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85話:暴れ象

島左近清興だ、ベルモント家からあれ以来、書状の類いは来ず、平穏な日々を送っていた頃、久し振りにあの男がやって来た


「んで、何しに参ったのだ?」


「おいおいヨイチよ、長年の戦友に対してそりゃねえんじゃねのか?」


「いつもの事だ、それで何のようだ、ベーカリー。」


そうベーカリーが突然やって来たのである。ワシは久し振りに奴を屋敷に招いた。客間へ案内させ、茶と茶菓子を運ばせた後、使用人たちを下がらせてワシら3人だけとなった


「実はな、また獣が脱走したんだってよ!」


「脱走、どんな獣だ?」


「あぁ、ジュリアス王国に献上するはずだった象が脱走したらしい。」


「象だと?」


「ただの象じゃねえ、全身毛むくじゃらで牙も立派な象だ!」


象、ワシは現世にいた頃、慶長2年(1597年)7月に1度だけ見たことがある。馬よりもはるかに大きく、鼻が蛇のように長い生き物であったのが昨日の事のように思える


「それでその象が如何したのだ?」


「あぁ、何でも道中で象が突然暴れ出したんだよ、おまけに付近の村々を踏み潰されたらしくてな、ジュリアス王国から直ちに駆除せよとの勅命が国内に下ったそうだ。」


「それを言いにわざわざ来たのか?」


「あぁ、もしかしたらシュバルツ王国、お前の所に来る可能性があるかもしれないからな。」


「そうか、それは忝ない。」


「それでどうすんだ?」


「どうするとは?」


「お前自身の手で駆除すんのかって聞いてんだよ。」


どうやらベーカリーはワシがその毛むくじゃらの象を仕留めるのか聞いているようだ


「もしワシの治める領地に一歩でも土足で踏み込んだら、容赦なく始末する、それだけだ。」


「おお、そうか。それを聞いて安心したぞ。んじゃ俺は帰るわ。」


「いいのか?」


「あぁ、逸早く仕留めれば褒美がたんまりと貰えるからな。」


そう言うとベーカリーはそのまま帰っていった。ワシらは【お庭方】と追跡動物を使い、周辺の警戒を続ける一方で、すぐに収穫を進めていた


「せっかく育った作物を象なんぞに踏み潰されたら叶わぬからな。」


左近は民衆に逸早く収穫をさせた。民衆たちもジュリアス王国で象が暴れているという噂を聞きつけ、我先にと作物の収穫を進めていたのである


「左近様、もしシュバルツ王国に来た場合に備えて準備を進めましょう。」


「あぁ、象なんぞにワシの領地を踏み荒らされてたまるか!」


一方、ここはシュバルツ王国国境付近の砦、国境を守る兵士たちはいつものように警備を続けた、警備を守る兵士の中には象の噂で持ちきりだった


「なぁ、兄弟。聞いたか、例の象がジュリアス王国の村々を潰したんだとよ。」


「あぁ、迷惑な話だ。」


「もしよ、ここに来たらどうする?」


「決まってるだろう、その時は倒すまでだ。」


「倒すってどうやって?」


「相手は図体がでかいからな、弓矢で牽制して槍でぶっ刺せばいいんだ!」


「それで、済むといいな。」


兵士たちが象の話で盛り上がっていると、一人の兵士が慌てた状態で入ってきた


「た、大変だ!」


「何だ?どうした?」


「そ、そ、そこに・・・・」


「何だ?まさか象でも現れたの・・・・が!」


一人の兵士が言い終わる前に強い衝撃を受けた。兵士たちは何が起こったのか分からずにいると・・・・


「パオオオオオン!」


そこへ甲高い獣の声が響き渡ると同時に砦の一部が崩れると同時に巨大な生き物が姿を現した。鼻をふくめ体長は7.5m、尾長1.3m、体高4.0m、牙の長さは3.2m、体重は20tに及ぶ巨大な象が姿を現した。その巨大な姿に兵士たちは腰を抜かした


「パオオオオオオン!」


「「「「「うわあああああああああ!」」」」」


すると象は暴れ出し、兵士たちを踏みつぶしていきながら、シュバルツ王国に侵入したのである。すぐに早馬が王都へと駆け、3日に王宮に到着した。知らせを聞いたロバート・シュバルツは直ちに暴れ象の討伐を命じたのである


