67話:謎の男と対面す
島左近清興だ、ワシらはある旅の者を監視していた。1度尋ねて来た時は、旅の者の顔を見ようと追跡動物を忍ばせ、ワシらは水晶で覗いていた
「さあ、顔を見せよ。」
旅の者は羽織を脱ぎ、顔を見せた。見た目は二十代後半、黒髪の短髪、切れ長の目と鋭い目つき、身長は180cmほどの色白紫眼の美丈夫だった
「ん、この男。」
「左近様、御存じなのですか。」
「そうだ、【ガルバ町】に滞在し、金塊を狙っていた【ガルバトロズ】の一味の一人だ。」
「あの時の一味の残党にござるか!」
「ああ。」
そう【ガルバトロズ】が【ガルバ町】に現れ、地下にあった金塊を見つけ、持ち帰ろうとしたところ、ワシらが警備隊に匿名で情報を提供し、一味が警備隊に逮捕されたのである、その前にワシらの前に現れ、襲ってきたところを撃退した後、警備隊に引き渡したこと、一味の残党が示談をしようとしたことも、完全記憶能力によって、はっきりと覚えていた
「飛んで火にいる夏の虫とは、この事だな。」
「如何いたしますか、警備隊に密告いたしますか?勿論、【ガルバトロズ】の一味が潜んでいると。」
「うむ。」
「左近様?」
「あやつ、先程から隙を見せずに過ごしておる。明らかにワシらの監視に気付いているな。」
「だったらなおさら・・・・」
「与一よ。あの男は、金塊の一件で誰よりもワシらの監視に気付いた男だ。警備隊に密告したとしても、奴は感づいて、逃亡する可能性がある。それに奴の狙いが分からない事にはうかつには手を出せん。」
「狙いですか、奴は何のために左近様に会いたいなどと・・・・」
「会うにしても場所だな。屋敷の者を巻き込むわけにはいかぬな。」
「いっそのこと、警備局にて会談いたしますか?」
「できるのか。」
「お任せを。」
与一は部屋を退出し、それから時が経ち、ワシの下へ戻ってきた。どうやら警備局の一室の使用の許可が下りた
「与一、一体何をしたのだ?」
「ええ、少々鼻薬を嗅がせました。」
鼻薬、いわゆる付け届け(賄賂)であろうな。場所は決まったが、果たして奴は警備局に来るのだろうか・・・・
「さて奴の下に書状を送るぞ。」
「御意。」
ワシは書状を書き、奴の泊まっている宿へ送った。さあ、奴がどう出るか、ワシらは再び水晶に目を向けた。宿の者から書状を受け取った男は書状を拝読した後・・・・
「聞いているのであろう、なら伝えよ。警備局にてお会いいたすとな。」
この男、やはりタダ者ではないな
「左近様。」
「あぁ、久し振りに武人としての血が騒ぐわい。」
それから数日後、例の男と警備局にて会う事となった。ワシらは先に警備局の一室にて先に待っていた。すると警備隊が例の男を連れて来た。警備隊が去った後、部屋の中にはワシと与一、そして例の男だけとなった
「さて何用会ってワシを尋ねた?【ガルバトロズ】の一味よ。」
「やはり気付いていましたか。ですが一つ訂正があります。元【ガルバトロズ】です。」
「元だと・・・・」
「申し遅れましたな。私はサマノスケ・オリエと申します。サコン・シマ殿、ヨイチ・ソウマ殿。」
「それで元【ガルバトロズ】のサマノスケ殿はなぜワシに?」
「そうでしたな、有り体に申せば、私をこの町への移住を認めてほしいのです。」
「「はあ?」」
この男は何を言い出すんだ?ワシも与一もあまりに予想外な事をいうこの男の言動に呆気に取られたが、すぐに冷静になり、わけを聞いた
「理由を利かせてくれないか?」
「はい、実は私は本部より派遣された監察官のような立場で、支部の監視を命じられました。ですが金塊の一件にて逃げ伸びましたが、本部から大目玉を食らいましてね。おまけに各国からの締め付けが厳しくなりましてね、止むを得ず、【ガルバトロズ】を辞めた次第です。」
「ようはワシらが邪魔をしたから、責任を持って自分をこの町に移住させろと言いたいのか?」
「ははは、これは辛辣。」
