62話:落成式
島左近清興だ、此度ワシは正式に地主に就任した。地主に就任した後に、ワシが所有している土地に移住者が続々と増えていき、田畑が増え、住宅地等が建設された。勿論、ワシの方にも変化があった
「旦那様、皆様がお待ちしてますわ!」
「ああ。」
ワシはアリーナを妻に迎えたことだ。ワシは娼館【イザナミ】へ参り、ワシが地主になったことや、身請け(落籍)し、正式に妻として迎えたい事をアリーナに告白すると・・・・
「旦那、私でいいのかい?」
「ああ、ミリア殿からもそなたの事をよろしくと申しておった。」
「で、でも私は・・・・」
「それでもワシはそなたを妻に迎えたい。」
左近の真剣な眼差しにアリーナは覚悟を決めた面構えでワシを見据えた
「旦那、いえサコン様、末長くよろしくお願いいたします。」
かつてアリーナは元は公家【貴族】の令嬢だったが家が没落しここへ流れ着いた。今、ワシの前に見せたアリーナの姿はかつての令嬢の気品と立ち居振る舞い、今までよりも美しかった
「あぁ、こちらこそ、よろしく頼む」
その後、ワシとアリーナは結婚し、アリーナは【アリーナ・シマ】と名を変え、半年が経った
「私たちの新しい屋敷、楽しみですわね。」
「あぁ。」
ワシとアリーナは我が家となる新しく建築された屋敷へと向かうと、そこには既に人だかりができていた
「左近様、お待ちしておりました!」
与一が気付くと同時に一斉に群衆がこちらを振り向いた。その中にはベーカリーやユカリ、ウルザやロゼット、ユカリの祖父のコタロウ、娼館【イザナミ】主のミリア、ワシらが拠点とした宿の主であるレイク、ギルド長のオークラと受付嬢のビルデも含まれていた
「待たせてすまなんだ。」
「主様、貴方様が主役なんですから。」
「すまんすまん。」
ちなみに与一もウルザを身請け【落籍】し、ワシとアリーナと同様に結婚し、ウルザは【ウルザ・ソウマ】と名乗っている。与一はワシの屋敷の家令として召し抱えた
「いやあ、まさか本当になっちまうとはな!未だに信じられねえぜ!」
「半年も経つのに、信じられないのか?」
「冗談だよ、まぁ落成式に呼んでくれてありがとな。」
「主とは長い付き合いだからな。」
ベーカリーは何だかんだいって長い付き合いにある。ワシとしてはどうしても呼んでおきたかったのだ
「落成式にお招き感謝する。」
「フォフォフォ、ワシも呼んでくれてありがとな。」
「ユカリ殿とは長い付き合いだからな。コタロウ殿には世話になり申した。」
ユカリはベーカリーほどではないが付き合いがある、決闘を通じてお互いを知り、異性の朋輩として交流を深めた。コタロウ殿とはワシらが畑作りをする上で、師匠と呼べる御方であり、まさかユカリの祖父だとは思わなかったが・・・・
「サコンの旦那、もし良かったら私を妾にでも・・・・」
「ロゼット、本妻である私の前でいい度胸ですわね?」
「ははは・・・・」
ロゼットは相変わらずワシへの求婚を迫り、ワシの妻であるアリーナがそれを牽制する。相も変わらず懲りない女子よ・・・・
「サコンさん、うちのアリーナの事をよろしくお願いしますね。」
「お任せあれ。」
「アリーナ、幸せにね。」
「本当にありがとうございます(涙)」
「ほら、泣かないの、せっかくの美人が台無しよ。」
娼館【イザナミ】の主であるミリア・クリスマス、身請け金を支払った後、ミリア殿から「あの子の事を頼む」と懇願された。思い返せば、彼女がアリーナの親代わりともいえる存在であり、アリーナもミリア殿を母親代わりのように慕って居ったからな
「サコンさん、ヨイチさん、私も呼んでいただいて恐縮です。」
「レイク殿には世話になったからな。」
「こちらこそ、お世話になり申した。」
ワシらが拠点として寝泊まりしていた宿の主人であるレイク・ヒール、約10年の付き合いのあるし、世話になったからな、是非、落成式に参加してほしかった・・・・
「いやあ今日ほど天気が快晴なのは良い事ですな。」
「ワシもそう思う。」
