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77話:招かねざる客

「悪いんだがアンタはクビだ。」


「はい。」


日雇いの仕事をクビになり途方に暮れるこの男・・・・


「やっぱり失敗だったかな・・・・はぁ~。」


そう悪名高い新興宗教組織【ガルバトロズ】の元教祖であるコマイラ・ガルバトロズである。現在は【ガルバトロズ】を去り、日雇いをしながら生活をしており、現在に至る


「今さら戻るわけにはいかないからな。」


コマイラは今になって【ガルバトロズ】を抜けたことを若干、後悔していた。少なくとも衣食住は保証されていたからだ


「いやダメだ!あそこに戻ったら間違いなく糾弾される!」


コマイラが出奔してからの【ガルバトロズ】は仲間割れが続出し、互いに殺し合いをする有り様だという。警備隊も総動員し、殺し合いを行った信者たちを逮捕している。また騒動を引き起こした事で【ガルバトロズ】の教祖であるコマイラは指名手配され、変装しながら生活していたのである。ちなみに一度もばれたことがない


「さてどうするか。」


ふと、コマイラはある噂を聞き付けた。それは島左近が地主(準男爵)としている土地で移住者が増加し、仕事もあるという噂である


「よし行ってみよう。」






島左近清興だ、ワシの治める領地に次々と移住者が増加している。正直有り難いが、【ガルバトロズ】の信者がその中にいたら、不味いので警戒は続けている


「左近様。」


「どうだ移住者の身許は?」


「はっ!警備隊によって手荷物検査や目的を調べさせましたが、これといって特には・・・・」


「【お庭方】からの報告は?」


「はっ!犯罪を犯す流れ者等を警備隊に密告し捕縛させております。」


「追跡動物からは?」


「【お庭方】同様にございます。」


「そうか。」






一方、コマイラはようやく島左近の治める領地に到着した。コマイラは田畑を耕す農民たち、元気いっぱいに遊ぶ子供たち、噂話に華を咲かせる女たち、活気にあふれる人々の姿を見て・・・・


「ここの地主は良き為政者のようだな。」


コマイラは周囲を見渡しながら、ありのままの事を口にした。するとある1人の男を見つけた


「ん、あれは。」


畑を耕す男に見覚えがあった。ふと近付いて見ると、男も気配を感じ、コマイラに目を向け、そして・・・・


「「あ。」」


元【ガルバトロズ】本部の教祖と信者がバッタリと顔を見合わせたのである。するとサマノスケは口を震わせながら・・・・


「あ、あの、もしかして・・・・」


「シィィィ!一旦喋るな。」


サマノスケの口を手で塞ぐコマイラ、周囲で畑仕事をしていた農民たちが駆けつけてきた


「おい、どうしたんだ。」


「何だ、喧嘩か?」


サマノスケとコマイラはとりあえずこの場を乗りきろうと互いに目配せし、その場を離れた


「皆さん、申し訳ない。昔の知り合いにあったのでビックリしたんです。」


「そうなのかい?」


「お騒がせしてすいません。」


「何だ、つまんねえの。」


サマノスケとコマイラは農民たちに頭を下げて誤解を解くことができた。農民たちが去った後、サマノスケはコマイラを家まで連れていくことにした


「さ、サマノスケ。」


「喋らないでください。」


「で、でも。」


「いいから!」


サマノスケが居住している家に到着すると、サマノスケは周辺を見渡した後、コマイラを中へ入れた。サマノスケとコマイラは椅子に座り、何故コマイラがここにいるのか、溜め息をつきつつ、理由を聞くことにした


「はぁ~。」


「サマノスケ。」


「なんで貴方がここにいるんですか!」


「え、だ、だって。」


「貴方は自分の立場を分かってるんですか!今ではお尋ね者ですよ!」


「それはそうだが・・・・」


「というか、何故ここに来たんですか!」


「いやあ、治安がいいし、仕事があると思って・・・・」


「いいですか!ここを治めているサコン・シマという御方は【ガルバトロズ】に対して、警戒心を抱いております。現に厳重な警戒が続いているんです。今、貴方がここにいたら、間違いなく捕縛されますよ!」


