56話:W勇者、幽閉される
島左近清興だ、ワシらは元勇者であるチャブム・ブレスとコバヤシの手配書を見ながら溜め息を付いていた
「「はあ~。」」
「なんだなんだ大の男が二人して溜め息なんてよ。」
背後からベーカリーの呆れた声で絡まれたが、ワシらは答えるのも億劫になる。そんなワシらの様子にベーカリーは・・・・
「返事する気力もねえのかい、仕方がねえだろ、あいつら勝手に脱獄したんだからよ。それにさ考えてもみろよ、こいつらが脱獄した事で多額の懸賞金がついてるんだぜ、二人捕まても、殺しても多額の懸賞金も手に入るんだしチャンスじゃねえか!」
「主は気楽で良いのう。」
「お前らもさ、あいつらを金のなる木だと思えばいいんだよ、そうじゃねえのか。」
「はぁ~、そうだな。まさかお主に励まされるとはな。」
「勘違いすんな、今のお前らを見てると張り合いが感じられねえんだよ。」
「ふっ、そういうことにするわ。与一、あの2人をどうやって始末するか。」
「もう二度と関わらないように細切れにいたしましょう!」
「おいおい、そんなにガチにならなくても・・・・」
ワシらは脱獄犯であるチャブム・ブレスとコバヤシの首を取るという事で一致した。そう考えたら、どう料理するか思案するワシらにベーカリーは若干引いていた。一方、その頃、脱獄したチャブムとコバヤシはとうと・・・・
「くそ、やはり手配書が出たか。」
「おいおい、どうすんだよ、これから。」
「知るか!」
変装用に奪った旅人のマントを羽織り、人気のない場所で手配書を見るチャブムとコバヤシ、二人はそれぞれの望みをかなえる前にどうやって生活していくか悩んでいた
「これじゃあ、サコンさんに会うまでに野垂れ死にするよ。」
「何ほざいてるんだ!脱獄しようと言ってきたのはお前じゃねえか!今さらびくびくしてもしゃあねえだろ!」
「何だと!そういうお前だっていい年して若い女の尻を追っかけるだけのオヤジじゃねえか!」
「何だと!このクソガキ!」
「「ぐうううううううう。」」
二人は言い争いをしている内に腹の虫が鳴った。ここ最近、雑草と水だけしか食べていないので空腹である。二人は腹の虫によって正気に戻り、まず腹ごしらえの方が先だと感じた
「これからどうすんだよ。」
「どうするって。」
「おやおや、お困りのようですね。」
チャブムとコバヤシは声をした方へ振り向くと、一人の中年の男が立っていた。二人は男に警戒しつつ、尋ねた
「誰だ、お前は!」
「まあまあ、そう警戒しないでください、もし宜しかったらご飯を奢りますよ。」
「ええっ!いいのか!」
「おい、信用していいのか。」
「じゃあ、あんたは野垂れ死にしてろ、おっさん。」
「くっ!分かった!」
「さあこちらへ。」
普通なら警戒するのだが、空腹には勝てずついていくことにした。すると先程よりも人気のない場所に案内され、流石に不味いと思ったチャブムとコバヤシは・・・・
「やっぱり遠慮する。」
「どうして?」
「いやあ、やはり知らない者についていくはちょっと・・・・」
「何を言ってるんですか、せっかくの賞金首を逃すと思ってんのか?」
中年の男がそう言うと、背後から男の仲間が武器を持って取り囲んだ。チャブムとコバヤシはまんまと罠にはまり、着いていったことを後悔した
「飛んで火に入る夏の虫てか、お前らを捕まえるか殺しちまえば、賞金が手に入るんだ。」
「俺たちも生活がかかってんだ!悪く思うな!」
チャブムとコバヤシはどうやってこの場を切り出すか考えたがすぐには思い付かず、途方に暮れていた
「お前ら、やっちまえ!」
男たちが一斉に襲い掛かると、2人はやけくそになり、見た目が弱そうな男に突進した。男は自分に突撃するとは思っておらず、思わず身構えてしまい、そのまま2人は男を通りすぎていく
「「オリャアアアアアア!」」
「ヒイイイ。」
「馬鹿野郎!何、通してんだ!」
チャブムとコバヤシの背後で仲間を怒鳴り声が響く。2人は狭い路地へ逃げ込み、ゴミ箱に隠れた
「くそ、奴等、どこへ行ったんだ!」
「探せ!まだ遠くには行ってないはずだ!」
男たちは2人の隠れるゴミ箱を通りすぎていった。2人はゴミ箱の蓋を少し開けて、外を確認するといないことを確認し、ゴミ箱から出た
「やっと行ったか。」
「おい、クソガキ。お前がノコノコと奴らの誘いに乗ったからこんなことになったんだぞ!」
