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72話:公爵の末路

シュバルツ王国の王都にある噂が広まった。ギルタージュ公爵家が違法の偽貨を鋳造していると官民問わずささかれていたのである。隠密によって早くに国王であるロバート・シュバルツの下へ知らされた


「ギルタージュ公爵家に偽貨鋳造の噂か。」


「陛下、もしこれが誠であれば、ギルタージュ公爵は法に背いております。」


「うむ、まずは奴の領地を探れ、内密にな。」


「ギルタージュ公爵は如何いたしましょう?」


「どうせシラを切るに決まっておる、奴の周辺に不穏な動きがないか厳重に監視せよ。」


「ははっ!」


その頃、偽貨鋳造の噂の元であるギルタージュ公爵家はというと・・・・


「くそ、どこで情報が漏れたのだ!」


ギルタージュ公爵家当主であるビルター・ギルタージュは焦っていた。秘密裏に偽の貨幣を鋳造していた事がなぜ外に漏れたかのと・・・・


「まさか隠密が侵入していたというのか。」


その可能性があり得る、恐らく国王直属か、もしくはどこぞの貴族が隠密を放ち、偽の貨幣の出所を暴いたのか


「くそ、こうなったら早馬、もしくは早便を使い、鋳造所を破壊するしかない。」


ギルタージュ公爵家は早馬と早便を使い、領地へ送ったが、既にロバートの手が回っており、早馬と早便は差し止められた


「くそ、もう手が回っていたのか!」


「父上!」


そこへ公爵令息であるヒルズ・ギルタージュがノックもせずに入ってきた


「何を無断で入ってきておる!」


「父上!偽貨の鋳造をしていたとは誠にございますか!」


「そのようなもの、噂に決まっておろうが!」


「そ、そうですよね。父上に限ってそのような事を・・・・」


「分かっただろう、ワシは今、忙しいんだ!早く出ていけ!」


「は、はい。」


部屋を出た後、ヒルズは父の並々ならぬ不穏な空気に嫌な予感がした。まさか本当に偽貨の鋳造に関わっているのではないのかとヒルズの心中に疑いが生まれた


「まさか父上に限って・・・・」


ヒルズは父親を尊敬していた。父は気難しく神経質なところがあるが、誰よりも貴族としての誇りを持ち、誰よりも不正や汚職を憎んでいた。そんな父が偽貨の鋳造なんて・・・・


ビルターは息子から疑いの目を見られているのを知らずに何とか打開策がないか考えていた


「早く何とかせねば・・・・」


その頃、ギルタージュ公爵領の鋳造所ではいつも通り、偽の貨幣を鋳造していた


「今日の出来はどうだ。」


「少しばかり出来が悪いですな。」


「公爵様も無理をなさる、直ぐに大金がいるから多めに偽貨の鋳造せよとは・・・・」


「少しは休みが欲しいですな。」


「おまけに薄給だしな。」


鋳造所に携わっていた者たちは薄給と長時間労働に不満を抱きつつ、作業をしていた






島左近清興だ、例の噂を流した結果、王都では官民問わずギルタージュ公爵家の噂が広まっていた。ギルタージュ公爵は早便や早馬を送ったが、事前に国王が差し止め、どうすることもできない状況に陥っていた


「左近様、効き目が表れましたな。」


「あぁ、流石のギルタージュも身動きが取れぬと見えるな。」


「ところでギルタージュ公爵領とオコーネル伯爵領の方はどうだ。」


「特に変わった動きがなく平穏にございます。噂がまだ知られていないご様子で・・・・」


「人の噂と言うのは恐ろしいものよ。もし両家に知れ渡れば、直ちに鋳造所は闇の中に葬られるからな。」


それから数日後、国王が放った隠密がギルタージュ公爵領へ侵入し、例の鋳造所をくまなく探し、ついに例の鋳造所を見つけた。隠密たちは職員たちに見つからずに調査を始めた結果、偽貨の製造法や偽貨と書状を発見した。隠密たちは公爵領を脱出してから、数日後、王都に到着し、国王であるロバート・シュバルツの下へ送られた


「ほぉ~、これが例の偽貨か、よく出来ておる。」


「証拠が出揃いましたな。」


「直ちにギルタージュをここへ呼べ。」


「はっ!」





その頃、ギルタージュ公爵は打開策が見出だせず、途方に暮れていると、扉からノック音がした


「今は忙しい。」


「旦那様。」


「リルドか、入れ。」


執事のリルドが入ってきて用件を伝えた


「旦那様、王宮より御召しが・・・・」


「ワシは病だ、登城できぬ。」


「是が非でも登城せよとの事にございます。もし拒めば力尽くでもと・・・・」


「・・・・分かった。」


ギルタージュは言い訳を考えつつ、身支度を済ませ、王宮へ向かった。見張りの衛兵たちに厳重に守られながら、広間へ案内された。ギルタージュは内心、ドキドキしながらも、不正がばれないで欲しいと願いつつも、広間へ到着した


