47話:暗躍
島左近清興だ、ワシらはボブテスの任務を完了させ、報酬を受け取ったところである
「サコンさん、ヨイチさん、お疲れ様です。本日の報酬です。」
「うむ、忝い。」
ワシらはギルドを去り、宿へ向かう途中、ユカリとバッタリ会った
「サコン殿、ヨイチ殿、任務から帰ったのか?」
「ああ、そうだが。」
「ユカリ殿は如何したのだ?」
「ああ、私は宿へ戻るところだ。」
「左様か、ならば供をしよう。」
「これは有り難い。」
ワシらはそのまま宿へ向かうと、宿の前に旅装束の集団が立ち止まっていた。ワシらは宿に立ちふさがっている集団に声をかけることにした
「すまぬが、そこをどいてもらえぬか。」
「・・・・申し訳ない。」
ワシが声をかけると集団の一人が反応し、他の仲間に話し、宿から離れた。そのうちの一人が一瞬だがワシらの方を向いた後、去っていった
「(与一、あの集団、くさいな。)」
「(御意。)」
ワシと与一が読唇術で会話しながら、ふとユカリの方を向くと、僅かだが驚きの表情をしていた。ワシと目が合うと、いつもの落ち着いた顔つきに戻った
「どうしたのだ、サコン殿?」
「・・・いや。」
ユカリはあの集団の中の1人を知っているようだった。これ以上、聞くことはせずワシらは宿へ入った。一方、先程の集団の1人がぼそりと呟いた
「久しいな、ユカリ。」
宿の件から、ワシらはあの集団を調べていた。タダ者でないワシも与一も感じ取った
「それで奴らは何処にいる?」
「ははっ!西の方面の宿におります。」
「与一よ、奴らを監視するだけでいい、あまり深入りはするな、奴らに気取られればまずいからな。」
「ははっ!肝に銘じます!」
そう言うと与一は気配もなく消え去った。何事もなければ良いが・・・・
その頃、西の方面の宿に滞在していた集団は密室内にて話し合いが行われていた
「それで例のブツはこの町にあるのか。」
「間違いなく。」
「あまり目立つ事は出来んからな、それに我等を付け回している鼠がいるしな。」
「始末するか?」
「いや、下手に関わると我等の計画が失敗する。ここは様子見といこう。」
宿から離れた距離で見張っていた与一は、左近の命を忠実に守り、監視のみに留まっていた
「う~ん、ここからでは奴らの動きは分からんが、左近様の命だからな。下手に動いて左近様の御迷惑をかけるわけにもいかん、ここは様子見じゃな。」
左近の読み通り、奴らは与一の存在に気付いており、与一に深入りするなと命じた事が功を奏したのか、互いに様子見を決めていた。その後、左近と与一が食糧の買い出しのため、町を散策すると・・・・
「左近様。」
「うむ。」
ワシらの後を追う鼠がいたようだ。恐らくワシらが目障りに思ったのか、直接攻撃に出たようだ。ワシらはなるべく人通りの多いところへ向かうと、奴らはワシらを追ってきた。人混みに紛れつつ、人気のない場所へと移動し、奴らの動向を見張った。奴らはワシらを見失った事であちらこちら探しているようだ
「如何いたしますか。」
「始末するのは簡単だが、今は泳がせておけ。」
ワシらは奴らの追跡を躱し続けていると、向こうも躍起になったのか、ワシらが宿へ戻ると、宿の前で例の旅装束の者たちが立ち塞がった
「何か用か?」
「それはこちらの台詞だ。なぜ、我等を付き纏う!」
「付き纏う?何のことやら?左近様、心当たりが御座いますか?」
「全く身に覚えがないな。」
「惚けるな!我等を監視しておっただろう!」
「証拠はあるのか?」
「ぐっ!」
「何度も言うがワシらは主らを付き纏った覚えはない。これ以上、難癖をつけるなら、はっきりいって迷惑だ。」
「黙れ!」
ワシらがそう答えると、向こうは痺れを切らしたのか、白昼堂々と剣を抜いて、我等に斬りかかってきた。周辺にいた住民は軽く悲鳴を上げて、警備隊を呼んでいた
「遅い。」
「ぐほっ!」
