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81話:飼い殺し

島左近清興だ、今、ワシは正直困ったことがあった。それは【ガルバトロズ】教祖であるコマイラ・ガルバトロズの処遇についてだ。もし悪党であれば、警備隊に突き出そうと思ったが予想に反して、好人物で麻薬売買等を行う信者たちを破門にする等、意外とマトモなところがあり、躊躇した


「さて、如何いたそうか。」


「畏れながら、某に考えが。」


「うむ、申せ。」


「ははっ!あの男を領地内に隔離すべきかと。」


「隔離とは?」


「人目をさけ、かつ生活に不便ではない場所にあの男を幽閉するのでござる。」


「・・・・与一よ、平素から慎重な主とは思えぬ発言だな。火中の栗を拾うような無謀さだ。」


「差し出がましい事をしたことは承知してございます。ですが左近様は迷うておられました。主が迷うておられる時はそれを支えるのが臣下の役目にございます。例えそれが主の気に沿わない事であっても。」


与一は死を覚悟してワシに諫言をした。確かにワシは迷うておった。いかんな、現世にいた頃のワシだったら殿【石田治部少輔三成】を支える立場にあったが、この異世界に来てからはワシは人の上に立つ立場になってしまい、迷いが出てしまったようだ。今にして思えば殿も家康打倒という無謀な事をしたな。それに従ったワシも同罪か


「ふっ、ワシとしたことがつまらぬ事に拘ってしまった。」


「左近様。」


「与一、命を下す。」


「はっ!」


「直ちに我が領地内にて隔離するに値する土地を見つけよ。手段は選ばず、徹底的にやれ。」


「ははっ!承知仕った!」


与一はその場で消え、残ったのはワシだけとなった


「殿もこのような立場であったのかのう。」


ワシは与一の他に、【お庭方】等を活用し、隔離すべき土地を根こそぎ探したが、一筋縄ではいかなかった。大半の土地は移住者によって田畑や住宅地になっており、なかなか良い場所が見つからなかった。それでも探し続け、ようやく見つけた


「左近様!見つかり申した!」


「おお、で、そこはどこだ。」


「はっ!馬での移動ですが。」


「案内せい!」


ワシと与一は馬に乗り、目的の場所へ疾走した。ようやく目的地に着くと、そこは幅が5m、深さ2mほどの大きな穴以外は手をつけられていない土地だった。周囲は雑木林に囲まれており、人目につきにくい場所であった


「うむ、ここは隔離するのに丁度良い場所だな。」


「はっ!この穴に例の水筒の水を入れて、飲み水や農業用水に致しましょう。」


「うむ、ではまずは家づくりだな。」


ワシらはここに一人でも暮らせるこじんまりとした家を作ることにした。早速大工を呼び、作らせた。規模は7坪という狭小住宅クラスの家である。一応、生活ができる環境を整えておいた。近くには見張り番を設け、コマイラの逃亡を阻止するためである。それから時が経ち、平屋建ての家が完成した。左近が試しに入ってみると、見事なくらい狭い家だが、ベッドやテーブルや椅子、トイレと調理設備が付いていた。ただし風呂やシャワーはない


「風呂はありませぬが、桶で行水はできます。洗濯もこの桶を使います。」


「そうか。」


「あそこに見張り台を置き、常駐させます。」


「仕事の方はどうするのだ?」


「はい、そこは内職をさせたり、畑を耕すことで生計を立てさせましょう。」


「うむ。後はコマイラをここへ連れていくだけだな。」


その頃、コマイラは再び幽閉生活を送っていた。あれ以来、何の音沙汰もなし、警備隊に突き出される事なく、ずっとこの部屋に幽閉されている。コマイラの胸中にはある不安がよぎった


「まさか、私を殺す気じゃ・・・・いや、もしそうなら、すぐにでもやっているはずだ。」


コマイラは手配書を思い出していた。その内容は生死を問わずと書かれており、殺されても金が手に入るのであるのだ。でもその兆しがなく、こうして生きている。ずっと部屋の中にいて外の様子が分からず、状況が分からない。見張りの男に聞いても、何も答えず無視をされたのである


