表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

47/230

46話:新天地

島左近清興だ、ワシらは現在、とある洞窟で野宿をしている。与一と交代しながら見張りをしていた


「左近様。」


「うむ。」


ワシは軽く睡眠を取った後、与一と交代し、見張りについた。ワシは火を絶やさず、周辺を警戒し続けた。山犬の遠吠え、虫の声、風の音、ワシは感覚を研ぎ澄ませ、わずかな気配を逃さずにいた。すると遠くの草むらがガサガサと揺れた。ワシは朱槍(短槍)&手裏剣を出現させ、構えた


「ん。」


ワシはいつでも放てるよう準備をしていると、出てきたのは野兎だった。野兎は軽快に飛び回り、向こうの草むらへと入っていった


「ふう、のんきな兎め。」


ワシは一安心し、武器を解除しようとした時、再び草むらがガサガサと揺れた。先程の兎とは違い激しいものだった。ワシは草むらの方に構えた。出てきたのは大人の猪だった


「丁度、猪肉ししにくが食いたいと思っていた所だ。」


ワシは朱槍を投槍に変えて、いつでも放つ準備を整えた。猪はワシの存在に気付き、今にも突進しようとしていた。するとそこへ草むらから熊が出現し、猪に襲い掛かった。暴れる猪と力尽くで息の根を止めようとする熊、傍から見ると弱肉強食の世界がワシの目に広がった。だが勝敗は熊の方が軍配が上がり、猪の喉笛を噛みきると、猪はぐったりをした。熊はワシに目を向けず、猪を咥えたまま、草むらに入っていった


「ああ、せっかくの朝餉が・・・・」


ワシはせっかくの獲物を逃してしまったことを後悔しつつも、触らぬ神に祟りなしの如く、何もせずにいたことで熊はこちらに目をくれずに猪を優先した事で、難を逃れることができた。すると夜空が明るくなり、朝日が顔を出し始めた


「朝か。」


「左近様。」


「おはよう、与一。」


「おはようございます。」


「「おはようございます、ボブテス殿。」」


ワシらは火を起こしていると、草むらがガサガサと揺れ始めた。ワシらは警戒していると、そこへ立派な角を生やした野性の鹿が現れた。鹿は興奮状態でワシらに目を付けた


「鹿肉もいいな。」


「左様ですな。」


与一は手元に弩を出現させ、構えると鹿はそのままワシらに突進してきた。与一は慌てずに狙いを定め、矢を放った


「ピギィ!」


矢は鹿の額に直撃し、そのまま息絶えた。ワシと与一は、近くにあった石を投げて鹿が生きているか確認をすると鹿に動きはなかったため、朝餉は鹿肉にすることに決めた


「よし、今日の朝餉は鹿肉だ。」


ワシらは早速、鹿を解体し始めた。ナイフを使って鹿の腹を割き、まず内臓等の臓器を取り出し、肉を削いだ。鹿肉は他の獣と違って、脂肪が少ないが、獣独特の臭みが少なく、赤身が強いのが特徴である。鹿の角は滋養強壮に良いとされており、細かく切って、袋に入れて、無限収納箱にしまった。取れ立ての鹿肉を串刺しにし、塩胡椒で味をつけ、焚き火に網を敷いて、そこに置いて、じっくりと焼いた。その間、ワシらは乾パン等、食べつつ、別の場所で火を起こし、そこで味噌汁を作り、馬に餌を与えていた


「んん、良い香りだ。」


「鹿肉なんて久し振りですな。」


「左近様、もうそろそろ焼けますぞ。」


焼きあがった鹿肉をワシらは食らいついた。塩胡椒と肉の旨味が口の中に広がった


「「「ウマイ!」」」


臭みがほとんどなく、肉汁があふれ、食感は牛肉に近い。ワシが牢人だったころ、食糧を求めて、鹿を弓矢で射止め、こっそり食べていた。ワシがいた大和国は仏教が根付いており、獣の殺生を禁じられていたが、ワシは食うために、それを背き、獣の肉を食らい続けていたころが今、思うと懐かしいわい。昔を懐かしみつつ、いつの間にか鹿肉が無くなった