「それでワシの下に来て、移住許可をいただきたいと?」
「はい、この町の町長といえば貴方ですからね。」
どうやらこの男が本気で移住を考えているようだ。だが腑に落ちないことがあった。そうなぜこの町なのかと。そこへ与一が問い詰めた
「なぜこの町を選んだ?他にもあろうに・・・・」
「そうですね、他の町は【ガルバトロズ】の影響か、警備が厳しくてね、その点、この町は出来たばかり、警備の方は厳しくないと思っていましたが・・・・」
「残念ながら、移住者の中にも問題のある輩がおるのでな、警備を厳重にしているのだ。この町にも【ガルバトロズ】に警戒せよとシュバルツ王国からの命があるからな。それに、主が【ガルバトロズ】を辞めたという証拠もないしな。」
実際はそのような命を受けていないが、ワシとしては【ガルバトロズ】の存在は厄介このうえないからな。するとサマノスケはふと考え始めた
「では、こうしましょう。【ガルバトロズ】の機密を貴方方に提供いたしましょう。」
「機密だと?」
「はい、【ガルバトロズ】の資金源と潜伏場所と支援している団体等を提供いたします。その情報を貴方が国王に御報告するのです。国王の覚え目出度いサコン殿であれば、国王も必ずや信用し、サコン殿は【準男爵】よりも高い地位に昇ることができます。」
「司法取引か。」
それを聞いたワシは正直に言うと、【ガルバトロズ】の機密など、興味がなかった。昇進についてもワシは宮仕えにも公家【貴族】の地位にも興味がない。【準男爵】の地位も、宮仕えや爵位を断るための方便によって出来たものだからな
「無用だ。ワシは宮仕えはする気はないし、貴族の地位にも興味がない。それに辞めたとはいえ、所属していた組織の機密を喋る奴は信用できんからな。」
それを聞いたサマノスケは困惑した表情でワシを見ていた。目先の利益や高い地位に昇りたい輩であったら、乗っかるかもしれぬが、ワシはそれほど軽い男ではないのでな。それにこのサマノスケという男、存外利口ではなさそうだな。常に表情を相手に悟られないようにするのだが・・・・
「話は変わるが、故郷へ帰ろうとは思わぬのか?」
それを聞いたサマノスケは、顔を曇らせ、黙りこくった。故郷に良い思い出がないのか?するとぼそっと一言・・・・
「私は故郷を捨てました。」
「故郷を捨てた?」
するとサマノスケは自分の過去を語り始めた
「ええ、私は立身出世を夢見て、故郷も許嫁も捨てました。」
「許嫁がおったのか。」
「えぇ、昔は兄妹のように育ち、いつか夫婦になろうと約束しましたが、私は立身出世の夢を諦めきれず、故郷を捨てました。」
「1つ聞きたいことがある。ユカリ・オリムラという女子と知り合いか?」
ワシはユカリの事をサマノスケに聞いた。サマノスケは顔が強張った
「やはり知っているのだな、どういう関係なんだ。まさかとは思うが・・・・」
「はい、そのまさかです。ユカリとは許嫁の間柄でした。」
ワシらはそれを聞いて合点がいった。ユカリの様子が変だった理由がかつての許嫁と再会してしまったことだったのか
「ユカリ殿に会わないのか?」
ワシがそう言うと、目線を合わせなかった。よほど聞いてほしくなさそうだな
「はぁ~、とりあえず移住の件だが、時をくれないか。よくよく考えたいから。返事は必ずするから。」
「・・・・よろしくお願いします。」
ワシらも、こんなグダグダな話し合いが終わり、ワシらは警備局へ出て、別れようとした瞬間・・・・
「フォフォフォ、これはこれは懐かしい顔に会えるとはのう。」
ワシらは声のした方向へ顔を向けると、そこにはユカリの祖父であるコタロウがいた。特にサマノスケはコタロウの姿を見て、ギョッとした表情をしていた
「コタロウ殿、どうしてここへ?」
「サコン殿に用が会って参ったのだが、まさかサマノスケが一緒とはのう。」
「・・・・お久し振りです、お師匠。」
「あぁ、久し振りじゃのう、サマノスケよ。」




