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68話:アルグレン

島左近清興だ、ワシと与一は修羅場に立ち会っている。【ガルバトロズ】に所属していたサマノスケ・オリエと、ユカリの祖父であるコタロウ、因縁の再会を果たしたのである


「サマノスケ、こんなところで何をしている?」


コタロウはいつもの好々爺の表情が一変し、歴戦の猛者の風貌に変わっており、凄まじい気迫がワシらにも伝わってきた。サマノスケは覚悟を決め、コタロウに応対した


「この町に移住しようとサコン殿と話し合いをしておりました。」


「ほぅ~、話し合いの場所が警備局とは・・・・で、何をしたのだ?」


コタロウの鋭い眼光がサマノスケを見据え、コタロウは冷や汗をかく。これでは不味いと思い、ワシは間髪いれずに、二人の間に入った


「コタロウ殿、警備局で話し合いになったのはワシが偶々、警備局に所用があって、そこでサマノスケ殿と移住について話し合いがあっただけの事、別に他意はござらぬ。」


ワシがそう言うと、コタロウはワシの顔をじっと注視した。ワシも目を背けず、コタロウを注視した。どれくらい睨みあったのか分からぬほど長く感じたが先に折れたのはコタロウの方だった


「左様か、サコン殿が言うのであれば、間違いないのう。ところでサマノスケ、今は何をしているのだ?」


「はい、移住してから探そうと思いまして・・・・」


「では前はどんな仕事をしていたのだ?」


「はい、さる高貴な御方の下で騎士として仕えておりました。」


「騎士のう。」


疑い深そうにサマノスケを見るコタロウ、何とか悟られないように表情に変えずコタロウを見据えるサマノスケ、長い沈黙が続いた


「コタロウ殿、某に用があったのではないか?」


「ん、おう、そうじゃった。」


ワシが再び二人の間を割って入り、コタロウに用事を思い出させた


「そうじゃそうじゃ、忘れておったわ、サコン殿、すまんが畑一畝(30坪)を借りたいのだが良いかのう。」


「畑でござるか、それなら構わないが・・・・」


「それは有り難い。」


コタロウがサマノスケから畑の方に興味を示し、ワシはサマノスケから遠ざけるように


「コタロウ殿、実際に拝見してはどうだ。実際に目にした方が早いであろう。」


「そうじゃのう、ワシも畑に使う土には煩いでのう。」


「左様か、では参ろう。」


「フォフォフォ、そうじゃのう・・・・命拾いしたな。」


畑にする予定の土地へ向かう途中で、コタロウは再びサマノスケを睨み付けた後、そう言い残し、サコンらと共に目的地へ向かった。ポツンと残されたサマノスケは・・・・


「師匠、昔から変わってない・・・・・」


ワシらはコタロウ殿を連れて、目的の畑へ向かう途中でサマノスケの事を聞いた


「コタロウ殿は、先程の男とはどのような間柄であろうか?」


「ん、ああ、あやつはワシの弟子じゃ、剣術は優れており、頭も良いが、何より立身出世を夢見ておったのう。」


「弟子という事はユカリ殿とは・・・・」


「ああ、ユカリの兄弟子であり、許嫁じゃった。」


サマノスケの言う通り、誠にユカリとは許嫁の間柄だったようだ。するとコタロウがありのままを語ってくれた


「あやつ(サマノスケ・オリエ)の父親はとある王国の騎士団長を務めた貴族の家柄だったのが、政争に敗れ、ワシらの故郷へ落ち延びたんじゃ。あやつの父親はあやつが幼い時に逸り病で亡くなってのう、幼いあやつをワシは哀れに思って、弟子としたんじゃ。孫娘のユカリと娶わせ、いずれは夫婦になる間柄だったんだが、あやつは立身出世に拘り、ユカリとの婚約を破棄して、出ていったんじゃ。」


どうやらサマノスケが立身出世に拘っていたのは父親が影響しているようだ。サマノスケが【ガルバトロズ】に所属していたと知ったら、コタロウはどう思うのだろう・・・・


「ユカリ殿には知らせるのか?」


「・・・・知らせぬよ、ユカリはあやつを慕って居ったからのう・・・・会ったら何をするか分からん。」


それを聞いたワシらは何と答えればいいか思い浮かばなかった。コタロウから不吉な言葉が出てきたという事は少なくとも吉報ではないようだ。そうこうしているうちに、目的の土地に到着した


