61話:地主になる
島左近清興だ、ワシらは例の塩湖から塩を作り出すことができ、それを【ガルバ町】のギルドを通じて、販売した。例の塩湖で取れた塩とあって、物珍しさから住人が集まった
「さあ、湖から取れた塩でござる、御一同、召し上がられよ。」
「さあ、ご賞味くだされ!しょっぱさの中に甘みがあって、おいしゅうござる!」
ワシは慣れぬ商人の商いしていた。そばにいた与一が援護してくれたおかげで住人たちは塩の試食を受けてくれた
「うん、確かに塩だ!」
「確かに甘みがあってまろやかだわ!」
「遠慮はご無用でござる。試食されよ。」
ワシは笑顔で応対した。商人はいつも笑顔で応対するが、結構大変だな。ワシの表情の筋肉が慣れぬ笑顔作りに苦戦しつつも、何とかやり遂げようと頑張った。そのおかげか、塩が売れに売れ、ついに売り切れとなった。ワシらはギルドへ戻るとオークラとビルデが迎えた
「サコンさん、ヨイチさん、塩が完売ですよ!」
「まさか湖から塩が取れるなんて思いもしませんでした!」
「左様か、はあ~、疲れた。」
ワシは笑顔を辞め、はあ~と溜め息をついた。ずっと笑顔でいるのも大変だな、商人はいつもこうして商いをしているのかと思うと、敬服の念を抱くほかはない
「左近様、塩が売り切れましたぞ!」
「ああ。」
「サコンさん、大丈夫ですか。」
「ああ、慣れぬ商いに別の意味で疲れてな、ははは・・・・」
ワシがそういうと、オークラとビルデと与一は苦笑いを浮かべた。我ながら慣れぬ物に手を付けるとこれほど疲れるとは思わなった。与一がいなかったら、恐らく失敗しただろうと思った。するとビルデがワシに気を使ってか此度の成果を褒め続けた
「でも喜ばしい事ですよ!あの湖から塩が取れた事で厄介者の汚名を返上できたんですよ。それを成し遂げたのはサコンさんとヨイチさんのおかげですよ!」
「お世辞でも嬉しゅうござる。」
「それでは王国に開拓が成功した事をご報告いたしましょう!」
「ああ、是非頼む。」
早速、早馬が王都へと向かった。ワシらは売上金の1割をギルドへ献上し、残りの売上金を塩職人たちを山分けした。ワシらが一旦、宿へ戻ろうとすると・・・・
「おお、商人のサコン・シマさん、仕事帰りか?」
そこでベーカリーとバッタリ会った。奴はニタニタしながら近寄ってきた。これほど、うっとおしい奴に会うとは・・・・
「いやあ、お前の作り笑いでの商売、なかなかサマになってたぜ。」
「冷やかしにきたのか?」
「いやいやむしろ感心したんだよ、まさかあの厄介者の湖から塩が作られたんだ。恐らくシュバルツ王国で初の出来事だぜ!王国もきっと落ち着いちゃいられねえぜ。」
「まさか、あの塩湖を直轄地にしようと言うのか?」
「それは向こうの考えだろ、それにどうするか決めるのは国王陛下様しかいねだろ。」
ベーカリーの言い分にワシらは不安がよぎった。念のために証文をいただいたが、国王の一言で空証文になる可能性が高い。ワシとしてはそれだけは避けたい・・・・
「まあ、俺が言うのもなんだが、何とかなるんじゃねえか、開拓が成功した暁にはその土地を開拓した者の土地にするって国王陛下自身が言ったんだから、流石に取り上げるなんて考えないだろう。」
「そうだといいがな。」
「まあ、向こうの返事次第だな、邪魔したな。」
ベーカリーがそういうと、そのまま去り、ワシらの胸中には不安の二文字が残った
「左近様。」
「もし決まってしまったらワシらにはどうすることもできん。」
ワシは太閤秀吉公が行った関白豊臣秀次公の切腹及びその妻子らを処刑したことを思い出していた。我が主、石田治部少輔三成は何度もお諌めいたしたが、結局は処刑された。あの時の秀吉公は我が子であるお拾様(後の豊臣秀頼)に関白を継がせたいという我が子可愛さ野あまりに断行した。本来、武家の役割を子孫を多く残すことであり、家を存続させるためには数少ない身内を残すべきなのだが、元を正せば秀吉公は尾張中村の百姓の倅として生まれた。百姓の場合は食い扶持を稼ぐために余計に生まれた子を間引きする習慣がある。それが染み付いていたのかもしれん・・・・
