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69話:鉢合わせ

島左近清興だ、ワシがこの異世界にきて、再び我が子を持つことができた。その名は【アルグレン・シマ】だ。ワシには現世に妻の茶々、息子の信勝、友勝、清正、そして娘が二人いた。まさかこの世界で再び子供を持てるとは感慨深いものだ。ちなみに与一の方もウルザが出産し、無事に女子が生まれた


「主も無事に産まれて良かったな。」


「ははっ!」


「それで名は決まったのか?」


「はっ!名はウルザが決め申した、【ヨーム・ソウマ】です。」


「【ヨーム・ソウマ】、良き名じゃ。」


「ははっ!有り難き幸せ!」


子供が生まれた事を知った知り合いから出産祝いの品々が届いた。純粋に祝う者もいれば、よからぬことを考えてワシに接近したい者もおり、特に商人が多い。今日も我が屋敷に商人が訪れた


「サコン様、此度、御子息ご誕生、おめでとうございます。」


「ああ、忝い。」


「これは私のほんの気持ちです。」


商人が寄越してきたのは、蝶結びの紐のついた漆塗りの箱だった。これは完全に山吹色の菓子だろ・・・・


「そなたの御志、気持ちだけ受け取っておこう。」


「いやいや私どもは日頃からサコン様にお世話になっておりますので、どうか・・・・」


「聞こえなかったのか、気持ちだけ受け取ると申しておる。」


「そ、そうですか、これは失礼いたしました。で、ではこれにて!」


ワシは笑顔を保ちつつ、眼光は鋭く商人を見据えた。商人は左近の眼光に背筋が凍り、すぐに箱をしまい、苦笑いを浮かべつつ、挨拶を述べて、そそくさと去っていた。商人が去ったのを与一は見届け、ワシの下へ報告した


「はあ~、これで何度目だ。」


「先程の御志、完全に付け届け(賄賂)でしたな。」


「ああ、頭の痛い事だ。」


商人たちはワシから御用商人の地位が欲しくて、こうやって付け届け(賄賂)を送っているのだが、ワシはどれも贔屓するつもりはない。だが商人たちは誰よりも多くの利益を得るためになりふり構わず行動するのが滑稽に思えてならぬ・・・・


「さてと・・・・ん?」


ワシが席を立つと同時に扉の向こうから気配を感じた。すると扉からノックの音がして、許可を出すと使用人の1人が入ってきた


「旦那様、コタロウ殿が参られました。」


「おお、そうか、通してもらえ。」


ワシは許可を出すと、使用人に連れられコタロウが入ってきた


「フォフォフォ、此度は御子息御誕生おめでとうございます。」


「こちらこそ、忝ない。」


「餞別なんじゃがのう、オタネニンジンを持ってきた。畑の土が良いのか、出来が良くてのう。」


「これは忝ない。」


ワシはコタロウからオタネニンジンを受け取った。それからワシはサマノスケの様子を聞いてみることにした


「コタロウ殿、サマノスケ殿の様子はどうだ?」


「フォフォフォ、あやつは真面目に畑仕事をしておりますじゃ。」


「そうか。」


「何か気になる事でもおありかのう?」


「いや、他意はござらん。ただあの者は立身出世を夢見ておられたのだろう、その者がどこにも仕官もせずに畑仕事に精を出しておられるからな。」


「あやつが立身出世を諦める何かきっかけがあったのであろうのう。」


「立身出世を諦めるきっかけでござるか(やはり【ガルバトロズが関係しているのやもしれんな】)。」


「フォフォフォ、長居をしてしまったのう、ではワシはこれでお暇するとしよう。」


「左様か、与一よ、お送り致せ。」


「ははっ!」


コタロウが去った後、数刻(2時間後)が経ち今度はユカリが尋ねてきたのである


「サコン殿、御子息御誕生おめでとうございます。」


「これは忝ない。」


「ん、そのオタネニンジンは?」


「あぁ、数刻前にコタロウ殿が尋ねておられてな、そのオタネニンジンはコタロウ殿からいただいたものだ。」


「お爺様が!」


「左様、コタロウ殿に畑を貸しておってな。その見返りにオタネニンジンをいただいておるのだ。」


「そうですか、祖父の作るオタネニンジンは滋養強壮によく、重宝されるのです。」


ユカリはオタネニンジンを感慨深そうに眺めていた


「よければアリーナに会っていくか、そなたが来てくれた事を知ったら、喜ぶであろう。」


「そうですか、分かりました。」


「与一、案内いたせ。」


「ははっ!」


ユカリは与一に案内され、アリーナの下へ向かった。ワシはオタネニンジンを使用人たちに渡した、ワシは住民たちの嘆願書を拝読していると、再び扉からノック音がした。ワシが許可を出すと、使用人が入ってきた