「ふう~、食った、食った。」


「鹿肉なんて久しぶりですからな。」


「私も年甲斐もなく食べましたわい。」


鹿肉を食べ終わり、最後のシメとして味噌汁を飲んだ。味噌汁が五臓六腑に染み渡る。味噌汁を飲んだ後、火の後始末をつけて、荷物を馬車に入れ終わった後、馬車を出発させた


「出発!」


馬車を走らせ、羅針盤を使い目的の山地へ向かった。道中、野兎や鹿を見かけたが、ワシらの姿を見かけるとそそくさとその場を去った。すると羅針盤が目の前の山を指していた


「ボブテス殿、目的の山地に到着したようだ。」


「そうですか、おおっ!」


ボブテスは目的の山地を目の当たりにして、感嘆した。山地は色鮮やかな緑畑に溢れていた。ボブテスは馬車を降りて、草花と土を確かめ始めた


「土が肥沃で草花も豊富、まさに牧草地にうってつけの土地だ!」


「それは良かったが、これからどういたすので?」


「はい、時間をかけて移牧いぼくをしようと考えています。」


移牧、すなわち引っ越しである。時をかけて引っ越しをするということは、今ある仕事と土地と家屋を捨てて、新しい土地で生活することである。しかしこの土地は未だに未開の地であり、獣たちの住処であることには変わりない。それに土地を確保するためにも正式な手続きと銭を必要になる


「ボブテス殿、この土地を確保するにも正式な手続きと金が必要になるであろう。そこは考えているのか。」


「恐らくですがワシが生きている間は無理でしょうな。」


「それでも続けられるのか?」


ワシがそう言うとボブテスは黙りこくった。ワシとしては、未開の地にて牧場を営むにも損害もあるし町に売りにいくにも距離があり、ましてや獣たちの襲撃もあり得るのだ。ワシがそう考えていると、ボブテスは喋り始めた


「サコンさん、ヨイチさん、実は迷っているのです。このまま牧場を続けていくか、それとも廃業するか。」


「ボブテス殿。」


「今ある牧場も私の爺様が一から作り上げた牧場なんです。だからこそ愛着がある。だがこれからの事を考えて息子たちや孫たちに押し付けていいのか・・・・」


「奥方や息子夫婦や孫たちはどう思っているのですか?」


「妻は私に任せると、息子夫婦はどちらでも良く、孫たちは残してほしいと言っております。」


「左様か。」


「移牧するにも時間と金がかかるのは分かっております。一から牧場を作る大変さは肌身で知っているので迷っているのです。」


ワシらの立場からいえば、何といえばいいのか言葉が詰まった。確かに一から作るにも時と金と人手がいる


「サコンさん、どうすればいいかのう。」


「ボブテス殿のお心のままにされよ。」


ワシが言える事といったらこれくらいしかない。実際、ワシらとボブテスは依頼主と用心棒の関係だ。ボブテス一家の人生はボブテス一家が決めることなのだが、もどかしい気分だ


「そうですか、すいません、このような話をして・・・・」


「いいえ、お力になれず申し訳ない。」


「最後にこの自然を見れて良かったです。」


ボブテスは自然豊かな山地を見て、感慨深そうに見ていた。ワシらは馬車に乗り、とりあえず近くに町がないか羅針盤を使うと、東の方角を指していた。ワシらは羅針盤に従い、馬車を進めると、何と目と鼻の距離で【ボルト町】という町に辿り着いた


「町が近くにあってよかったですな、左近様。」


「ああ、まさかこんな近くに町があったとはな。」


ワシらは門番に通行証を見せると、入場の許可が下り、ボルト町に入った。ワシらはボルト町で食糧の買い出しとしていると、ふとある張り紙を見た


「開拓地募集・・・・・ん!」


「左近様、如何されましたか。」


「与一、ボブテス殿、この張り紙を見よ!」


「何ですか・・・・これは!」


張り紙には開拓地募集で開拓場所は例の山地一帯の土地だった。開拓するにあたり、税は免除され、あらゆる支援を受けられるという好条件の内容だった


「ボブテス殿!」


「はい!これで家族に大手をふって帰れます!」


その後、ワシらは役所に寄り、例の山地開拓に募集した。諸々の手続きを済ませた後、ボブテスの経営する牧場へ向かった。失敗だったのは、ボルト町方面の方がボブテスの経営する牧場に近く、安全な街道だったため、ワシらは危険な獣道を行く羽目になったのだ


「失敗でしたな、左近様。」


「ああ、羅針盤は意外と融通が利かないな。」


「左様です・・・・いて。」


「どうし・・・いえ。」


ワシと与一は軽く叩かれたような痛みが頭上を襲った。ふと下を見ると、胡桃が転がっていた。ワシらは頭上を見上げたが、何もなかった


「もしかして、ワシらが羅針盤の悪口を言ったからか。」


「恐ろしいですな。」


これ以降、ワシらは羅針盤の悪口を控えるようにした。その後、ワシらはボブテスの経営する牧場に到着し、例の開拓募集の事を話すと、家族は賛成した


「サコンさん、ヨイチさん、ありがとうございました。」


「いいえ、まあ良かったですな。」


「はい、これで廃業せずに済みました。」


その後、ボブテス一家は山地へ移牧し、様々な支援を受け、ボブテス亡き後、息子夫婦や孫たちが山地牧場を作り出したのであった



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