52話:テント
島左近清興だ、ワシは今、元勇者セイヤを成敗したところだ。まさかワシと与一の他にも転生した者が現れたことにワシらは内心、驚いていた
「まさか、ワシらの他にもいたとはな。」
「とんだ碌でなしではございますが。それでこやつ如何致します?」
「獣の餌になっても良いが、他の旅人に迷惑がかかるからな。荼毘に付そう。」
ワシらは元勇者セイヤの骸を回収し、森から離れた場所へ移動し、大きな穴に入れて、そこに油や枯れ葉や木々や獣避けの袋と骨をも溶かす薬等を入れて燃やした。セイヤの骸は勢いよく燃えており、獣避けの薬も入れていたので、熊や猪や山犬等の獣は近寄っては来ない。死体が焼ける臭いが鼻に付く。火が弱まると共に骨も燃えて無くなった。ワシらはそれを確認した後に馬車に乗り、出発した
「時を無駄にしてしまった。」
「とことんあの勇者パーティーに邪魔されましたな。」
「霧が出てくる前に何としても森を出なければな。」
馬車を走らせると、途中で猪に遭遇した。それも大型の猪だ。ワシらは武器を構えると、猪は鼻を動かした途端、一目散に逃げていった
「逃げていったな。」
「左近様、我等に獣避けの臭いが染み付いているのでは?」
「臭いか、だったら、この馬も反応すると思うが?」
「あの薬自体、熊や猪や山犬といった獣に効果がありますからな。まあ例外もあるのでしょう。」
「左様か。」
ワシらは馬車を走らせた。羅針盤に従いながら進み、ようやく森を抜け出すことができた。すっかり空は夕焼けになり、これは野宿するしかなくなった
「今夜は野宿だな。」
「では野営の準備をいたしましょう。」
「そうだな、そうじゃ、この間、購入したテントとやらを作るか。」
ワシらは馬車に降りて、まずテントを作った。ワシらがいた現世にはテントはなく、基本は陣幕を張り、そこで野宿したり、民家や寺や神社等で寝泊まりしていた。ワシらは任務の途中でこのテントと出会い、自分達で組み立てて、寝床を作る技術にワシは感嘆し、それを購入した
「この異世界は我等がいた戦国の世とは違って、文明が進んでおりまするな。」
「あぁ、いかに我等が生まれた現世は無駄が多すぎた。」
ワシらがいた日ノ本が以下に遅れを取っていたのか、分かる気がする。今さら日ノ本の事を考えても仕方がないが・・・・
「出来上がりましたな。」
「うん、立派な幕舎だな。」
大人4~5人は入れるほどの大型のテントがそびえ立つ。ワシらは荷物を置いた後、火を焚き、そこに味噌汁用の鍋と水筒と味噌を用意し味噌汁を作り始めた。そこに町で購入した干し肉や塩漬け肉等を出し、串に刺して火にくべた。干し肉の匂いが鼻を誘い、腹の虫がなった
「いい匂いですな。」
「腹が減ったな。」
丁度よく干し肉と塩漬け肉が焼き上がり、味噌汁も出来上がった。ワシらは早速、出来上がった干し肉と塩漬け肉にかじり付いた。干し肉の香ばしさにワシらは満足したが、塩漬け肉はしょっぱく、疲れが一気に吹っ飛んだ心地だ
「干し肉は美味いですが、塩漬け肉の方はしょっぱいですな。」
「おかげで旅の疲れが吹っ飛んだ。」
「味噌汁も丁度良いですな。」
「あぁ、余計な奴が紛れ込まればな。」
「左様ですな。」
ワシらは気配を感じ、振り替えると、そこには8人の山賊が立っていた。勿論、武器持ちで、中には弓矢を構えている輩が2人ほどもいた
「おい、食糧と金を寄越しな、そうすれば命だけは助けてやる!」
山賊の頭目らしき男が下卑た笑みを浮かべ、食糧と金を要求した。やれやれ、せっかくの夕餉が台無しになったと左近も与一の溜め息をついた
「「はあ~。」」
「はっ!何の溜め息だ!」
「煩いハエがわざわざ飛び込んできたのかとな。」
「何だと!構わねえ!射殺してやれ!」
それを聞いた山賊たちは激高し、2人の山賊が弓矢を構え、ワシらを射殺そうとした。すると与一が煙玉を出し、辺り一面が白煙を覆った
「くそ!何をしてる!早く撃て!」