「旦那様、サマノスケ様が参られました。」


それを聞いたワシはドキッとした。この屋敷には今、ユカリが来ているし、ここで鉢合わせになったら、確実にマズイ・・・・


「サマノスケ殿にはこう申せ。今は忙しく手が離せないから、後日伺ってくれと。」


「承知しました。」


使用人を下がらせ、早く退散してほしいと願いつつ、再び扉からノック音がした。ワシが許可を出すと、そこへユカリが現れた


「サコン殿、そろそろ私はお暇致します。」


「そうか、それでどうだ、ワシの息子は?」


「はい、玉のように可愛らしい子でした。」


「そうか、それは良かった。そうじゃ、せっかくだから土産を渡そう。」


「そこまでしていただかなくても・・・・」


「遠慮せずともよい。」


ワシはなるべくユカリとサマノスケを会わせぬよう、時を稼いだ。そうこうしているうちに再び扉からノック音がした。ワシは近づき、扉を開けると、先程の使用人が気まずそうな顔で立っていた


「だ、旦那様・・・・」


「何だ?」


「はい、実は・・・・」


「サコン殿、突然申し訳ない。出産祝いを直接、渡したくてな。」


使用人の背後にはサマノスケが立っていた。なぜ、この男がここにいると心中、思っていると、背後から寒気を感じた。ワシはふと振り向くと、ユカリの顔は無表情になり、辺り一面冷気が漂っていた。それを知らずサマノスケは顔を見せた


「・・・・ゆ、ユカリ。」


サマノスケは久しぶりに会うかつての許嫁であるユカリに再会し、言葉を失った。ユカリもかつての許嫁と再会し、今にも一触即発といえるほどの雰囲気に変わった


「・・・・サマノスケ。」


「は、はい。」


「この場にて色々と問いただしたい事があるが、今はサコン殿に御迷惑をかけるわけにはいかぬ、外で話そうか?」


「あ、ああ。」


ユカリとサマノスケは屋敷から出て、庭に移動した。ワシはというと、万が一のために二人を止め、仲裁しようと思い、共に庭に着いてきた。そして二人は真正面から対峙し、互いに会話がなく、どれくらい時が流れたのか分からぬほど、長く感じた


「サコン殿はご存知だったのか?」


「あ、ああ。そなたとこの者を会わせるべき否か、迷っておってな。」


「そうですか・・・・サマノスケ。」


「な、何だ、ユカリ。」


「お前を【ガルバ町】で見た時は驚いた。後になってお前が【ガルバトロズ】に一員だという事も知った!」


サマノスケは表情が歪み、どう答えようか考えていた。それを知ってか知らずかユカリは更に畳み掛けた


「サマノスケ、お前は亡き御父上のために立身出世を夢見たのを知り、私は涙を呑んで婚約を解消した。だがお前は・・・・お前はなぜ犯罪組織に魂を売った!」


ユカリはズバッと直言した。その直言が効いたのか、サマノスケは観念して全てを打ち明けた


「ああ、確かに俺は【ガルバトロズ】に所属していた。俺は色々なところに仕官したが、敵わず路銀も底をついてしまってな、途方に暮れていた所、【ガルバトロズ】の信者が助けてくれたんだ。俺は恩返しのつもりで人民救済に力を貸した。だが裏の顔も知ってしまった。今となっては後悔している。」


サマノスケはありのままを説明した。ユカリはというと今にも斬りかかりそうな勢いで太刀に手をかけていた。流石にここで刃傷沙汰は避けてほしいが・・・・


「今は【ガルバトロズ】から足を洗って、この町に移住して、畑仕事をしているよ。」


「・・・・お爺様は知っているのか?」


「俺が【ガルバトロズ】に所属していた事以外は知ってる。」


「・・・・そうか。」


ユカリは事の顛末を聞いた後、太刀を抜いた。ワシは流石にマズイと思い、間に入った


「ユカリ殿、気持ちは分かるが刃傷沙汰はマズイ!」


「サコン殿、どのような理由であれ、この者は一度、悪の道に堕ちてしまったのです・・・・サマノスケ、剣を抜け!」


「持ってない。もう必要ないと思って捨てた。」


それを聞いたユカリはワシらから少し離れた後、太刀を振り回し始めた。まるでやり場のない怒りをその場でぶちまけているようなものだ。ワシもサマノスケも黙って見ている事しかできなかった。気が済んだのか、ユカリは太刀を納めた後、サマノスケの方を向いた


「お前の人生だ、勝手にしろ。」


ユカリはそう言い残した後、その場を去っていた。サマノスケはユカリの後を追おうとしたがワシは止めた


「どこへ行く気だ。」


「ユカリの下へ!」


「斬られるかもしれんのだぞ。」


「それでも俺は・・・・」


「はあ~、なら勝手にせよ。」


ワシがそういうと、サマノスケはユカリの後を追った。そこへ与一が足早に駆け付けた。どうやら外の騒ぎに気付いたようだ


「左近様。」


「与一、すまぬがあの二人を追ってくれ。」


「承知しました。」







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