「コタロウ殿、この土地は如何?」


ワシが案内した土地は広さは、畑一畝(30坪)ちょうどあり、しかも誰も使用していないため、ここを紹介した。するとコタロウは土地に近づき、手で土の触感を確かめると・・・・


「フォフォフォ、これは良い土じゃ。」


「それは良かった。それで何を植えるのでござるか?」


「フォフォフォ、これじゃよ。」


すると懐からお守り袋ほどの小さな袋を取り出した。袋の中から種らしき物が出てきた


「コタロウ殿、それは何の種だ?」


「これはオタネニンジンの種じゃ。」


オタネニンジン、日本で言う朝鮮人参や高麗人参である。古くから滋養強壮があり、薬用として使用されており、左近たちがいた日ノ本でも珍重された品である


「ほぉ~、これは珍しき物ですな。」


「フォフォフォ、もし出来上がったら、お二方にも分けるからのう。」


「それは忝ない。」


コタロウの用事が終わり、ワシらは屋敷の方へ戻る途中、サマノスケの事について話し合った


「与一、如何いたす?」


「畏れながら、今のあの男に脅威を感じられませぬ。移住を許可してもよろしいのでは?」


「だがコタロウ殿もいるのだぞ。先程の発言もあるからな。」


「ここへ移住したいと申したのはあの男ですからな。最悪、切り殺されても致し方ありません。」


「やれやれ、また厄介事が増えるな。」


「左近様、ユカリ殿にはこの事は。」


「コタロウ殿の申したこと、必ずしも朗報ではないな。最悪、血の雨が降る。」


ワシは考えに考え抜いた末、一度あやつに聞いてみることにした。もし移住したいのであれば許可する方向で話を進めた。ワシは再度書状を送り、再び会うことにした。場所は同じ警備局の一室だ


「もう一度聞くが、移住の考えは変わらぬのだな。」


「はい。」


「コタロウ殿がこの地にて畑を耕すそうだ。それでも良いか?」


「はい。」


「ユカリ殿がこの町に参り対面した時は、如何いたす?」


「その時は覚悟の上。」


サマノスケは完全に移住をするつもりだな。ワシとしては多少の不安があるが、移住を認めることにした


「相分かった、移住は認めよう。ただし妙な真似をすれば分かっておろうな?」


「誓って左様な事は致しません!」


それからというもののサマノスケは畑作りに精を出していた。時折、コタロウが様子を見て畑作りの指導をしていたとのこと・・・・


「報告は以上です。」


「・・・・そうか。」


「このまま警戒を続けますか?」


「元は【ガルバトロズ】の一味だったからな。仮に奴にその気はなくても、他の【ガルバトロズ】の者があの男を尋ねる可能性がある。」


「左様ですな。」


ワシらは引き続き、【ガルバトロズ】に警戒を続ける一方、ワシの方はというと、アリーナが産気づいた事だ


「う、産まれる。」


「何!与一、すぐに産婆を!」


「はっ!」


「ううう。」


「しっかりせよ!」


ワシはアリーナを励ましていると、与一は産婆を連れて戻ってきた。産婆からは「後は任せて」と言い残し、ワシと与一は廊下で待っていた。ワシとしては母子ともに無事であってほしいと願い続けた。出産は命懸けの仕事であり、産後の肥立ちが悪ければ、母親は命を落とすのである。また生まれた赤子も出産後に亡くなる事もある


「左近様。」


「ん、与一。」


「こればかりは天に祈るしかありませぬ、奥方様を信じましょう。」


「ああ。」


しばらく待ち続けると、中から赤ん坊の産声が聞こえた。ワシと与一は立ち上がり、扉の前に進むと、中から産婆が出てきた


「ふう、母子ともに無事ですよ。」


「そうか、それで・・・・」


「ああ、元気な男の子ですよ。」


「そうか、男か!」


「おめでとうございます!」


「ああ。」


その後、赤ん坊の体は洗われ、へその緒を切り取った。その後、赤ん坊はワシとアリーナの下へと運ばれた。ワシとアリーナは生まれたばかりの我が子を愛おしく見ていた


「アリーナ、ワシらの子じゃ。」


「ええ。」


「名は何にするか?」


「旦那様、【アルグレン】はどうでしょう?」


「アルグレン?うむ、良い名じゃ。」


こうしてワシとアリーナとの間に生まれた男子【アルグレン・シマ】が誕生したのであった



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