弓矢を構えた二人の山賊は白煙でも発射したが、手ごたえがなく、途方に暮れていると、沢山の手裏剣が山賊たちに目掛けて発射され、山賊たちに全て命中した
「ぎゃあ!」
「ぐああ!」
2人が脳転に突き刺さり、その場で死亡。残りの6人も負傷したところ、与一が弩を構え、弓矢持ちの山賊2人をその場で射殺した
「ぐふ!」
「があ!」
弓矢持ちの山賊2人が死亡し、残ったのは4人、勝ち目がないと悟り、その場から去ろうとした瞬間、左近が朱槍(長槍)を出現させ、撓りを利かせ、長槍の柄が一人の山賊に直撃し、吹き飛んだ
「ガアアアアアアア!」
山賊のあばら骨がバキバキに折れて、それが肺に直撃した。更に直撃を受けた山賊が他の3人の山賊にぶつかり、全員その場で吹き飛ばされた。長槍を受けた山賊は白目を剥き、口から泡を吹いていたところ、左近がとどめを刺し、死亡した。残りの山賊たちはぶつかった衝撃で足を骨折し、その場で動けずにいた。そこへ左近と与一が近寄ると、3人は一斉に命乞いをした
「た、たすけてくれ!」
「か、金と食糧はいらねえ!」
「だ、だから!」
「与一、始末せい。」
「はっ!」
与一は手裏剣を出現させ、残りの山賊の脳天目掛け、発射し、3人とも脳天に直撃し死亡した。全員が死亡したのを確認し、焚火の下へ向かうと、焼いた肉と味噌汁は冷めており、串に刺した肉は黒焦げになっていた
「はあ~、せっかくの夕餉が・・・・」
「乾パンと金平糖で我慢するか。」
ワシらは乾パンと金平糖と冷めた残りの肉と味噌汁を味わいつつ、夕餉を終わらせた。山賊の躯を一か所に集め、再び荼毘に付した。元勇者セイヤと同じように獣避けと骨を溶かす薬を混ぜて、燃やした
「これで獣避けもできますな。」
「夕餉を台無しにしてくれたんだ、これくらい役に立ってもらわねばのう。」
ワシらは山賊の躯が燃える様を眺めつつ、火が消えるのを待っていた。遠くから山犬の遠吠えが聞こえつつ、交代で睡眠を取りながら、周辺を警戒し続けた。その後、特に問題はなく、朝を迎え、ワシらは起床した
「おはようございます、左近様。」
「うん、おはよう、さて朝餉にするか・・・・ん?」
ワシらはテントから出て、朝餉の用意をしようと、そこに野兎2頭を見つけた
「与一、朝餉は兎肉にするぞ。」
「御意。」
与一は弩を構え、まず1頭目に向けて、発射し、見事野兎に命中した。驚いたもう一頭の野兎も逃げ出そうとすると、ワシは手裏剣を投げて、その場で野兎を仕留めた
「二兎を追う者は一兎をも得ずという言葉があるが、ワシらは二兎纏めて仕留めたな。」
「我等は2人ですからな。」
「違いない。」
ワシらは、2頭の野兎を捕獲し、その場で解体した。内臓を取り除き、皮を剥がした後に食える部位を串に刺した。火を焚き、網を敷きながら、兎肉を串焼きにし、ワシらは兎の血で汚れた手を石鹸で洗い、手拭いで吹いた後、味噌汁も一緒に作った。兎肉と味噌汁ができるのを待っている間、ワシらは周囲を警戒しつつ、少しでも腹を満たすため、乾パンと金平糖を噛りながら、待っていた
「左近様、兎肉が丁度よい焼き具合になりました。」
「いや、もう少し待とう。」
ワシらは少しだけ待ち、兎肉がこんがりと焼き上がった瞬間、串焼きを回収し、そこには塩胡椒を振りかけ、その場で食らった
「うむ、いつ食べても兎肉はよい!」
「あっさりしてて、塩胡椒の味も良いですな!」
ワシらは串焼きにした兎肉を噛りつつ、出来上がった味噌汁を一緒に飲んだ。五臓六腑に染み渡る・・・・
「さて羅針盤の確認をせねばな。」
ワシは羅針盤を出して、王都への道のりを確かめた
「うむ、次は丑寅の方角か。」
丑寅、すなわち北東を指しており、古くから神霊や鬼が訪れる方向として現世では鬼門とされているが、この世界では全く意味がないので、別に気にしない
「さて腹ごしらえも済んだし、早速出発するか。」
「左近様、その前に用を足しましょう。」
「それもそうだな。」
ワシらは用を済まし、焚き火を消し、荷物を無限収納箱に入れた後、馬車を動かし王都へと進んだ




