60話:塩作り
島左近清興だ、ワシらの開拓生活は少しずつ着実に進んでいた。鳥獣虫対策や、複数のため池や用水路を作り、畑に生えた芽も順調に育ち、作物は立派に実っていた
「うむ、我ながら、苦労した甲斐があったものだ。」
「左様ですな。」
「与一、ため池の方はどうだ。」
「はい、ため池の方は問題ないのですが・・・・」
「如何した?」
「ははっ!水量が減っていないような気が致します。」
「そういえばため池の水を欠かさず使っているが、減る気配がないな。大雨が降ったときも溢れ出るかと思いきや、前と同じ水量だったからな。」
実は左近たちがため池にやった水筒の水は、ため池の中で無限に産出され、いくら使っても元の分量に戻ったのである。また大雨が降っても水量は変わらず、ため池と用水路が氾濫が起きないように調整されていたのである。ふと左近らは水筒の水の力ではないかと勘繰り始めた
「まさかと思うが、この水筒の水が影響しているのか?」
「そうとしか考えられまへんな。」
「改めて裏飯という男が寄越した特典とやらは恐ろしいな。」
ワシらは手元にあった水筒をマジマジと注視していると気配を感じた
「あの~。」
「「ん。」」
ワシらは声のする方向へ振り向くと、とある一行がワシらの前に現れた。声をかけてきたのは白髪まみれの短髪をした初老の男が声をかけてきた
「もしかして、サコン・シマさんですか?」
「如何にも?」
「ああ、どうも。私どもはサコンさんの依頼で参った塩職人の棟梁のサキシマと申します。」
「おお、よう参られた。」
「お話しによると塩の味のする湖があると聞きましたが?」
「ああ、口で説明するよりも実際にみた方が早い。」
ワシが依頼した塩作りの職人がようやく到着したようだ。ワシらは塩湖へと案内すると、サキシマらは早速、塩湖に近づき、湖の水を口に含み、塩湖周辺の土地を調べ始め、サキシマらは驚いた表情をし、ワシらの下へ向かった
「サコンさん、塩田が出来上がっております!」
「え、それは誠か!」
「はい、私供も塩湖の存在は知っていましたが、海の塩と違い、既に天然の塩田が出来上がっています!」
「一応、聞くが塩作りは可能なのか?」
「はい、この塩湖は岩塩同様、自然の力で作られており、湖の水を煮詰めれば、塩を取り出すことができます!ただ塩作りに必要な資金と材料が必要ですが・・・・」
「左様か。勿論、金貨で支払う。」
「き、金貨にございますか!」
「ああ勿論、此度の開拓にシュバルツ王国が支援をしてくだされる。今は畑作りをしているが、湖の塩を作り、それを売って利益を増やし、農民だけではなく商人や職人を集めて、徐々にこの土地を変えていく所存だ。」
「変えるというとサコンさんは、領主になられるのですか?」
「いや、ワシは宮仕えをするつもりはないし、爵位にも興味はない。地主として活動していくつもりだ。」
「というと私たちが初の移住者ということになりますか?」
「うむ、まだ家屋といったものは出来ていないが、これから作っていくつもりだ。できるまではガルバ町に移住してもらいたいが、それでも良いか?」
「はい!サコンさん、ヨイチさん、これからもよろしくお願いします。」
その後に材料を購入し、湖水を鍋に注ぎ、火にかけて煮詰めていくと、段々と白い結晶が浮かんでいき、やがて水が無くなっていき、白い粉状の物体が鍋の片隅に集まっていった。火を避けて、冷めるまで待ち、スプーンで白い結晶を掬って皿に乗せた
「サコンさん、塩の完成です。」
「おお、これが湖で作られた塩か。」
試しに舐めてみると、しょっぱさの中に甘味があって食べやすかった
「うむ、確かに塩だ。」
「この塩があれば料理だけではなく保存食作りにも使えます。」
「よし、これを売って利益を上げていくぞ!」
