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51話:転生者

島左近清興だ、ワシと与一と元勇者パーティーの一員だったオニールと共に偶然立ち寄った【トキワ町】へ引き返し、何とか宿を見つけた後、献上品は貸倉庫に預けた。宿で履物を脱いでいると、そこへ宿の主に話しかけられた


「あんたら、濃霧に困ってここに来たのかい?」


「そうだが。」


「あんたらは運がいいよ、今月から霧が濃くなるんだ。それに霧に紛れて獣たちが人を襲う時期でもあるから、地元の者でも近寄らないんだよ。」


「左様か。」


「そうか。」


宿の主の話を聞いたオニールは無関心だった。最後は喧嘩別れで勇者パーティーから除名されたが、離れて良かったと本人も申しておったし、あの者たちはその程度の存在でしかなかったのだろうな。ワシらは部屋を別々にし、ワシと与一は同じ部屋に入った


「左近様、あの者たちは大丈夫なのでしょうか。」


「さあな、もしその場で死ねば、それまでの人生だったと諦める他あるまいて。」


「そういえばあの男は仲間の事を心配しているそぶりは見せませんでしたな。」


「あの者たちに内心うんざりしておったのだろう。ワシもあの勇者と女子たちを見て、そう思うたわ。」


「不躾ながら左近様、貸倉庫の証明書は?」


「あぁ、ちゃんと無限収納箱に入れてある。」


「それはよう御座いました。あの者が献上品を持って逃亡する可能性を未然に防ぐ事が出来ましたな。」


「その前に任務放棄で逃亡するかもしれんな。」


「まぁ、いてもいなくても変わりはありませんからな。」


ワシらは宿へ寝泊まりし明日、霧が晴れるのを待ちながら一夜を過ごした。一方、勇者たちはというと、勇者セイヤは右頬に熊の引っ掻き傷による激痛に悶絶していた。レベッカとミサラはセイヤの暴言に怒り、羅針盤を持って、セイヤを置いていったのである


「くそが!!なんで俺がこんな目に!せっかく異世界転生してハーレムを作ったってのによ!」


勇者セイヤは実は転生者であり、現世ではかなりのイケメンだが女遊びが大好きなプレイボーイで、女遊びが災いし、交際相手にナイフで刺されて死亡したが、女神に拾われ、特典【聖剣ビャクヤ・羅針盤・持参金・異世界の知識】を貰い、異世界転生を果たしたのである


