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63話:準男爵

島左近清興だ、ワシは地主としての仕事を紹介しよう。地主の仕事は領地(土地や建物等)の経営及び管理、税の徴収、王国に税を納める等は領主のような仕事である。ただし領主は地主と違い、公家【貴族】の爵位【公爵・侯爵・辺境伯・伯爵・子爵・男爵】を持っており、王国に仕えている。献金をすれば爵位は持てるがワシは宮仕えは御免なので献金しない方向でいくつもりだ


ワシはかつての主である石田治部少輔三成様が行ったまつりごとを敷こうと思い、掟書おきてがきを記し、一定の税率を定め、必要以上の税は取らず、何か要望があれば直訴も許可している。また飢饉や旱魃等が起きる可能性があるため、社倉を作り、穀物等を納めさせた。そのおかげか、ワシの治めている土地が繁栄していた。まあ開拓から1年間は税は免除、2年後は3割、3年後からは4割という仕組みだからな。次に河川に堤を設け、河川の氾濫を防ぐことに成功した。商いについても楽市・楽座を制定し、自由に商いができるようにした


「与一、町ができそうだな。」


「御意。」


「町長は誰がなるのであろうな。」


「左近様、現実から目を背けないでくださりませ。」


流れ的に行くと間違いなくワシだろうな。例の塩湖、後に【サコン塩湖】と名付けられたその塩湖で作られた塩【サコン湖塩】がシュバルツ王国及び他国に知れ渡った影響で、続々と移住者が増えて、やがて町が作られるようになった。ワシの下に町長就任の嘆願書が運ばれ、正直頭が痛い・・・・


「人々が言うておりますよ、塩湖町【サコン町】と・・・・」


「なぜ、ワシの名が・・・・」


「それは塩湖とその周辺の広大な土地を所有しているのは島左近清興様をおいて他にはおりませんからな。」


「左様か。」


「左近様、領地の経営に携わったのですから別に苦ではないでしょうに・・・・」


「別に苦ではない。ただこうも人が集まると何やら嫌な予感がする。」


「左近様、監視は厳重に行っております。何かあれば、すぐに知らせが・・・・」


「それもあるが、やはり公家【貴族】の動向も気になるな。」


「公家【貴族】にござりまするか?」


「塩の影響もあって、ワシらを無視できる状況ではないのは確かだ。」


「【お庭方】を使い、各地を探索させておりまする。」


ワシが治める土地や各地の情勢を調べるために【忍者】を雇い、忍びの組織【お庭方】を作った。ワシらの土地には湖から取れる塩がある。それを狙う輩、特に公家【貴族】がよからぬ事を企めば暗殺も辞さない方向ですすめた


「旦那様。」


「左近様。」


「ん、入れ。」


ワシらは話を終えると、窓から隠密が入ってきた。ワシらが雇った忍びの一人、黒髪短髪、黒目、身長は165cmほどの色白の優男、サスケである


「旦那様、シュバルツ王国の馬車がまっすぐこちらへ向かっております。」


「相分かった。下がってよい。」


「はっ。」


サスケが下がると、ワシは与一の方へ向き、王国の者の対応を話し合った


「シュバルツ王国からの使いの者が来るとは、一体何用であろう。」


「よからぬ事でなければよろしいが・・・」


ワシらは部屋で使者への対応について話し合っていると、外から馬のいななきが聞こえた。とうとう来たかとワシらは話し合いを辞めて、準備をした。準備をしていると、ふとドアの方から気配がした。ワシらは身構えていると、ドアからノック音がした。ワシが許可を出すと、入ってきたのはアリーナだった


「旦那様、お客様がお見えですが?」


「客?誰だ?」


「ルナ・キサラギという御方がお越しになられました。」


「客間へ通しなさい。」


「はい。」


アリーナが部屋から出るのを確認した後、与一と予てからの打ち合わせ通りにやることとした。ワシらはすぐに客間へ向かうと、ルナ・キサラギが先に長椅子ソファーに座り、ウルザが出した茶を飲んでいた


