53話:とある村の消失
島左近清興だ、ワシらは朝餉を済ませ、馬車を走らせていた。道中、特に問題はなく丑寅の方角へ向かっていると、とある村に差し掛かった
「左近様、前方に村がありますな。」
「丁度よい、あそこで食糧の確保をしよう。」
ワシらは村の前に到着し、馬車を止めた。すると村人が続々と馬車の前に集まってきた
「左近様、村人が集まってきましたな。」
「面倒な事にならねばよいが。」
ワシらは警戒すると、村長らしき男が近寄ってきた
「いやいや旅の御方がこの【コパン村】を訪れるとは。申し遅れました私はこの村の長を務めるヒサラギと申します。」
「左様か、我等は王都へ向かうために旅をしているところだ。」
「そうでしたか、どうですか?この村で1泊されては?」
ワシはその言葉を聞いた途端、何やら違和感を覚えた。朝早く出発したのになぜ1泊せねばならぬのだ。与一も気付いたのか手裏剣を出し、いつでも攻撃できる態勢を整えた。ここで食糧の確保を諦める他ない
「せっかくの申し出だが我等はすぐにでも王都へ行かねばならぬ。」
「いやいや遠慮しないでくだされ、村一同、心を込めておもてなし致します!」
ワシらが去ると言った瞬間、村長は何やら焦っているような感じでワシらを引き留めようとした。村人たちもソワソワしていて何かあると直感した
「村長殿、なぜ我等を引き留めようとする?我等が去られては困ることでもおありか?」
「な、何のことにございますか?」
ワシは手元から朱槍(短槍)を出現させ、村長の顔に突き付けた。村長は槍を突きつけられ、恐怖で後退りした
「ヒイイイ。」
「動くな、与一、村長を捕らえろ。」
「はっ!」
「こ、この。」
「おっと。」
「うわっ。」
与一が村長を捕らえようとしたところ、村人の1人が仕掛けようとしたところ、与一が手裏剣を投げ、村人の足元寸前の地面に刺さり、村人は勢いあまって転んだ。その隙に与一は村長を捕らえ、首筋に苦無を突き付ける
「みんな、動くな!」
村長も自分の置かれている立場を理解したのか、村人を止めた。村人たちも村長を人質に捕られていることから村人は手出しできなかった
「さて村長、村を出ていくまで我等と共にいてもらおうか。」
「くっ。」
「お前たちも妙な事をしなければ村長を返してやる、道を開けろ!」
「ゆ、ゆうとおりにするんだ。」
与一が村長と村人たちを脅し、村長もそれに従うよう宣告すると、村人たちは道を開けた。与一は村長を人質にしたまま馬車に乗った。ワシらは周囲を警戒しつつ、馬車を走らせた。村人は一切手を出さず、我等を通した。ワシらは村の出口へ行く前に村長に目的を聞いた
「なぜ我等を足止めする。」
「くっ、決まっている。お前たちの持っている荷物を奪うためだ。」
「他の旅人にも同じことをしたのか。」
「そうさ、ワシたちは畑や家畜を育てるにも限度がある。ワシらのような貧しい村は旅人から物を盗まねば生きていけぬわ!」
「それは残念だったな、次からは相手を選ぶことだな。」
村の出口に到着しかけたところ、前方から気配を感じた。与一は手裏剣を構え、気配のする方向へ投げた
「ぎゃ!」
「ぐあ。」
待ち伏せをしていたのか村人が武器を構えていると、与一が投げた手裏剣が手に刺さり、武器を落とした
「村長よ、ここの村人は随分と物分かりが良くないようだな。」
「くっ。」
「主等は約束を破った。村長には死んでもらうぞ。」
「ま、待ってくれ!」
「ワシは手を出すなと忠告したはずだ。妙な事をしなければ命だけは助けてやるとな。だが村人は武器を構え、待ち伏せをしていた。」
「そ、それは。」
「覚悟せよ。」
「ヒイイイ!」
「ま、待ってくれ!」
すると手裏剣を食らい、負傷した村人が土下座をした
「勝手な事をしたのは謝る、どうか村長の命だけは!」
「お願いでございます!」
「散々、旅人を襲っておいて何をほざくか!」
村人たちの命乞いに与一は怒りを爆発させた。ワシは村長を人質に捕りつつ、村人を注視した
「はぁ~、今回だけは目を瞑ってやる。」
「あ、ありがとうございます!」
「2度目はないと思え。」
「はい!」
ワシらは村の出口を出てから、遠すぎず近すぎない距離で村長を解放した
「村長よ、ここで解放してやる。」
「あ、ありがとうございます!」
「もう2度と旅人を襲って物を奪わないことを誓えるか?」