ワシらは奴らの斬撃を避けると共に腹に当て身を食らわした。奴らは呻き声を上げて、うずくまったところ、そこへ警備隊が現れた、誰かが通報したのだろう。ワシらは警備隊に事の詳細を説明し、周辺の住民の証言もあって例の旅装束の連中は連れていかれた
「やれやれ。」
「さて奴らはどう出るでしょうか。」
「さあな。」
ワシらは、そのまま宿へ戻った。それから2日後に警備局から知らせがあり、ワシらは訪れた。何の用で呼ばれたか聞くと、どうやら例の旅装束の連中の仲間の1人が示談を提案してきたのだ。とりあえずワシらは応接室に入ると、例の旅装束の仲間の1人である男が待っていた。男はワシらに気付き、開口一番に謝罪をした
「連れが貴方方に御迷惑をおかけして申し訳ありません。」
「我等は気にしておりませぬので御気遣いなく。」
「いいえ、本来であれば私が気を付けていればこんなことにならなかったのですが・・・・」
向こうは我等の反感を買いたくないのか、ひたすら謝罪を述べた
「まあ、我等は怪我の類いはしておらぬからな。」
「では・・・・」
「まあ待たれよ、怪我はしていないが、衆人環視の下で左近様も某も濡れ衣を着せられたからな、償いはしていただきたい。」
男が動きを見せた途端に、与一が待ったをかけた。与一に止められた男はわずかに眉を潜めた
「・・・・いくらですか。」
「別に金の話ではござらぬ、もし彼の者たちを釈放し、再び問題が起こさないと誓えるなら・・・・」
「条件は?」
「たやすいことです、【ガルバ町】の立ち退き及び、出入りを御遠慮していただければ。」
それを聞いた男はガツン!と鈍器で殴られた衝撃を覚えた。自分たちはこの【ガルバ町】で目的の物を探している途中なのに、左近らの示談の条件は遠回しに言っているが【ガルバ町の立ち退き&出入り禁止】、男たちにとって無理難題ともいえる条件に・・・・
「・・・・それは呑めませぬ。」
目的の物を手に入れるまでは【ガルバ町】から離れることができない、だが仲間を見捨てるわけにもいかない、そこへ与一が畳み掛けた
「ほお、呑めぬとは?この町で刃傷沙汰を起こしてでも果たしたい事とは?」
この時、男は左近らの罠に嵌ってしまったと悟った。ここで目的を言わねばならぬ、示談を申し込んだのは自分たちなのだから・・・・
「(くそ!あいつらが問題を起こさなければ、こんなことにならなかったのに!)」
男は問題を起こした仲間に苛立ちを覚えた。左近らの前では無表情を貫くが、内心はドロドロとマグマのように怒りがこみあげていた
「・・・・私の一存では決められませんので、この話を持ち帰ってもよろしいですか。」
「ええ、構いませぬ。」
示談は一旦、中断となり、左近と与一、男はそれぞれ自分が泊まっている宿へと戻った。男は真っ直ぐ、宿に戻り、左近らの示談の条件を話した。案の定、部屋中、怒号が飛び交った
「何だ!その条件は!」
「まさかとは思うが、その条件、呑んだんじゃないだろうな!」
「私の一存で呑めるわけがないだろ!」
「くっ!こうなれば、その二人を襲うぞ!」
「たわけ!あの者たちは只者ではないぞ!」
「では、どうするんだ!」
「落ち着け。」
怒号が飛び交う部屋で1人の男が待ったをかけた。男は冷静に話し始めた
「我々の目的はこの【ガルバ町】にある物を手に入れることだ、そのためには犠牲もやむ無し。」
「牢に入れられた仲間を見捨てるというのか!」
「私の忠告を無視して事を起こしたあやつらが悪い。よって今回の示談は白紙だ。」
男の冷徹な一言で場は静まり返った。仲間を見捨てる方向で話は決まり、再び左近らと男が警備局に集まった
「示談は無しと?」
「はい、あの後、話し合った結果、釈放しない方向で話が決まりました。」
「左様か。」
その後、示談が白紙になったと知った瞬間、牢に繋がれた仲間たちは、舌を噛みきり、そのまま亡くなった。仲間の死を知った男たちは遺体を引き取らなかったという
「左近様、奴等の目的なのでしょう。」
「さあな。」
左近らは次はどう出るか、思案しつつ1日が過ぎるのであった