「ワシらは元は武人だ。仮に取り上げられても、いつもように武人の仕事をするまでだ。」
「左近様・・・・」
その頃、王宮の国王の私室にて、国王であるロバート・シュバルツがある書類を目にしていた。例の塩湖とその周辺をサコンらが開拓に成功したとの報告書である。その書類を持ってきたのは内政官であるルナ・キサラギである。書類を見終わったロバートは溜め息をついた
「はあ~、さて如何いたすか。」
「例の塩を生み出す湖の事にございますか。」
「ああ、まさか湖から塩が作れるとは思わなかった。それを知っていれば、早くに専売していたのだがな。」
「ええ、今になって証文を差し上げたのが早計にございました。」
「まあ、あの者に任せても良いとワシは思っておる。キサラギ、そちはどうだ?」
「陛下の御威光のままに。」
それから一週間が経ち、ワシらは塩作りと畑作りに精を出していた。誠を申すと、気をまぎらわしたかった。一寸先は闇、やはり手塩にかけて作った土地を手放すのは、やはりつらいな・・・・
「サコンさん、塩ができました!」
「相分かった。」
ワシらはいつものように塩の味見をした。相変わらずしょっぱいが甘みのある味だ。この塩が我が物にできなくなると・・・・
「・・・こん、左近様!」
「ん!何だ与一。」
与一がワシを揺らしながら問い掛けた。どうやらワシは深く考えすぎていたらしく、与一の問い掛けに気付かなかったようだ
「如何した?」
「はっ!先ほど王都より使者がギルドへ参っております!」
それを聞いたワシはついにこの時が来たと確信した
「分かった、今参る。」
ワシらはそのままギルドへ真っ直ぐ向かった。ギルドには既に馬車あ到着しており、早足へ入ると、ギルド長のオークラと使者として赴いた内政官のルナ・キサラギが待っていた。向こうもワシらに気付いた
「御待たせして申し訳ござらん。」
「いいえ・・・・サコンさん、ヨイチさん、陛下よりの勅諚です!」
それを聞いてワシらは床に平伏した。するとルナは詔書を広げ、仰々しく宣言した
「此度開拓に成功せしこと、天晴れである。よってその土地を所有することを認める!なおサコン・シマを地主に就任する事も認める!」
「「ははっ!有り難き幸せ!」」
ワシらは御礼言上を述べると、ルナはワシらの方を向いた
「サコン殿、地主ご就任おめでとうございます。詔書を受け取られよ。」
「ははっ!」
ワシはルナの手から詔書を受け取ると、ルナがある事を聞いていた
「これは私の一存でお聞きしますが、サコンさんが証文を要求したのは、あの湖から塩が取れることご存じだったのですか?」
「畏れながら、たまたまそうなっただけにござる。」
「・・・・そうですか、では私はこれにてお暇いたします、では。」
一瞬だけ間があったが、ルナはそういう事にし、ワシらに別れの言葉を申した後、ギルドを出て、馬車に乗り王都へと帰還したのである。残されたワシらは改めて詔書を拝読し、文章と証印を確認した
「与一、どうやら誠のようだ。」
「左近様、おめでとうございます!」
「サコンさん、地主就任おめでとうございます!」
「ああ、ありがとう。」
与一とオークラがお祝いの言葉を述べた。ワシは二人に礼を述べた後、与一と共にガルバ町を出て、サキシマらがいる所へ向かった。サキシマらがワシらに気付き、出迎えた
「おかえりなさい、サコンさん。」
「うむ、サキシマ殿、ワシは正式にここの地主になった。」
「それは本当ですか!」
「ああ、自分でも信じられぬな。」
「おお、これはお祝いですな!サコンさん地主就任の!」
「ああ。」
その後、ワシらは【ガルバ町】にてワシの正式に地主就任祝いの宴が催された。どこからか噂を聞きつけ、知り合いらが駆け付け大盛り上がりし、翌朝、ワシらは二日酔い地獄になったのであった