「直ちに象討伐を開始する。速やかに兵を集めよ!」


「「「「「ははっ!」」」」」


【お庭方】の知らせでは国境を侵入し、近隣の村々を潰しまわる象は運悪くワシの治める領地へと進行しているとのこと、王都では象の討伐の軍が発せられたが、到着するのに時がかかる


「とうとう入りこんだか。」


「如何いたしますか、左近様。」


「まずは住民の避難だ、近場の【エメリカ山脈】へ避難させよ、警備隊にも知らせよ。」


「はっ!」


ワシらは警備隊に象がこちらに来ることを知らせると、警備隊は直ちに住民の避難をさせた。アリーナたちは屋敷の地下の避難壕へ収容させた


「旦那様、どうかお気を付けて。」


「アルグレンの事を頼んだぞ。」


「やるからには絶対に仕留めてよ、お前さん!」


「任せとけ、ウルザ。」


近場の山へ住民たちを移させた後、ワシは直ちにある準備をさせた


「与一、獣避けの臭い袋は準備はできたか。」


「はっ!抜かりなく。」


「食糧の方はどうだ。」


「社倉より古い野菜等を配置しました。」


「【お庭方】からの知らせは?」


「はっ!象は真っ直ぐ、こちらへ侵攻している模様。」


「穴の方はどうだ?」


「はっ!既に虎落もがり落としの準備はできております!」


虎落もがり落としとは穴を掘って、底に斜めにカットした竹槍を敷きつめるた落とし穴である。実はため池用に広く深く掘っていた穴に竹槍を多く指し、すぐ近くに食糧を置いておいた。左近はまず獣避けの臭いで象をこちらへ誘導させ、食料に目を付けた象をおびき寄せたところ、象を虎落もがり落としで動きを封じ、そこへ象を仕留める戦法を取った


「ベーカリー、準備の方はどうだ?」


「ああ、いつでもやれるぜ!」


ワシはベーカリーを雇い、象を仕留める役を任せたのである。コタロウやサマノスケも参加したがっていたが、コマイラの見張りをお願いし、象討伐に参加させなかった。ワシらは万全の備えを持って暴れ象を迎え撃つのであった。一方、暴れ象はというと、【モリノ町】という町で暴れまわっていた。町の住民は突然の暴れ象に慌てふためいていた


「パオオオオオオオン!」


「逃げろ!」


「キャアアアアアアア!」


「た、たすけてくれええええ!」


住民たちは我先に避難しようとしたが、象によって踏みつぶされ、象によって破壊されたがれきによって住民たちが下敷きになった。生き残った者たちは何とか【モリノ町】を脱出し、近場の山へ避難した。凶暴化した象に人々は恐怖と憎悪を抱いた


「くそ!」


「くわばら、くわばら。」


「あぁ、俺たちの町が・・・・」


「ちくしょうめ!」


なぜ象が暴れているのかというと、実は発情期【マスト】の時期で入っており、しかもこの象は雄であり、長くて2~3か月は続くらしい。野生の象の場合は縄張り意識が強く、気性は荒い。中には穏やかな象もいるが、発情期に入れば、手が付けられないのである


「パオオオオオオオオン!」


象はなりふり構わず、暴れ続けた。中には象を仕留めようと竹槍や弓矢で挑む男たちもいた


「放てえええええ!」


一斉に弓矢を発射させ、全てが象に命中したが、象の分厚い筋肉によって防がれ、掠り傷程度で終わった


「パオオオオオン!」


象は弓矢を放った男たちの下へ向かっていく。次に竹槍を投げると、何本かは象の皮膚に突き刺さった


「パオオオオオン!」


「よし、チャンスだ!攻めかかれ!」


「「「「「オオオオオオオオ!」」」」」


象は悲鳴をあげると共に逆鱗にも触れた。象は徹底的に自分に攻撃してくるものを狙い続けた。象の執拗な攻撃に男たちは1人また1人と命を落とす。象は巧みに長い鼻を操り、男たちを吹き飛ばし、牙で突き殺したり、足で踏みつけたりした


「くそ、化け物め!」


男の1人が矢を発射すると、その矢が象の頬に命中した


「パオオオオオン!!」


「あ、アアアアアアアアアア!」


象は悲鳴をあげると、更に興奮状態になり、なりふり構わず暴れ続けた。弓矢を放った男は象によって踏み潰されたのである。象はそのまま島左近の治める領地へと進行を開始した。その知らせは直ちに左近の下へ届いた


「左近様、象は負傷しつつ、真っ直ぐこちらへ向かって来ております。」


「よし者共、油断なく備えよ!」


「「「「「オオオオオオオオ!」」」」」










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