた。ちょうど小腹が空いていたのでいただくことにした。ウルザは「ごゆっくり」と言い残し退出した。ワシは茶菓子は塩味餡大福か、ワシは大福に噛り付いた。


「うむ、美味いな。」


生地のもちもちとした触感と、餡に混ざった塩が合わさってまろやかな味わいが口に広がる。そこへお茶で流し込んだ。熱すぎず、ぬるすぎず丁度良い塩梅でお茶がすすむ。饅頭が食べ終わり、お茶も飲みほしたワシは一息ついたところ、扉からノック音がした。ワシが許可を出すと、そこへ与一が入ってきた


「左近様、早便が届きました。」


「ん、早便、誰からだ?」


「はっ!王太子殿下御付きの者から。」


「何?」


与一は封のついた書状をワシに渡した。ワシは早速、封を切り、手紙を広げ、書状の内容を拝読した





【サコン・シマ殿へ】

「突然の御手紙、さぞ驚いた事であろう。だが火急の用にてお伝えいたす。国王陛下の第2王子であり、王太子殿下であるロミア・シュバルツ様が急遽、貴殿の御領内をお忍びで御視察されることになった。サコン殿には予め準備のほどをお願いいたす。視察日は〇月〇日にて行うので、くれぐれも粗略なきよう申し付ける。」

【ロミオ王太子殿下御付きオロナ・チャイルトより】





ワシは書状の内容を拝読し終えると、与一は書状の内容を聞いてきた


「左近様、書状には何と?」


「王太子殿下が我が領内を御視察するとの事だ。」


「何ですと!」


「視察する日は〇月〇日だ。」


「3日後ではありませぬか!」


「ああ、こんな時に・・・・」


何故この時期に視察を行うのだとワシは内心、王太子の行動に頭を抱えた。こちらは色々と準備しなければならない事がある、また貢ぎ物も用意しなければならない。期限は3日後、ワシはすぐに皆を呼び出した。アリーナ、ウルザ、サスケ、使用人、お庭方を集めた後、ワシは例の王太子の視察を伝えると、案の定、大騒ぎになった


「王太子殿下が御視察!」


「3日後ってあまりにも急ですよ!」


「左様、町を上げて準備しなければなりません!」


「「「「「そうです!」」」」」


「ああ、皆の言いたい事は痛いほど分かる、ワシも皆と同じ気持ちだ、だが決まった以上、直ちに準備をせねばなるまい。」


「「「「「旦那様(主様・ご主人様)」」」」」


「良いか!すぐに準備をしろ、町も総出でお出迎えするのだ!」


島左近の号令の下で町総出で準備に取り掛かった。民たちも3日後の王太子の視察があると聞いて、驚愕しつつも、急ピッチで作業を進めた。ワシも王太子に捧げる貢ぎ物の準備を行った。我が領地の特産品である【各種工芸品】【青芋織物】等の最高級品を用意した


「与一、準備の方はどうだ?」


「はい、急ぎ進めております!」


「そうか。」


刻々と時が過ぎていき、粗方準備を終える頃になると、突然、ルナ・キサラギがやってきた。ワシらはルナを出迎えたが、何やら罰の悪そうな顔をしていたルナは突然、土下座をした


「申し訳ありません!」


「「「「「は?」」」」」


ワシらはルナの土下座に一時呆気に取られたが、すぐに我に返り、頭を上げるようルナを説得すると、ルナは顔を上げ、用件を伝えた


「御視察は中止です。」


「「「「「は?」」」」」


ルナの口から視察の中止という言葉を聞いて再び呆気に取られた。するとルナは理由が語り始めた。何でもロミオの視察に国王であり父であるロバートが待ったをかけたのである。あまりにも急すぎる視察にロバートはロミオを叱りつけた事、視察を唆したオロナ・チャイルトを王太子の御側付きから解任された事で、視察は中止になったという


「ルナ殿、それが誠であれば、ワシらは何のために準備をしてきたのだ。」


「お気持ちは重々分かってます。」


ワシは思わず、ルナを睨み付け、無意識に凄まじい威圧感を放ってしまった。与一をはじめ周囲の者たちは中止による怒りよりも左近の放つ威圧感にビビり始めた。ルナも左近の放つ威圧感に背筋がぞくっとしたが、謝罪と共に準備の費用等は弁償すると約定を結んだ


「ルナ殿、口約束ではかなわんからな、誓紙を持って約定を果たしてもらいたい。」


「勿論です。」


その後、ルナは誓紙を書き記し、ワシに渡した。そして周囲から睨まれながらも馬車に乗り、王都へ帰った。ワシは民たちに詫びを入れつつ、酒と料理を振る舞ってその労を労った


その頃、王宮ではロバートはロミオとオロナを叱りつけていた。側近くで控えていたルナは黙って事が終わるのを待っていた


「なぜ3日後なんだ!こちらも色々と準備があるんだぞ!間に合わぬではないか!」


「父上、申し訳ございませぬ!」


「オロナ、お前もだ。なぜ諌めなかった!」


「申し訳ありません!」


「父上、オロナが悪いわけではありません。私が彼の者の領地がどのようなものなのかこの目で拝見したくてオロナに無理を言って事に及びました!」


「この大馬鹿者!廃嫡したお前の兄であるロゼオの二の舞をする気か!」


「申し訳ありません!」


「オロナ・チャイルト、お前はロミオの側付きとして解任及び謹慎処分とする!」


「しかと受け賜りました!」


「はぁ~、ロミオ、お前の処分は後だ、まずはサコン・シマへの損害を弁償せねばならぬ。ルナ、おるか!」


「はっ!」


「これより準備にかかった費用の弁償をせねばならぬ。その任をそなたに任せる」


「はい、身命を賭して励みます!」


ロバートは息子の短慮によって損害を被った費用の弁償をすることにした。任にあたったルナは胃痛に苦しみながらも、一睡もせずに作業を進めた。ロミオは処分が決まるまで謹慎処分が下されたのである。それから数日後、ルナは再び左近の下を訪れ、準備にかかった費用を全て弁償したのである。それを確認し終わった左近はルナの様子を見て尋ねた


「ルナ殿、寝ておらぬのか?」


「はい。」


「ワシが言うのも何だが御無理をなされるな。」


「これもお役目にございます。サコン殿、誠に申し訳ありません。」


「はぁ~、取り敢えず貢ぎ物だけは陛下に献上いたすゆえ、お届け願いたい。」


「はい、分かりました。」


その後、ルナは王都と島左近の領地を行ったり来たりしながら作業をし、全てが完了した後、ルナは過労でぶっ倒れたのである


「ルナ、すまなかった。」


幸い命に別状はなく医務室にてぐっすり眠っているルナを見て、ロミオは自分の浅はかさを呪い、尻拭いをしたルナに謝罪をした。オロナは実家や周囲から白い目で見られたり、嫌がらせを受けた事で首を吊って自殺したのである。この一件がきっかけで国内外でロミオ・シュバルツは次期国王の器ではないと疑うようになり、これを知ったロバートは頭を痛めるのであった

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