78話:捕縛
島左近清興だ、ワシの下にユカリが訪ねてきた。訪ねた目的は土産を渡したかったそうだ。土産は有り難く受け取ると共にユカリからサマノスケに関しての話があった
「サマノスケ殿の下に下宿している知人だと。」
「ええ、昔からの知人だと申していました。年齢は40代くらいの胡散臭い男です。」
「ほぉ~。」
「サコン殿、あくまで私の予想なんですが、サマノスケはかつて【ガルバトロズ】に所属していた頃の知り合いじゃないのかと感じたのです。」
「有り得ぬ話ではないな。」
「サマノスケはもう組織から足を洗って、真面目に働いているのです。だからこそ私は心配なのです。」
ユカリの申すことが誠であれば、放っておくわけにはいかぬな。なぜサマノスケがその男を匿っているのかは分からぬが、もし【ガルバトロズ】の一員なら・・・・
「わざわざ話してくれてありがとう。後は我等に任せよ、大丈夫だ、悪いようにはせぬよ。」
「そうしていただければ・・・・」
ユカリが帰った後、ワシは与一を呼び出した。勿論、サマノスケの家に下宿している知人についてである
「何者でしょうな。」
「サマノスケの知りあいともなれば限られからな。」
「あの組織にございますか?」
「恐らくな。」
「【お庭方】か追跡動物を放ちますか?」
「いやサマノスケはすぐに気付くだろう。」
「では?」
「うむ。ここが思案のしどころだな。」
一方、サマノスケは内職の仕事を持ち帰り、コマイラに任せ、自分は畑仕事に精を出していた。それから1週間後、サマノスケは左近に呼ばれたのである
「今日は用事があって留守にしますが、決して外を出歩かないでくださいね。」
「おお、分かっている。」
「では行ってきます。」
「行ってらっしゃい。」
サマノスケはそのまま左近の屋敷へと向かった。サマノスケが左近の屋敷へ向かう道中、1人の農民が挨拶をした
「これはサマノスケさん、どちらへお出掛けで?」
「ああ、サコン殿の屋敷へな。」
「そうですか、いやあ、お羨ましいですな、地主様と知り合いだなんて!」
「それほどの事は。」
「ああ、呼び止めてすみません、では私はこれで・・・・」
「えぇ、また。」
農民と別れた後、サマノスケは真っ直ぐ左近の屋敷へ向かった。その頃、コマイラはサマノスケの家で内職に励んでいた
「ふう、疲れた。あ~、たまには外には出たいな。」
コマイラは窓を眺めながら、そう呟いた。外へ出る時は、必ずサマノスケと一緒に出るが1人で出歩くことがない
「ち、ちょっとだけなら。」
コマイラは気分転換に外を出ることにした。扉を開け、外へ出ると、陽の光がコマイラに注いだ
「眩しい。」
手を振りかざし、陽射しを遮りつつ、近くを散歩していた
「はぁ~、家に引きこもってばかりだと、体がなまるな。」
「こんにちは。」
「おお!」
背後から声をかけられ、振り向くと先程、サマノスケとお喋りをしていた農民だった。コマイラはなるべく怪しまれずに挨拶をした
「すいません、驚かしてしまって。」
「あ、いいえ、こんにちは。」
「今日はサマノスケさんは留守なのですか?」
「ええ、大事な用事があるとかで。」
「そうですか、ところで貴方はサマノスケさんとは、どのような繋がりで知り合ったのですか?」
「え、ええ。共に仕官先を探していたところ、偶然知り合って、それから仲良くしてもらっています。」
「ふぅ~ん、そうだ。サマノスケさんがお帰りになられたら、これを渡してください。」
農民は袋の中からゼンマイの付いた箱を取り出した
「何ですか、それは?」
「はい、オルゴールですよ。」
「オルゴールですか。」
「はい、1人でいつも寂しいだろうと思って、これをあげようと思ったので。」
「そうですか、わざわざどうも、後で渡しておきます。」
「そうですか、では。」
コマイラは農民からオルゴールを渡され、そのまま家に入った。その頃、サマノスケは左近と対面していた
「呼び出してすまなんだ。」
「いいえ。」
「呼び出したのは他でもない。最近、そなたに家に知人を住まわせていると聞いてな、確かコマネンと申したか。」
