74話:公爵子息
島左近清興だ、例の修羅場【ユカリとサマノスケの痴話喧嘩】から仲直りに至るまで時がかかったが、2人はよく会っているらしい
「まぁ、険悪よりはマシじゃな。」
まぁ、それは置いといて、突然だがワシの領地に招かねざる客が訪れた
「お前がこの土地の主だな、僕はアルンフェン公爵家の跡取りであるクロス・アルンフェンだ!」
ワシの目の前にいる小癪な物言いをする世間知らずな小童の正体は公爵家の子息、何故ここにいるのかというと、ワシは領地の経営や子供の面倒等を見つつ、平穏に過ごしていると、与一よりある知らせがきた
「左近様、公家【貴族】の馬車がこの屋敷へと向かっております。」
「何?」
最近だがシュバルツ王国の者の出入りがある。まぁ、商談をする伯爵家もあれば、脅しをかけて平民に失脚したどこぞの公爵家もある。今度は誰であろう。ワシらは準備を進めると外から馬のいななきが聞こえた。そこへ与一がワシの下へ訪れた
「してどこの家の馬車だ。」
「はっ!アルンフェン公爵家の者だと。」
「アルンフェン公爵家、シュバルツ王国だな。」
アルンフェン公爵家はシュバルツ王国に仕える譜代の家臣であり、一族は様々な分野から高官を輩出した名家である。その家が何故、ワシの下へ?
「とりあえず客間へ通せ。」
「はっ!」
ワシは身嗜みを整え、客間へ向かうと与一がワシの下へ再び訪れた
「如何した?」
「左近様、お耳を拝借。」
「何だ?」
ワシの耳元で用件を囁くと、ワシは目を疑った
「それは誠か。」
「(コクリ)」
「はぁ~。」
ワシがそう言うと与一は頷く。ワシは溜め息をつきつつ、客間へ向かうと、そこには金髪碧眼、年は10歳くらいの色白の美少年が座っていた。そのそばには側近らしき若い男が立っていた。ワシの存在に気付くと立ち上がり・・・・
「お前がこの土地の主だな、僕はアルンフェン公爵家の跡取りであるクロス・アルンフェンだ!」
そして現在にいたる。ワシはこの公爵令息がなぜ屋敷へやってきたのか、尋ねることにした
「ようこそお越しくだされました。某は当屋敷の主人のサコン・シマと申します。さて公爵家の御曹司は当屋敷に何用で参られましたかな。」
「一夜の宿を借りたい。」
公爵子息から一夜の宿を要求してきた。まあ、それくらいなら、構わないが・・・・
「ええ、構いませぬが・・・・」
「うむ、夕食は牛のステーキだ。」
ちゃっかり夕食を要求してきた。一夜の宿だし、霜降り肉を買いに行かせた。ワシはこの公爵子息専用の部屋と連れの者たちの部屋を案内した。特に公爵子息の部屋は清潔感あふれる部屋にした
「うむ、悪くないな。」
どうやら気に入ってもらえたようだ。相手が相手だからな・・・・
「旦那様。」
そこへ愛妻アリーナと我が子であるアルグレンを抱えているウルザが駆け付けた。ふとクロスがアリーナを見かけると・・・・
「これがお前の妻か。」
「え、ええ。アリーナ、この御方はアルンフェン公爵家の御子息のクロス・アルンフェン公だ。」
「まあ、これは失礼をいたしました。私はサコン・シマの妻、アリーナ・シマと申します。」
アリーナは折り目正しく挨拶をした。すると公爵子息はマジマジとアリーナを見続けた。視線に気付いたアリーナは・・・・
「私の顔に何か?」
「いや何でもない!」
クロスはそっぽを向いて、そのまま走り去った。それからというもの、夕食はワシらが食べる料理、公爵子息が食べる料理、連れの者が食べる料理に分けて、やらなくてはならず、先にクロスが要求したステーキを先に調理し、ステーキを切った状態で提供した
「御曹司、霜降り肉のステーキ、サラダ、ライス、コンソメスープでございます。」
「うむ。」
「御熱いのでご注意のほどを・・・・」
「余計なお世話だ!」
クロスは構わずにナイフとフォークを手に取り、ステーキに噛り付いた。公爵子息らしく礼儀作法に無駄がなく食器を使って丁寧に食べている。試しに菓子も用意しておいた