「お待たせして申し訳ない。」


「いいえ、こちらこそ突然押しかけてしまい、申し訳ありません。」


互いに謝罪を済ませ、ワシは長椅子ソファーに座り、アリーナとウルザを下がらせ、用件を聞いた


「ルナ殿、御用の趣は?」


「はい、サコン殿は爵位に興味はございますか?」


ルナの口から爵位の言葉が出た。ワシとしては貴族になるつもりも宮仕えには興味がなく、辞退する事にした。爵位を授けるという事は何か裏があると感じた


「爵位?ルナ殿、某は宮仕えをするつもりはないと申されたはず・・・・」


「勿論、知っております。」


「では・・・・」


「失礼ですがサコン殿はご自分の評判を御存知ですか?」


「いいえ。」


「サコン殿の【為政者】としての評判の高さは、シュバルツ王国中に知れ渡っております。それに新しい町の町長にはサコン殿をと、推す下々の者たちの嘆願の数々、まさに領主としての器量が貴方にあります!」


「それは買いかぶりにござる。某は武人として諸国を見聞し、それをこの土地にて生かしているのみにござる。」


「それでもなかなか実行できるものではありませぬ。」


とことんワシを煽てるルナにワシは一層、警戒を続けた。この女子は、なかなかの策士であり、ギルドで一杯食わされたからな


「不躾ながらお尋ねいたすが、何故、某に爵位などと。」


「・・・・流石に乗りませんか。」


腹の探り合いを辞めて、本題に入ることにした。それを聞いたルナは笑顔を辞め、真顔でワシに対応し始めた


「一体、何が目的でござるか?」


「貴方のためだと言えばよろしいですか?」


「某のため?」


「えぇ、貴方は塩湖を含め広大な土地を所有し、それを上手く御し、街まで作るほど発展している。王国は貴方の処遇をどうするべきか決めあぐねているのです。」


「・・・・派閥争いにござるか?」


「ええ、貴方に爵位を与え貴族にするべきか、それとも所領を取り上げるべきか。」


「ふ、フハハハハハハハ!これはこれは随分と物騒な事を仰せだ、だが恐れられるのは武人の誉れだ。」


「笑い事ではありません。現に貴方は爵位に興味がないと申されているのですから。」


「なれば某に考えがござるがよろしいか?」


ルナは姿勢を正して、ワシの考えに耳を傾けた


「どのようなお考えで?」


「畏れながら申し上げます。平民専用の爵位を創設すればよろしゅうござる。」


「平民専用の爵位?それはどのようなものですか?」


それを聞いたルナは頭を傾げ、内容を聞いてきた


「御意、特に功績のあった平民にのみ送られる称号で、貴族には属さないが、子々孫々まで送られる爵位、いわば名誉職のようなものにござる。」


日ノ本にはかつて准大臣という大臣に準ずる官職があり、大臣に欠員がない時に、その者を優遇するために臨時で置かれた官職である。また権大納言、権中納言といった定員外で置かれた官職も存在しており、ワシらがいた時代では格式はあるが、実質的に有名無実化しているのが実情である


「なるほど、貴族には属さないが、平民であっても功績があれば子々孫々にいたるまで受け継ぐことができる名誉のある爵位ですか。分かりました、陛下に言上いたします。」


「何分、よしなにお願い致す。」


ルナは早速、馬車に乗って王都へ帰還し、国王であるロバート・シュバルツに平民専用の爵位について報告した


「貴族には属さないが名誉ある称号は与えるか。上手いことを考えたものだ。さてと、そなたはどう想う。」


「ははっ!私は妙案かと存じます。」


「うむ、なれば新たに爵位の創設をしよう。」


「御意!」


その後、ロバート・シュバルツは新たな爵位【準男爵】を創設した。【準男爵】は功績のあった平民のみ送られる爵位で貴族には属さないが名誉ある称号として子々孫々にいたるまで受け継ぐことができるという仕組みにしたのである。【準男爵】の話を聞いた貴族たちは特に不満がなく、全員が賛成したのである。島左近の功績に危機感を抱くもの、嫉妬と妬みと羨望を抱くものがおり、此度の【準男爵】の創設によって沈静化したのである。その後、ルナは早速、左近の下へ参り、【準男爵】の爵位を授けた


「サコン・シマに【準男爵】の爵位を与えるものなり!」


「ははっ!有り難き幸せ!」


勅諚を読み終えたルナは「ふぅ~」と溜め息をつき、ワシの方へ向いて、話しかけた


「サコン殿、陛下は貴方の妙案に大変ご満足しております。貴族たちから不満の声が一切なく、沈静化に向かっております。おかげでシュバルツ王国の面目が守れました。」


「畏れ入ります。」


「おめでとうございます、左近様。」


「あぁ、ありがとう。」


その後、【準男爵】は功績のあった平民のための名誉ある称号として広く他国に知られるようになり、各国も倣って【準男爵】の爵位を創設したのであった

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