71話:刺客
島左近清興だ、オコーネル伯爵家と塩の取引が成功してから数週間後、とある公家【貴族】からある抗議を受けていた
「オコーネル伯爵家に塩を売るのを即刻辞めていただきたい!」
ワシらに抗議してきたのはオコーネル伯爵家領地の隣にあるギルタージュ公爵家の領地の使者である。実はオコーネル伯爵家はギルタージュ公爵家から塩を購入していたが、些細な喧嘩がきっかけで塩の売買が無くなり、我等と契約を交わしたのである
突然、我が領地にやってきては、いきなり塩の売買の白紙を要求してきよった礼儀知らずな輩だ
「それは困りましたな、我等とオコーネル伯爵家との間では既に契約書を交わしており、今さら白紙にはできかねます。」
「ならばその契約を破棄して貰いたい!」
「そう申されましても我等は塩を売るだけでござる。向こうから契約を破棄しなければ我等といたしましてはどうすることもできませぬ。」
「我等をギルタージュ公爵家と知っての狼藉か!」
「いやいや滅相もない、我等はあくまで塩を売るだけでござります。それに白紙を求めるのであればオコーネル伯爵家に申してくだされ。オコーネル伯爵家が契約を破棄するならば我等もそれに従うだけのことにございます。」
「くっ!失礼する!」
使者は立ち上がり、乱暴に扉を開けて、そのまま馬車に乗って帰っていった
「何とも無礼な輩ですな。」
「そうだな。」
「いっそのこと・・・・」
「まずはギルタージュ公爵家の身辺調査だ。与一、【お庭方】を使うぞ。」
「はっ!サスケ!」
与一が呼ぶと、そこへサスケが、現れた
「お呼びでございましょうか。」
「うむ、そなたは【お庭方】10名を連れて、ギルタージュ公爵家の領地と王都の公爵邸に行って貰うぞ。」
「はっ!承知いたしました!」
そういうとサスケはスッと消え去った。ワシらは事の成り行きを見守るだけであった。その数日後、ギルタージュ公爵家とオコーネル伯爵家との間で再び問題が発生した。ギルタージュ公爵家はオコーネル伯爵家に対して塩だけではなく、他の物品の売買を停止したのである
「与一、此度の事はギルタージュ公爵の暴挙か?」
「はっ!知らせによりますれば、オコーネル伯爵に我等との塩の売買を破棄するよう申されましたが、頑として拒絶したことでギルタージュ公爵はお怒りになられたようです。」
「そもそも両家の間で何があったのだ?」
「はっ!実は堤の件で問題がありまして。」
「堤とな。」
話を聞くと事の発端はギルタージュ公爵家が河の氾濫を無くすために大規模な堤を作ったのだが、その一部がオコーネル伯爵家の領地にまで及んでおり、それに抗議をしたが、その仕返しか塩の売買を停止させたのである
「ワシらがいた現世でも河の氾濫や堤の建設の事もあったが、流石に他の領地にまで堤を作ったギルタージュ公爵家の落ち度であろうが。」
「はっ!調べによりますれば、ギルタージュ公爵は誇り高く、神経質で気難しい御方と聞いております。例え落ち度がギルタージュ公爵家にあっても格下の伯爵家に詫びを入れる事は有り得ませぬ。」
「うむ、これは御しにくい相手だな。」
「如何いたしますか。」
「ここは様子見だ。もし公爵の目が我等に向けられた時には始末せよ。」
「はっ!」
それから数日後、ワシは【お庭方】を連れて領内の視察をしていた。地主としては民衆と良好な関係を築くうえで必要不可欠だからな。まずワシは【サコン町】の視察を開始した。ワシを見かけた民衆は挨拶をし、こちらも挨拶をした後、その後の状況を聞いて回った。様々な物品が【サコン町】に流通されているようだ
「町も発展しているようで良かった。」
次にワシは田畑を見て回った。最初は飢饉に強い作物を重点的に作っていたが、今は田畑の規模が広がり、米や麦の他に果樹等も栽培されている
「こちらも田畑が増えて良かった。」
最後に塩湖に寄った。塩湖近くには塩工房が建てられており、多くの湖塩が作られている。ワシは塩工房に寄ると塩作りの棟梁サキシマが出迎えてくれた
「これはサコン様!」
「サキシマよ、塩作りの首尾はどうだ?」
「はい、塩作りは順調に進んでおります。」
「何か不足している物はあるか?」
「ええ、塩作りに使う道具が古くなっておりまして、新しいのに変えたいところですな。」
「分かった、新しいのに変えよう。」
「ありがとうございます。」