「御口汚しに菓子を用意いたしました。」
ワシは特産品として作った塩味饅頭6個を乗せた皿を置いた。【サコン湖塩】を隠し味にしたこしあんの饅頭であり、白色2個、抹茶色2個、桃色2個と色とりどりであり、菓子楊枝もついている。クロスは塩味饅頭に興味津々で、ステーキを食べ終わった後、マジマジと見続けた
「もし毒見を所望であれば、某が一ついただきますが?」
「余計なお世話だ!」
クロスは塩味饅頭を乗せた皿を自分の下へ持っていき、菓子楊枝を手に取って、切り分けた後、口に運んだ
「(ん、何だ、餡子の甘さの中にほんのり塩の味がある。でも甘すぎず、まろやかだ。それに皮もほどよい柔らかさで相性がいい!)」
クロスは今まで沢山の菓子を食べてきたが、この菓子はそれとは全く別だ。クロスの表情は柔らかくなり、年相応の子供のように夢中に食べ続け、気付いたら、6個全部完食していた
「お気に召しましたかな、御曹司?」
「ん、まあまあだ。」
クロスは小癪な物言いをしながら、そっぽを向いた。食事を終えた後、風呂に入ることになった。側近たちがクロスの世話をしている間、ワシらは先に夕餉にした。ワシは与一、アリーナ、ウルザ、アルグレンらと一緒に食事をすることにした
「はあ~、貴族の相手は楽じゃないよ。」
「ウルザ、声が大きい。」
「そうだ、明日までの辛抱だ。」
「は~い。」
「旦那様。」
「ん、如何した?」
「あの若君は、公爵家の跡取りと申されましたが・・・・」
「それがどうした?」
「いいえ、公爵家の跡取りにしては供の数が数名のみとは、気になりまして・・・・」
「恐らくお忍びの旅であろうな。あまり派手には動けぬからな。」
「おぎゃあ、おぎゃあ!」
「あらら、御腹空いたのかしらね。」
アリーナは用意しておいた哺乳瓶をアルグレンに飲ませた。アルグレンはぐびぐびと飲む姿にワシらは一時だけ安堵した心地で合った。ワシらは食事を終えた後、クロスも風呂に上がった後、寝巻に着替え、側近たちを下がらせた後、先に部屋へ入った。部屋に入ったクロスはベッドに乗り、ロケットペンダントを取り出し、写真を眺めていた
「・・・・母上。」
それを見終わった後、クロスはそのまま就寝した。クロスが寝たのを確認した後、左近たちは後片付けを済ませた後、明日の準備を終わらせ、就寝した
そして翌朝、使用人たちは先に起きて、朝餉の準備をしていた。左近たちも早くに起床し、準備を進めていた。そこへクロスと側近たちが着替えを済ませて、現れた
「おはようございます、御曹司。もう少しで朝食ができますので、テーブルにてお待ちを。」
「うむ。」
クロスは先に席についた後、朝食が運ばれた。運ばれたのは白パン、ジャム、オムレツ、ウインナー、サラダ、野菜スープ、ケチャップ&マスタード等である。クロスはナイフとフォーク、スプーンを使って、食事をし始めた。ワシらも簡単な食事を済ませた後、片付けの準備をしていた。ワシはクロスの下へ訪れると、食べ終わった後だった
「お味は如何でしたか?」
「うむ、まあまあだ。」
相も変わらず、小癪な物言いをする小童だ。ワシは使用人に命じて食器を片付けさせた後、クロスと側近たちは出発する準備を進めていた。ワシらが片付けを終わらせた後、クロスたちは既に出発する準備を整えていた
「一夜の宿、世話になった。後で礼をする。」
「ははっ!有り難き幸せ!」
ワシはクロス一行を屋敷外まで見送った。クロスは馬車に乗り、出発した後、ワシらは一行の馬車が見えなくなるまで見送った後、全員、安堵の溜め息をついた
「ようやく帰ったわね。」
「もう疲れたわ、貴族の相手はこりごりよ。」
「左近様、嵐が過ぎ去りましたな。」
「皆の者、ご苦労であったな、ゆっくりと休め。」
ワシらは屋敷で一休みした後、いつも通りの日常を送るのであった




