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87話:新たな領地

島左近清興だ、暴れ象を仕留めることができたが、暴れ象による被害が相次ぎ、ワシの治める領地に難民が押し寄せてきた。難民たちは仕事と食糧を要求してきた。ワシの治める領地は象による被害はないが難民全員分を養うほどの余力はなく、警備隊を通じて、他の土地へ移るよう説得を続けたが、難民たちはテントを張り、居座っている。領民たちも難民の居座り行為に不満が溜まっていく一方でいつ衝突しても可笑しくない状況下である。こればかりは流石のワシも手を焼いている


「左近様、あの者たち頑として動きませぬ。」


「ああ、頭の痛い事よ。」


「左近様、力尽くでも追い出しましょう!」


「それはならぬ、相手は同じシュバルツ王国の民だぞ、下手をすれば暴動が起きる。」


「くっ!」


「こればかりはワシの一存では決められん。ワシにできることはなるべく暴動が起きないように尽力するだけだ。」


ワシとしては難民たちにはここから立ち去ってほしい。ここに居座るよりも、町や村の復興に尽力すれば良いものを。立ち退くにしても無下に扱うわけにもいかん。相手は同じシュバルツ王国の民である。敵国ならともかく、自国の民同士が争えば、ワシにも王国にも不利益になりかねない。万が一の場合は武力行使も辞さないがこれは最後の一手だ・・・・


「王都の方はどうなっておるのだ。未だに町や村の復興が進んでいる兆しがない。流石に何か手を打たぬと内乱が起きかねないぞ。」


「国境の砦が一部、象によって破壊されたと知らせがありましたからな、そちらに注視しているのでしょう。」


「外の敵に備えるのも良いが、内の敵を放っておくのは、どうかと思うがな。」






その頃、王都では砦の復旧に注視しつつ、被害にあった町や村などを調査し、復興のための資金を捻出していた。国王ロバート・シュバルツは大臣や側近たちと会議を開いていた


「陛下、被害にあったところは税は免除の上、食糧を届けることで決しましたが、全てを賄うには少々、資金が足りません。」


「うむ、こうなれば王族や貴族や役人に対して倹約令を敷け。」


「しかし、従いましょうか。」


「是が非でも従わせるのだ、今は国難の時ぞ。民の力なくば国は復興せぬ!」


ロバート・シュバルツは王族・貴族・役人に対し、倹約令を敷いた。物物の出費を切り詰め、祝儀不祝儀を軽くし、資金を捻出した。中には不満を抱き、倹約令に従わない貴族や役人がおり、ストライキを起こした


「くっ!こんな時に己の事ばかり考えおって!」


「陛下、如何いたしますか!」


「兵を送れ!従わない者がおれば鎮圧せよ!」


「ははっ!」


ロバート・シュバルツは象討伐の軍を再び再編し、ストライキを起こす貴族や役人の爵位や役職等を取り上げ、鎮圧に向かわせた。貴族や役人たちはまさか兵を差し向けれるとは思っていなかったようで、あっさりと降伏したのである。ロバートはこれらの行動に呆れつつも、貴族や役人たちを押し込め、貴族や役人たちの財産を没収し、復興の資金とした


「よし直ちに行え!」


「はっ!」


直ちに町や村の復興に力を注ぎ始めた。島左近が治める領地でもようやく復興の資金や食糧が届き、それを難民たちに分配したのである


「はあ~、ようやく動いたか。」


「危のうございましたな。」


「ああ、間一髪だったな。」


実は領民と難民による一触即発になりかねない問題が起きていた。一部の難民たちが社倉へ向かい、無断で食糧を持ちだそうとしたところを、巡回中だった領民たちが見つけ出し、難民たちを袋叩きにしたのである。そこへ警備隊が駆け付け、盗みを働いた難民たちを捕らえたが、それで不満が収まらず、領民たちは難民に報復する寸前だったのだ。そこへ間一髪、復興資金と食糧が届き、難を逃れたのである。ワシらは早速、立ち退くよう説得をすると、難民たちはあっさりと受け入れ、元の町や村があったところへと帰っていったのである