「おめでとうございます、サコンさん!」
ギルド長のオークラ・ホールドと、受付嬢のビルデ・ブランド、まずオークラとは初めてワシと与一が【ガルバ町】に来た時からの付き合いで、レイク同様、長い付き合いになる。ビルデとはオークラほどではないが、それなりに付き合いがある。この二人にはいろいろと世話になった・・・・
「サコンさん、此度、落成式にご招待いただきありがとうございます。」
この御方は【ガルバ町】の町長であるゴルベリー・クラスト、ワシが地主になったのを機に向こうから接近してきたのである。まぁ、例の塩湖と広大な土地を所有する地主と誼を深めたいという思惑もあるのだろうと思いつつ、ワシ自身も【ガルバ町】の力が必要だったので誼を通じようと考えた
「いえいえ某は【ガルバ町】に大変世話になり申した。」
「そう言っていただけるだけ恐縮です。」
「左近様、もうそろそろ落成式が始まります!」
「相分かった。」
与一に呼ばれ、ワシは落成式の挨拶の準備をし、そして壇上にて挨拶と感謝を述べた
「ええ、ただいま紹介に預かりました。サコン・シマと申します。本日は御多忙の中、お集まりいただき、ありがとうございます。無事、屋敷が完成した事を皆々様にご披露する共に、御尽力いただいた皆々様に心より御礼申し上げます。こうして建物が完成でき、皆々様に挨拶ができること嬉しゅうございます。本日はありがとうございました!」
ワシが言い終わると、拍手喝采が送られた。そして新しい屋敷の御披露目となり、大工たちが屋敷中に張っている幕を下ろした
「「「「「オオオオオオ!」」」」」
ワシを含め多くの人が感嘆の声をあげた。南蛮風の様式を取り入れた煉瓦造りの屋敷がそびえ立っていた。すると大工の棟梁がワシに近づき、感想を聞いてきた
「どうですか、屋敷の方は?」
「あぁ、ワシには勿体ないほど優れておる!」
「そう言っていただけると作った甲斐があった!」
誠にワシには勿体ないほどの屋敷だ。ワシは大工の棟梁の案内で屋敷内に入ると、中はまさに南蛮風の様式と広々とした空間に満ちていた。ワシと共に着いてきた人たちも感嘆の声をあげた
「凄いな。」
「め、目眩がする。」
「ここにサコンの旦那が住むのね!」
ワシもこれほど立派な屋敷がワシの物になると思うと、ぞくぞくする。するとアリーナが遠くを見つめるように物思いにふけた表情をしていた
「アリーナ、如何した。」
「あ、いいえ。」
「この屋敷が気に入らなかったのか?」
「いいえ、ただ、昔を思い出してしまって・・・・」
アリーナはかつての自分を思い出していた。サコンと結婚する前、アリーナは貴族の令嬢だったが、家は没落し、娼館【イザナミ】へ流れ着いた
「アリーナ、ワシが生きている限り、決してそなたに不自由はさせぬつもりだ。」
「ありがとうございます、旦那様。」
その後、ワシらは購入した家具等を運んでいった後、外で宴を開いた。みんなワイワイと騒ぎつつ、ワシはアリーナと一緒にいた
「アリーナは、やはり貴族へ返り咲きたいか?」
「いいえ、貴族だった頃は礼儀やら何やらで窮屈生活でしたので、今さら貴族に戻りたいなんて考えた事はありません。」
「そうか。」
「私は旦那様と出会って良かったと思っています。」
「そうか。」
「旦那様が私の初めての相手で良かったと思います。」
「あぁ、そうであったな。」
「仕事柄、避妊は避けていましたが、今は違います。私は旦那様のお子が欲しいです!」
「アリーナ・・・・ワシもそなたとの子供が欲しい。」
「旦那様。」
「よお、御二人さん!」
ワシとアリーナは良い雰囲気になっていると、そこへ酔っぱらったベーカリーが割り込み、見事に雰囲気をぶち壊してくれた
「おうおう、御二人さん、そこに座ってないでこっちへ・・むぐっ!」
「空気読めや。」
「だからモテないのよ!あんたは!」
そこへ与一とウルザがベーカリーを力尽くでワシらから切り離した
「今は無理そうだな。」
「えぇ。」
その夜は騒がしくもワイワイとした雰囲気で宴が終わった