「はい、誓います!」
「そうか、ならば良し。」
村長を解放した後、ワシらは馬車を走らせた。その道中、ワシらはというと・・・・
「与一、先程の会話、録音できたか。」
「ははっ!これに!」
与一が手元に用意したのは転生忍具の1つ、追跡用の動物(九官鳥)だった。実はワシと村長のやり取りをこの九官鳥に聞かせており、確認のため、九官鳥に今までの事を聞くと、九官鳥はワシと村長と瓜二つの声で今までのやり取りを一言違わず話したのである
「うむ、完璧だな。」
「これを報告すればあの村は終わりですな。」
「あぁ。同情すべきところはあるが、旅人を襲い物を盗んだ罪は消えぬ。懲りずにまた同じ過ちを仕出かすであろう。」
ワシらはそのまま先へ進む。濃霧、元勇者セイヤの乱心、山賊、そして先程の村の襲撃等、多くの妨害があったが、何とか献上品(瑪瑙)を守りきることができた。そして目的の地である王都が見えたのである
「左近様、王都が見えました!」
「あぁ、そうだな。」
ワシらは王都の入り口へたどり着き、門番に献上品を届けに来たことを報告すると、入場を許可され、王都へ入ることができた
「左近様、相変わらず王都は栄えておりまするな。」
「あぁ。」
ワシらは真っ直ぐ王宮へ向かい、王宮付近の兵士に献上品を届けに来たことを伝えると、1人の兵士が献上品を確認し、そのまま王宮へ向かった。ワシらは待っていると、そこへ大臣が現れた
「此度は大儀であった。」
「ははっ!畏れながら申し上げたき事が2つございます。」
「何じゃ?」
「ははっ!まず1つは我等と共に献上品の護衛の任務に付いていた勇者セイヤ率いる勇者パーティーが任務を放棄したことにございます。」
「そうか、もう1つは?」
「もう1つは我等が道中、通りかかった【コパン村】という村で村人全員に献上品を狙われましてございます。」
「な、何だと!」
「ははっ!これがその証拠にございます!与一!」
「ははっ!」
与一は忍具「追跡用の動物(九官鳥)」を出し、ワシと村長の会話のやり取りを大臣に聞かせた。それを聞いた大臣は・・・・
「しばし、ここで待て!」
「「ははっ!」」
大臣がそそくさと王宮へ向かい、我等は待っていると大臣が駆けつけた
「陛下が面会を許すと仰せだ!私と共に参れ!」
「「ははっ!」」
ワシらは王宮へ案内された。相変わらず南蛮風と言うべき豪華絢爛さが際立っており、国王ロバート・シュバルツのいる部屋に到着した
「しばしここで待て。」
大臣が先に部屋へ入り、少し時が経ってから大臣から入室の許可が降りた。するとそこには仮面をつけた国王ロバート・シュバルツがおり、我等は平伏した
「陛下に先程の事を報告せよ。」
「ははっ!」
ワシらは九官鳥を使い、ワシと村長のやり取りを直接、国王に聞かせた。仮面を着けており、表情は分からないが、手が震えており、殺気だっていた。すると国王は大臣を手招きし、耳打ちした後、ワシらの方を向いた
「報告ご苦労、此度は大儀であった。下がってよい!」
「「ははっ!」」
ワシらは部屋を退出した後、国王ロバート・シュバルツは仮面を外すと憤怒の形相をしていた
「おのれ、献上品を狙うとは何たる不届きものたちじゃ!」
「如何致しますか?」
「決まっておろう!村を潰せ!誰1人逃すな!」
「ははっ!」
国王はすぐに騎兵500人を派遣し、全速力で【コパン村】へ向かい、ようやく【コパン村】へ到着すると村長であるヒサラギと村人は突然騎兵が尋ねて来たことに驚きつつ、迎えた
「これはこれは如何為さったのですか。」
「本日、参ったのは旅人を襲い、物を盗む貴様らを全員を捕らえるためだ。」
「な、何の事やら。」
「これは国王陛下からの命でもある、もはや言い逃れはできんぞ。」
「に、逃げろ!」
それを聞いた村長と村人たちは青ざめ、一目散に逃げ始めた
「逃がすな!抵抗がいれば者は切り捨てよ!」
騎兵が村へ突入し村長及び村人は捕らえられた。中には抵抗した者もおり村長と村人の前で首を切られた
「お、おしまいだ。」
村長と村人はその場で観念したのである。調べた結果、旅人の荷物が大量に飾られており、大量の骸や人骨も見つかった。これにより村長及び村人全員は裁判をかけられずに死刑を言い渡され、【コパン村】は地図から消えたのであった