「そ、そうなのか。」


「はぁ~、せっかく足を洗ってここへ移住したってのに・・・・」


サマノスケは頭を抱えながら、どうしようか考えた。もしサコンの耳に入れば、間違いなく糾弾されるだろう。只でさえ、かつての師であるコタロウと許嫁だったユカリから【ガルバトロズ】にいたことで白眼視されたのだから、その教祖を匿っていると知れば、間違いなく自分も同罪になると確信した


「悪いことは言わないですから、ここを離れてください、幸い気付かれていないので・・・・」


「すまんが無理だ。」


「何故ですか!」


「うん、もう路銀が尽きたし、食糧もないんだ。」


それを聞いたサマノスケは更に頭を抱えた。サマノスケはようやく生活のめどがつき、食べていけるほどの生活を送ってきたが、自分の汚点といえるべき存在のおかげで、その生活も水泡に帰してしまう


「教祖様。」


「いや、もう教祖じゃ・・・」


「いいですか!旅の路銀ができるまで、ここに置いておきます。その代わり、私の許可なく勝手に外へ出ないでください!いいですね!」


「お、おう。」


コマイラはサマノスケの下で共同生活を送ることになった。コマイラはサマノスケが持ってきた内職の仕事をすることで路銀作りをさせようとした。コマイラもこれ以上、サマノスケに迷惑をかからないよう、大人しくしていた。そんなある日、サマノスケの下へユカリが尋ねると、内職をしているコマイラとばったり会ってしまった


「サマノスケ、いるか・・・・誰だ!」


「ああ、ユカリ、大丈夫だ、俺の知人だ。」


「知人だと?」


「ああ。」


サマノスケは昔の知人だと説明をした。ユカリはコマイラを注視し、サマノスケに話しかけた


「サマノスケ、昔の知人とは、まさか【ガルバトロズ】じゃないだろうな?」


ユカリからのダイレクトアタックともいえる発言にサマノスケとコマイラの心臓が握りつぶされそうなほどの圧迫感が襲った。コマイラとサマノスケは必死で気取られないようにしつつ、笑顔で対応した


「いやだな、そうじゃないよ、一緒に同じ家に仕官しようとして知り合ったんだよ。」


「そうですよ、お嬢さん。」


ユカリはこの二人から漂う胡散臭さに気付いたが、これ以上、追及してもこの二人は頑なにかわし続けるだろうと感じ、それ以上、追及しなかった


「そうか、それで貴公の名は?」


「あ、ああ。私はコマネンと言います。」


コマイラは道中、偽名を使いながら逃亡生活をしていたので、何とか誤魔化せた。ユカリは胡散臭げにコマイラを注視するとサマノスケが割り込んできた


「ところで、ユカリは何か用があって来たんじゃないのか?」


「あ、ああ、サコン殿とお爺様に土産を送ろうと思ったんだ、お前はついでだ。」


「ついでかよ。」


「土産は渡したし、私は帰る。邪魔をしたな。」


ユカリはそう言うと、そのまま出ていった。サマノスケとコマイラは安堵の溜め息を吐きつつ、何とか乗り切る事に成功したのである


「危なかったな。」


「いや油断できませんよ、ユカリは鼻が利きますから。」


「そ、そうか。」


その頃、ユカリは祖父であるコタロウの下に土産を渡していた


「フォフォフォ、すまんのう。」


「いいえ、そういえばお爺様、サマノスケの家に昔からの知人が住み着いているのですが・・・・」


「ん、知人?」


「はい、何か胡散臭い感じがして、もしかして、あの組織の仲間じゃないのかと思ったのです。」


「サマノスケがそう申したのか?」


「いいえ、ですが何かを隠していることだけは分かりました。」


「そうか、あやつには困ったものよ。」


「では、私はサコン殿の下へ参ります。」


「サマノスケの下で下宿している知人について伝えるのか?」


「念のために。」


「そうか。」


その後、ユカリは真っ直ぐ、島左近らが済む屋敷へと向かうのであった





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