「ようやく誠の平穏が訪れるな。」


領地の方も難民が去った事で、領民たちも安堵し普段通りの生活を送ることができた。それから刻々と日が過ぎていくと、王国紋章の入った馬車が屋敷に向かうのを【お庭方】が目撃し、左近に報告をした


「とうとう来たか。」


「左様ですな、象討伐の功労者ですからな。」


「ああ、こうなったらベーカリーに功績を押し付けるか。」


「左近様、公家【貴族】になりたくないからって、それは流石にマズイのでは?」


「宮仕えなんて真っ平御免じゃ。」


そんなこんなで馬車が屋敷に到着し、そこへルナ・キサラギが降りて来た。ワシらはいつものように出迎えた


「これはルナ殿、今宵は何用で参られたので?」


「サコン殿、例に暴れ象の討伐の褒美です。」


「とりあえず中へ。」


ワシらはいつも通り、ルナを客間へ案内させた後、茶と茶菓子を用意させ、卓子テーブルに運ばせた後、下がらせた。そしてルナは勅諚を恭しく掲げた


「国王陛下より褒美を賜る。」


「ははっ!」


ワシは平伏した。もし貴族への爵位を授けると来た場合はベーカリーに功績を押し付ける方向へ勧めようとした


「サコン・シマに新たな土地と金貨3000枚「3000万エン【日本円で3000万円】」を与えるものなり。」


「は、ははっ!有り難き幸せ!」


ワシは一瞬、耳を疑ったが、金貨は分かるが、はっきりと土地を与えると申しておった。勅諚を読み終えるとルナはワシの方へと視線を向け、一礼した


「おめでとうございます。」


「不躾ながらお尋ねしたい。土地を賜るとは誠にござるか?」


「えぇ、勿論。」


「して場所は?」


「【エメリカ山脈】とその周辺の土地です。」


「何と!」


【エメリカ山脈】とは島左近の治める領地の近くにある山脈で、標高は500mほどの山脈であり、山登りに関しては難易度が低く、登山向きともいえる山脈である。因みに山には2つ種類があり、前者は火山、後者は山脈であり、【エメリカ山脈】は後者の部類に入る。【エメリカ山脈】周辺は僅かばかりの平野と小さな河川で区切られており島左近の支配下に属していない土地である


「陛下がサコン殿の処遇について熟慮されておりました。其処へ考えたのは土地を与える事、サコン殿が治めていない【エメリカ山脈】とその周辺の土地を与える事で決しました。」


「左様でござったか、忝のうござる。」


「サコン殿、【エメリカ山脈】にある塩のように塩辛い泉を御存知ですか?」


「勿論。」


「もしかしたら塩湖と同じ類いかもしれませぬよ。」


「そうであってほしいが・・・・」


【エメリカ山脈】には多くの塩泉しおせんがあり、飲み水に適しておらず、登山する人は普段は山の湧き水と小さな河川を飲み水にしているとのこと。ワシも【エメリカ山脈】に登った時に見かけたのだが、初めは飲み水に適していないことから利用しなかったが、後に地主となり塩湖から湖塩が取れた事により、あの塩泉も同じ類いではないかと察知したが、生憎ワシの治める領地に属していないため、断念せざるをえなかったが、此度の象討伐で、ワシの領地となったのである


「私も気を揉みました。サコン殿を貴族へ昇進させようとする声が高まっていて、抑えるのに苦労致しました。」


「それについては申し訳ない。」


「いいえ、お気になされずに。」


「さあ、茶と塩味饅頭を召し上がられよ。一息つけましょう。」


「そうですね、では頂きます。」


ルナは塩味はと茶を召し上がった後、そのまま王都へと帰還したのである。ワシはすぐに【エメリカ山脈】とその周辺の土地の調査に乗り出した


「左近様、例の塩泉、楽しみですな。」


「あぁ、山から取れる塩は岩塩の他にもあると言うことだな。」


「この場合は、山塩やましおでしょうな。」


「山塩か、また特産品が増えるな。」


その後、例の塩泉から取れた塩は【サコン山塩】として産出され、【サコン湖塩】と並んで【サコン両塩りょうえん】と呼ばれるようになったのである


「山塩は粗塩にございますが、塩辛くなくほんのり甘いですな。」


「うむ、湖塩と共に領民の生活に役立つな。」

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