「ああ!お前だってノコノコついてきたんだろうが、オッサン!」
「何を!」
「おい、こっちから声が聞こえたぞ!」
「くそ、逃げるぞ!」
「ちっ!」
二人は元来た道を引き返し、人混みに紛れた。奴らは人混みに紛れた二人を見失った
「くそ!」
人混みにまぎれたチャブムとコバヤシは何とか追手を撒きつつ、人々の懐から財布を抜き取った
「ふう、何とか撒いたな。」
「おまけに財布も手に入れたしな。」
チャブムとコバヤシは生き延びるためにスリをしながら生活をしていた。財布の中身を調べると、銅貨しか入っていなかった
「けっ!しけてやがる。」
「それよりも飯だ。」
「ああ、とりあえず何か買うか。」
チャブムとコバヤシは腹を満たせるのを探すと、パンの耳しか買えなかった。二人はとりあえずマトモな飯にありつけた
「パンの耳か、刑務所の飯の方がましだな。」
「雑草よりはマシだろ。いらないなら全部食うぞ。」
「誰も食わないとは言ってないだろ。」
二人はパンの耳を分け合っていると、警備隊が通り過ぎていった。二人はびくっとしつつもパンの耳を食べ続けた
「何だか警備隊の様子が変だな。」
「何でも連続でスリにあったんだとさ。」
「警備隊は怪しい奴を見つけてとことん警備局へ連れてくんだとよ。」
「くわばらくわばら。」
それを聞いた二人は長居は無用と感じ、その場を去った。二人は藁を乗せた馬車を見つけ、そこへ隠れた。馬車が動き出し、門の前に到着すると門番が駆け付けた
「中身を改める。」
すると門番が棒を持って藁の中を突いた。二人は端に寄り、棒にぶつからないようにした。中身を確認した後、門番は棒を引っ込めた
「よし通ってよし。」
門番の許しを得て、馬車が動き始めた。馬車に揺られ、二人は少しばかり乗り物酔いをした
「「(気持ち悪い)」」
二人は馬車から脱出し、見えない所で嘔吐した。パンの耳が少し残っており、二人は少しばかり後悔した
「はあ~、いつまでこんな生活をしていればいいんだよ。」
「だったら出頭すればいいじゃねえか、オッサン。」
「何だと!元を正せばお前が・・・・」
「辞めてくれ、もう何度このやり取りをしたか。」
「くそ!」
二人は何もない平原に途方に暮れていると、西の方向から一台の馬車を見かけた。二人はとりあえずあの馬車に助けを求めようと決めた
「おーい!」
「来てくれ!」
すると馬車は二人に気付き、二人のいる方向へと移動し、向かってきた。二人は手を振りながら、馬車を迎えた
「何か用か?」
「ああ、実は道に迷ってしまって難儀をしているんだ。」
「そうか、だったら俺と一緒に行くか?」
「いいのか!」
「ああ、乗ってきな。」
「ありがてえ。」
二人は馬車に乗り、男のいう場所へ向かった。馬車に揺られながら道中、男から疑いの目をむけられることなく、ゆっくりと過ごした。ふと荷物を目にすると中身が何なのか気になったが辞めておくことにした
「この馬車に乗って正解だったな。」
「ああ、しかしどこへ行くんだ、この馬車。」
「おい、到着するぞ。」
ふと二人は目的地を見た。そこは豪邸といえるほど立派な建物であり、何人もの兵士が駐在していた。それを見た二人は内心、後悔しはじめた
「「(おいおい、もしかしてどこぞの貴族の屋敷か。)」」
二人は警戒しつつ、屋敷に到着した。一人の兵士が男から許可証を求めると、男は許可証と一通の紙を手渡した。それを見た兵士は入場の許可を出すと馬車はその屋敷へ入った
「二人とも、荷物を下ろすから手伝ってくれ。」
「「ああ。」」
チャブムとコバヤシは男に従い、荷物を下ろし始めた。するとコバヤシが手を滑らせて荷物を落としてしまい、物が出てしまった
「馬鹿野郎、何やってるんだ!」
「ぶひっ!」
男は激怒し、コバヤシを殴った。男は急いで物をしまった。しまった後、男はチャブムとコバヤシを睨み付け・・・・
「お前ら、見てはいけないものを見ちまったな。」
「「え。」」
するとどこからか黒服の男たちが現れ、二人を取り押さえた。チャブムとコバヤシは突然の事に驚き、抵抗し始めたが、多勢に無勢、力尽くで取り押さえられた
「な、何するんだ。」
「物を見てしまった以上、お前らを逃すわけにはいかねえ。」
「ま、待ってくれ!」
「おい、こいつらを牢屋に入れろ!」
「おい、待ってくれ!離してくれ!」
チャブムとコバヤシはそのまま牢屋に入れられ、監禁生活を送る羽目になったのであった