それを聞いたサマノスケは警戒を強めた。やはりユカリが喋ったのかと感づくも、もはや知られたからには、どうしのぐか思案を巡らした
「ええ、路銀が尽きたとかで私を頼ってきたのですよ。」
「路銀が尽きたのなら、町で住み込みで仕事が出来るところもあるぞ。」
「有り難い話ですが、知人は人見知りが激しくて、なるべく外出は避けているのですよ。」
「ほぉ~、それは難儀な事よ。」
「はい。」
「サマノスケ殿。分かっておると思うが、ワシは【ガルバトロズ】に警戒をしている。ワシが治める領地で奴らを見つけ次第、召し捕るつもりだ。ちなみに教祖コマイラの手配書も町に流れておる。」
「はい。」
「そなたは元は【ガルバトロズ】に所属していた身、くれぐれも一時の情けで人生を棒にふらずに生きられよ。」
「はい、御忠告ありがとうございます。」
「話はそれで終わりだ。」
「そうですか、ではおさらば。」
サマノスケは屋敷を出た後、真っ直ぐ家に帰ると、中から音楽が聞こえた。ふと中へ入ると、音楽を聴き入っているコマイラの姿を見かけた
「何を聞いているんですか?」
「あ、ああ、お帰り、実はな、農民がこれをプレゼントしてくれたんだ。サマノスケがいつも1人でいるから寂しさを紛らわすためにと。」
「そうですか、後で礼を言わねば。」
「それにしても良き音色だ。」
「私がいない間、外には出ませんでしたよね。」
「勿論だとも、私とて捕まりたくないからな。」
「頼みますよ、町で貴方の手配書がまわっているのですから。」
サマノスケとコマイラがオルゴールの音色を聴きつつ、今後はなるべく不用意に外出を控えるよう気をつけた。それからは買い物はサマノスケがするようになり、コマイラは内職に励みつつ、路銀をせっせと貯めていた
一方、その頃、左近たちはサマノスケとコマイラの会話を水晶から盗み聞きしていた
「やはり、そうか。」
「あの男も懲りませぬな。」
なぜサマノスケから気取られずに盗み聞きしているのかというと、例のオルゴールである。オルゴールの中で追跡動物である蝶が潜んでいたのである
「まさか、オルゴールに潜んでいるとは、サマノスケも思うまいよ。」
「それにしても驚きましたな。まさか【ガルバトロズ】の教祖だったとは。」
「どちらにしろ、指名手配されている以上、捕縛せねばな。」
「では。」
「すぐには捕らえぬよ。それにサマノスケが逃がすかもしれんしな。」
「ユカリ殿のためですか。」
「全くとことん面倒な事よ。」
コマイラは日々、内職のおかげか、路銀が貯まり、ようやくサマノスケの家から離れることが出来るようになった
「色々と世話になった。」
「いいえ。」
「サマノスケ、達者でな。」
「教祖様も。」
サマノスケは見送りをしようと思ったが、コマイラは断り、その場を立ち去った。コマイラは小腹が空いたため、【サコン町】へ行くことにした。予め変装をしていたため、見つからないだろうと思い、【サコン町】へ入った
「町は賑わっているな。」
コマイラは活気に溢れる街並みに刺激を受けつつ、何か食べ物がないか、調べていると、そこへ例の農民と遭遇した
「あら、コマネンさん」
「あぁ、どうも。」
「珍しいですね、1人で外出なんて。」
「え、ええ、路銀も貯まりましたし、ここを去ろうと思いまして。」
「そうですかと寂しくなりますね。」
「ええ、あ、そうだ。何か美味しい料理屋とかありませんか。」
「料理屋ですか、隠れ家的な店なら知ってますよ。何なら一緒にどうですか?」
「ええ、是非とも。」
農民とコマイラは人気のない路地へ一緒に行き、談笑しつつ、目的の場所へ着いた
「この辺りです。」
「この辺りって、行き止まりじゃ・・・・」
「いや、合ってるよ。」
「合ってる・・・・ぶふっ!」
コマイラは突然、口をハンカチで塞がれた。抵抗したが取り押さえられ、そのまま眠りについた
「【ガルバトロズ】教祖、コマイラを確保しました。」
「よし、引き上げるぞ。」
「はっ!」