ワシは領内の視察を終えたところで、屋敷へと戻ろうとするとどこからか殺気を感じた
「【お庭方】の者ではないな。」
ワシは屋敷へ帰る道中、なるべく人気の少ない場所へ進むと、案の定、殺気はワシの方へと近づいてきた。ワシは【お庭方】に、捕縛せよと命じた。ワシは立ち止まると、向こうもピタッと立ち止まった
「そろそろ出てきても良いであろう。」
ワシがそういうと、黒装束の集団が出てきた。しかも武器持ちである
「ふん、ギルタージュ公爵家の者か?」
ワシはそう尋ねるが奴らは一向に口を開かなかった
「黙っていると言うことは認めたも同然だぞ。」
ワシがそういうとわずかばかり動揺が広がっていた。カマをかけたつもりだが、どうやら正解のようだ
「ワシを殺せと命じられたのか。だがワシの首は安くはないぞ。」
ワシは手元に日本刀を出現させた。向こうは突然、手元に日本刀が現れた事に驚き、武器を構えた
「久しいな。」
ワシがそういうと、黒装束の集団がワシに向かって突撃してきた。すると【お庭方】が辺り一面に煙玉を出して、目眩ましをした
「ごほっ、ごほっ。」
「くっ!散れ!」
黒装束の集団は白煙に咽びつつ、脱出を試みるが、抜け出した先には撒菱が散りばめており、それを踏んでしまった
「ぎゃあ!」
「いてぇ!」
更に四方八方から手裏剣が飛んできて、黒装束の集団に命中した
「がはっ!」
「ぐあ!」
「散れ!散れ!」
黒装束の集団はその場を去り、逃げようとしたが、そこへ島左近が待ち構えていた
「逃がすと思ったか。」
電光石火の早業で黒装束の集団に斬りつけた。黒装束の集団は突然の攻撃にどうすることもできず、1人また1人と斬り殺されていった
「どういう事だ、引退したのではないのか!」
「引退?ワシは生涯現役だ。」
残りの黒装束の集団は【お庭方】によって捕縛された。中には自害をしようとした者がいたが、【お庭方】に見抜かれ、未遂に終わった。黒装束の集団が全員、捕縛された後、警備隊を呼び、黒装束の集団はお縄になった
「(やれやれ、公爵家も随分と手荒な事をしてくれるな。)」
その後、ワシの方も事情聴取を受けた後、返され屋敷へ戻るとアリーナや与一等がワシの姿を見て安堵の表情を浮かべた
「旦那様、よくぞ御無事で!」
「あぁ、心配かけたな。」
アリーナを宥めていると、与一がその場で土下座した
「刺客の存在に見抜けなかった事、誠に申し訳ございません!」
「もう、過ぎた事だ、気にするな。」
ワシは屋敷へ入り、自室で休息を取ると同時に与一を呼んだ
「お呼びでございますか。」
「うむ、先程ワシを襲った刺客たちだが、恐らくだがギルタージュ公爵家の者かもしれん。」
「何ですと!」
「ワシがカマをかけたら、わずかだが動揺を見せた。」
「左近様、奴を始末いたしましょう!」
「まぁ、待て。奴の身辺調査だ。もし埃が出れば、ばらしてしまえば良い。」
「はっ。」
「奴はいつでも殺せる。まずは【お庭方】の伝令を待とう。」
与一は不服そうだが、奴がクロであれば王国に密告すれば良いだけの話だ。それから数日後、警備局の者が尋ねてきた
「さ、サコン準男爵様、落ち着いて聞いてください。」
「伺いましょう。」
「はっ、刺客の1人がギルタージュ公爵から金を貰って貴方に脅しをかけるよう命じられたとの事です。」
「脅しと言うと、塩の事か。」
「それでどうします、相手は畏れ多くも公爵家です。」
「忝ない、後は我等の方で解決いたす。」
「そうですか、では我等はこれで。」
警備局の者が帰ってから数日後、サスケ等が帰還した。ワシはサスケを呼び、身辺調査の報告を受けた
「何と公爵家でそのような事が。」
「はっ!どうやら裏で偽貨を作っていた事が判明いたしました。」
「左近様、偽貨は違法案件にございますな。」
「それだけではありませぬ。」
「何だ?」
「どうやら【サコン町】に流通している物品を差し止めようと密かに動いているようです。」
「脅しの次は、兵糧攻めか。」
「左近様!」
「与一、サスケ、ちこう。」
ワシが呼び掛けると与一とサスケが近づいた
「与一、サスケ、方々に忍びを走らせ、ギルタージュ公爵家が偽貨を鋳造していると噂を流せ。ただしギルタージュ公爵領とオコーネル伯爵領には噂を流すなよ。」
「「ははっ!」」
「さて奴等はどう出るか楽しみだ。」
ワシらは王都にいるギルタージュ公爵がどう出るか、手ぐすねを引きながら待ち望むのであった