左近たちは塩作りに精を出す一方、とある屋敷にて元勇者で現在は脱獄犯のチャブム・ブレスとコバヤシは牢屋の中で監禁生活を送っていた
「「うう。」」
牢屋の中は刑務所よりも酷く、トイレがなく窓もなく糞尿とゴミが散乱していたが、2人は生命力が強いのか、しぶとく生き残っていた
「俺たちこのまま野垂れ死にするのかな。」
「こんなことだったら刑務所の中で大人しくしてればよかった。」
「アイツら一体何なんだ、」
「例のブツと言ったが、まさか麻薬じゃねえのか。」
チャブムとコバヤシは荷卸しをしてミスで落とし、中身である例の物を出してしまい、そのまま監禁生活を送る羽目になった
「こうなりゃ、死んだふりをしてても脱出するぞ。」
「ん、おい誰か来るぞ。」
チャブムとコバヤシは死んだふりをしていると、そこへ複数の男が入ってきた。男たちは棒を持ってチャブムとコバヤシを突き始めり、叩き始めた。二人は息をひそめつつ、我慢し続けた
「死んだか?」
「おい、あんま長居すると疫病が流行るぞ。」
「おまけにくせえしよ。」
「おい、二人を死体安置所へ連れてくぞ。」
そういうと男たちは死んだふりをしたチャブムとコバヤシを担ぎ、死体安置所へ運ばれた。男たちは死体安置所の扉の鍵を開けて部屋に入り、二人を雑に置いた。痛いのを我慢し、死んだふりを続ける。男たちは死体安置所から出ていき、鍵をかけた。男たちが遠くへいなくなったのを確認し、二人は起き上がった
「はあ~、どうにか牢屋の中から脱出できたぞ。」
「しかしここが死体安置所か。」
二人は辺りを見渡すと窓以外、特になにもなく、死体安置所だから、他にも死体があるのかと思いきや、死体の一つもなかった
「ここへ運んでどうする気なんだ。」
「そりゃあ、火葬にするなり、土葬にするんじゃねえのか。」
「それよりも俺、腹減って死にそうだ。」
「あそこの窓から脱出できるんじゃねえか。」
チャブムとコバヤシは窓の方へ向かい、外を覗き込むと、高さは約5mほどあり、手すり等がなかった
「高いな。」
「おい、どうする、まさかここから飛び降りろって言うんじゃねえだろうな。」
「じゃあ、どうするんだ。」
「こうなったら一かばちかだ。」
「おい。」
そういうとチャブムは勇気なのか無謀なのかは知らないが、飛び降りた。チャブムは五点着地を断行しようとした。飛び降りつつ、頭と顎に注意しつつ、足から着地しようとした
「ギャアアア!」
何とか足から着地に成功したが、足自体に多大なダメージにより重傷を負い、複雑骨折し、悲鳴を上げて、その場で倒れ混んでしまった
「あぁ、あのバカ。」
「おい、何だ今の悲鳴は!」
「こっちからだぞ!」
そういうと黒服の男たちが駆けつけ、複雑骨折して地面に倒れこんでいるチャブムを見つけた
「こいつ、生きていたのか。」
「おい、あそこに仲間がいるぞ!」
「し、しまった。」
その後、チャブムとコバヤシは再び奴らに捕まった。チャブムとコバヤシの生命力の強さに興味を抱いたのはこの屋敷のボスであった
「なかなかしぶといな。」
「ボス、この2人を使って実験してみませんか?」
「ふむ、ちょうどいいな。新しい薬の実験台にでもなってもらうか♪」
チャブムとコバヤシは手足と胴体を固定され、そこに複数の男が2人を養豚場の豚を見る目で注視した
「グスっ、い、いてええよ。」
「離せ!離さんか!」
「光栄に思いたまえ、君たちは【ガルバトロズ】の事業のための礎になるのだ。」
「が、ガルバトロズだと!」
コバヤシはあの名声もあり悪名高い【ガルバトロズ】の名を聞いて震えだした
「ほぉ、我等を知っているようだな。まぁ、いい。どっちみち始めるがね。」
「ま、待ってくれ!逃げ出したのは謝るから・・・・」
「大丈夫だ。すぐに楽になるから♪」
「や、辞めろ!ヤメロオオオオオオオ!」
コバヤシの悲鳴は虚しく響き渡るのみであった