「何がどうなってるんだ!」


一人悶々とした日々を送るコマイラに、ようやく見張りの男から返事が来たのである


「貴方はとある場所にて幽閉いたします。」


「ゆ、幽閉だと。」


コマイラは何が何だか分からなかった。やっとここの生活が終わると思いきや、再び幽閉生活を送る羽目になった


「どうゆうことだ!私はここでも幽閉生活を送ってきたというのに!」


「場所を変えるだけです、とりあえず目隠しと口枷をさせていただきます。」


「何だ・・・・ブホ、フガ、フガ!」


その後、コマイラは目的の場所まで馬車で向かっていた。目隠しと口枷をさせられた状態で馬車に揺られながら運ばれる状態のコマイラの心中は不安と猜疑心に溢れていた


「(そんなに私を弄んで楽しいのか!)」


すると馬車が止まった。コマイラは戸惑っていると馬車戸が開き・・・・


「着いたぞ。」


男がコマイラの手を掴み、そのまま外へ出した。コマイラは口枷と目隠しを外され、視界が開くと、目の前には狭小の家と水の貯まった穴と雑木林が見つかった


「こ、ここは。」


「ここがお前の幽閉先だ。」


男から、これからの生活、生計等を説明された後、コマイラは家の中に入ると、部屋の中は狭かったが、ベッドやテーブルや椅子、トイレや調理設備と洗濯用と行水用の桶が設けられていた。


「今日からここで暮らしてもらう。逃げよう等と思うなよ。四六時中見張っているからな。」


男はそう言った後、家を出ていき、残ったのはコマイラだけだった。コマイラは他にすることがないため、ベッドに眠るしかなかった


「とりあえず、外には出してもらったからいいか。」


とりあえずベッドから起き上がり、ふと隣にあった水の貯まった穴を見つめた。この水は飲めるのだろうか


「喉、渇いたし試しに飲んでみるか。」


コマイラは両手で水をすくい、飲んでみると、冷たく柔らかく飲みやすかった


「これは飲めるぞ。」


コマイラは水の中に顔を埋め、ゴクゴクと飲み始めた


「ぷはー!染みるね!よし今日から私の新生活が始まるぞ!」


それからコマイラの新生活が始まった。コマイラはベッドから起き上がり、飯を食べた後、畑作りから始まり、見張りから渡された内職の仕事を始めた。この家には娯楽らしきものがなかったため、畑仕事や内職をすることしかなかったのである


「今日も見てるな。」


コマイラはある見張り台を見つめた。そうコマイラは監視するために設けられたものであり四六時中、見張られていたのである


「行水してる時も見てくるからな、はぁ~。」


ちなみに食糧と生活必需品は、当分は向こうが持ってきてくれており、その後は内職を終わらせた後に、支給される。金は持たされず、無一文のままである


「このまま、飼い殺しの日々を送るのかな。」


それからというもの、畑仕事と内職しつつ、1つの結論に至った


「このまま、大人しくすれば人並みの生活できるんじゃないか!」


そう思い立ったコマイラの胸中は不思議と晴れやかになり、内職や畑仕事が苦にならなくなった。時々、住民がこっちに来ることがあり、談笑したりして日々を過ごすようになった。どこで噂を聞き付けたのか、サマノスケが駆け付けた時は驚いたが、事情を説明するとサマノスケも納得し、その場を去ったのである


「さて今日は何にしようか。」


コマイラの様子を見張りによって知ることになった島左近は・・・・


「うむ、どうやら大人しく暮らしているようだな。」


「サマノスケが駆け付けたのは予想外でしたが。」


「あやつもこれ以上、揉め事を起こしたくないのであろうな。」


ワシらはコマイラの監視をしつつ、引き続き【ガルバトロズ】が我が領土に入らぬよう警戒を続けるのであった



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