「これじゃあ、刺された頃に逆戻り、いや、それ以上にひでえ状況じゃねーか!羅針盤持っていきやがって!あの糞女ども!」


この場にいないレベッカとミサラに罵詈雑言を吐きつつ、セイヤは聖剣を杖がわりに何とか立ち上がり、痛みを堪えつつ、濃霧の中、ひたすら歩き続けた


「くそ!くそ!」


セイヤは勘を頼りに進み続けるが、一向に出口につかないことで、苛立ち始めた


「こんなことだったら女神からいっぱい特典を注文しとけば良かった!くそ!」


その頃、セイヤと仲違いしたレベッカとミサラは羅針盤を頼りに出口を探していた


「ねえ、本当にここであってるの?」


「羅針盤の指す方向だとこっちが合ってるみたいだけど。」


濃霧の中、羅針盤の指し示した方向へ進み続けると、そこは左近らと別れた道の麓だった


「やった!ここはあの三下オニールと別れた場所だわ!」


「はあ~、なんで私、あんなセイヤと一緒に濃霧の中、行っちゃったんだろう。」


「思い出させないでよ!あいつの顔を思い出すと反吐が出るわ!」


「とりあえず【トキワ町】に行きましょう。きっとアイツらもそこにいるわ。」


「そうね。」


レベッカとミサラは左近らと合流するために【トキワ町】へと向かった





「ふう、朝か。」


「おはようございます、左近様。」


「おはよう。」


濃霧が晴れるのを待つためワシらは宿で一泊した。着替えを済ませ、下へ降りると、宿の主とバッタリ会った


「おはようございます、よく眠れましたか?」


「あぁ、心地よう。」


「それはようございました。お客さんに朗報です、濃霧がようやく晴れました。」


「それは誠か。」


「はい、旅立ちには丁度良いです。」


「それは良い知らせだ。」


「あと、もう1つお知らせがあるのですが。」


「何だ?」


「はい、お連れ様が先に宿をお出になられました。お二方が起きたら、【俺は任務から抜ける】とお伝えしてほしいとのことです。」


「左様か、お伝えいただき忝ない。」


オニールはどうやら任務を放棄したようだ。まぁ、あの男はこの任務自体、反対だったからな。まぁ、ワシとしてはいてもいなくても変わりはないが・・・・


「左近様、貸倉庫へ参りましょう。」


「そうだな。」


ワシらは貸倉庫へ行き、証明書を渡し、馬車と一緒に献上品を引き取った。ワシらは予め朝餉として保存食を買っており、それを食べつつ、馬車を発車した


「うむ、霧が嘘のように晴れたな。」


「左様ですな。」


馬車は順調に走らせると、前方に身に覚えがある二人組を見かけた


「ん、あれは。」


「勇者の連れですな。」


「あっ!止まって!」


ワシらは馬車を止めると、勇者セイヤと共に行ったレベッカとミサラとバッタリ会った


「主らはこのような所で何をしている?」


「せ、セイヤとはぐれてしまって、ここに戻ってきたの!」


「そういえばあの勇者の姿が見かけませんな。」


「お願い、助けて!」


「与一、ポーションと食糧を分けてやれ。」


「ははっ!」


ワシらはレベッカとミサラに食糧とポーションを与えた。二人はよほどお腹が空いていたのか、ガツガツと食べ続けた


「この先へ行けば【トキワ町】だ。そこで休めば良い。」


「ええっ!一緒に行ってくれないの!」


「ワシらは献上品を王都へ届けねばならぬのだ。霧が晴れている今がその好機なのだ。」


「それはいくらなんでも薄情じゃないの!」


「はぁ~、悪いことは言わん。主らはこの任務から手を引け。主らの元仲間のオニールは真っ先にこの任務から手を引いたぞ。」


「「えっ!」」


「この任務は危険が付き物だ。特に献上品を狙う輩が多い。それに若い女子が献上品の任務に付いていると賊が知れば、真っ先に献上品と一緒に女子も狙われるぞ、勿論、慰み物としてな。」


それを聞いたレベッカとミサラは青ざめた。二人はどうやらこの任務の危険性を知らずに勇者セイヤに追従したのだろう


「どうする?任務から手を引くか、それとも続けるか?」


「「辞めます!」」


二人はきっぱりと辞退した。二人もこの任務の危険性を知り、ワシらに任務を任せた


「では我等は行く。主らも気をつけて行け。」


「「はい!」」


「出発!」


ワシらは馬車を動かし、森へ入っていった。ワシらは羅針盤に従い、王都への道のりを進んでいった。周辺を警戒しながら先へ進めていると・・・


「あ、おーい!」


馬車の前に現れたのは、勇者セイヤだった。右頬に熊の引っ掻き傷によって、痛々しく残っており、一見すると別人に見えた。セイヤの様子は焦燥しきっており、ワシらに助けを求めていた


「・・・・ここで何をしている。」


「助けてくれ!あいつらに見捨てられたんだ!」


「あいつらとは・・・・あの女子たちの事か?」


「そうだ、僕が熊に襲われて、顔に傷を負ったというのに、あいつら羅針盤を盗んで逃げたんだ!」


話を聞くと濃霧の中、セイヤらは熊に襲われ、何とか倒したようだが、右頬に深い傷を残した。それを見たレベッカとミサラは羅針盤を分捕って、そのまま逃げたという


「それは災難だったな。」


「そうだろ!だったら助けてくれ!」


「なら、条件がある。」


「条件だと!」


「この任務から手を引くなら、安全な場所へ避難させてやる。主の連れは任務を辞退したからな。」


「な、何だと。」


それを聞いたセイヤは顔の血色を無くすほど、青白くなった。自分は濃霧で森に迷っている間に、そのような事が起きていたとは露知らずにいた


「い、いや、俺も任務に加わるから連れてってくれ!」


「辞めておけ、この任務は主には荷が重い。」


「何だと!分かったぞ!褒賞欲しさに俺を除け者にする気だろ!そうはいかないぞ!」


そういうとセイヤは手元から聖剣ビャクヤを出現させた。左近は溜め息をつきつつ、馬車を降りて、手元に日本刀を出現させた。それを見たセイヤは驚いた


「えっ!刀が出現した!」


「それがどうした。」


「ま、まさかお前、転生者か!」


転生者、もしかしてこやつもワシらと同じか?


「ほお、同族に会えるとは思わなんだ。」


「ま、まさか俺の他にもいたなんて!どうなってるんだ!」


「冥途の土産に教えてやる。前世は石田治部少輔三成が家臣、島左近清興と名乗っておったわ。」


「し、島左近だ・・・・」


セイヤが言い終わる前に、左近が電光石火の早業で居合切りをし、セイヤの体から大量の血渋きが溢れだした。セイヤは死ぬ間際、まさか歴史の有名人に会えた事に驚愕しつつ、そのまま息を引き取った


「今はサコン・シマとして生きているがな・・・・もう聞こえんか。」






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