「ふぅ~。」


「公爵閣下、中へ。」


衛兵に促され、中に入ると、既に国王が玉座に座っていた。傍らには大臣や側近たちがギルタージュを見下ろしていた。ギルタージュは用意された椅子に座り、礼をした


「臣、ビルター・ギルタージュ、陛下の命により参上仕りました。」


「ビルター公爵。」


「ははっ!」


「お前が偽貨の鋳造をしていると聞いたのだが、誠か?」


「滅相もございません、何故この私が国法に背くような行為をせねばならぬのですか。」


「ではあくまで噂だと申すのだな。」


「ははっ!全ては私を目障りに思う者たちの讒言にございます。」


「讒言か、相違ないな?」


「相違ございません。」


「そうか、おい例の物を。」


「ははっ!」


大臣が合図を送ると、ビルターの前に偽貨の製造法や原物、更にギルタージュ公爵家の家紋が施された書状等が提示された。それを見たビルターは少しばかり動揺をした


「それらの証拠はギルタージュ公爵領より持ってきた物だ。書状の内容によれば大金が必要なので急ぎ偽貨を鋳造せよと書かれている。お前の家紋とサイン付きでな。」


「そ、それは何者かが偽造した物にございます!きっとオコーネル伯爵家が私を嵌めようとそのようなものを忍ばせたのでしょう!」


苦し紛れの言い訳をするだけではなく、この場にいないオコーネル伯爵家のせいにするビルターに大臣や側近たちが次々と畳み掛けた


「ギルタージュ公爵、ここに至ってまでシラを切るとは見苦しいぞ!」


「そなたはオコーネル伯爵家の領地にまで堤を設けたそうではないか、これは明らかに不法占拠に等しい大罪だ。これはどう説明いたす。」


「それについては部下が勝手にやったことにございます!私は何も知りませぬ!」


「それだけではなく、物品の取引の差し止めをしたようだが、これはどう説明いたす!」


「それは濡れ衣にございます。物品の差し止め等、命じておりません。」


「ではもう1つ、サコン・シマなる者に刺客を放ったと警備局から知らせが届いたのだが。」


「な、何の事やら。」


「刺客の1人が貴様に金で雇われたと知らせが来たのだ。何のために刺客を放った?」


「そ、それは。」


立て続けに証拠が提示され、ビルターの顔は青白くになり、しどろもどろな状態に陥っていた。それを見たロバート・シュバルツは溜め息をついた


「はぁ~、ビルターよ。」


「はっ!」


「お前は誰よりも不正や汚職を誰よりも嫌い、誰よりも貴族たらんと努めていた。これはそなたのいう貴族のすることか?」


「へ、陛下。」


「お前には失望したぞ。」


その一言でビルターは全身から力が抜け、俯くことしかできなかった。もはやこれまでと観念し・・・・


「申し訳ありません。」


それを聞いたロバート・シュバルツは立ち上がり、ビルターを見つめ、裁きを申し渡した


「ビルター・ギルタージュよ、偽貨鋳造の罪にて、ギルタージュ公爵家は断絶及び所領没収いたす。そなたとそなたの一族は平民に降格の上、アレイスター・オコーネルの預かりとする。」


それを聞いたビルターは耳を疑った。平民降格はともかく格下であり、対立していたオコーネル伯爵家の預かりになるなど、屈辱でしかなかった


「へ、陛下、その儀ばかりは!」


「これは決まったことだ、連れていけ!」


「へ、陛下!お許しを!お許しを!」


衛兵たちに連れていかれたビルターの叫びを無視し、ロバート・シュバルツは退席した。その後、ビルターとその一族は馬車によって移送され、オコーネル伯爵家の領地へと運ばれた。馬車の中で息子のヒルズを始め家族から徹底して無視された。あまりの居心地の悪さにビルターは肩身が狭い思いをした。そうこうしているうちにオコーネル伯爵領に到着し、馬車から降りると、そこにはアレイスター・オコーネルが待ち構えていた


「久し振りだな、ビルター元公爵。」


「くっ。」


「ここに来たからにはここのルールに従ってもらう。それで良いな。」


「ちっ。」


「無礼だぞ!」


「ぐふっ!」


舌打ちをしたビルターに兵士の一人に殴られ、地面とキスをした


「忘れるなよ、そなたは平民であると共に罪人でもある。身の程を弁えよ。」


それを聞いたビルターは屈辱の涙を流し、受け入れるしかなかったのである。その後、ギルタージュ公爵家は歴史の闇へ消え、その後、ビルターとその一族はどうなったのかは闇の中であった








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