45話:牧草地探し
島左近清興だ、ワシらはボブテスとボムカ老夫婦の依頼で新たな牧草地の探索とその護衛をすることになった。護衛任務としては報酬は安いが、報酬こそ安いが、乳(牛乳)、醍醐、蘇、酪、腸詰め(ソーセージ)、卵(鶏卵)等が提供され、また昔の誼もあって引き受けることにした。ワシらはボブテスとボムカ老夫婦と共に馬車に乗り、一旦、二人の経営する牧場へ向かった
「この道を行くのも久しいな、任務以来だ。」
「そうですね、私もボムカも久しぶり牧場の外へ行くのも久しぶりですからな。」
「あの任務以来、熊といった害獣は現れたのですか?」
「いいえ、あれ以来、害獣が現れず平和に過ごしています。」
「それは良かった。」
他愛もない世間話をしている内に牧場に着いた。すると二人の40代半ばの夫婦と二人の10代後半の双子の男女と牧羊犬のラッシーが出迎えた
「お帰り、父さん、母さん。」
「おお、ただいま、サコンさん、ヨイチさん、息子のボールと義理の娘のローナ、二人の子供で双子の孫のボーロとロールです。」
「左様か、サコン・シマでござる。」
「同じくヨイチ・ソウマでござる。」
「父と母が大変お世話になりました。息子のボールです。」
「ボールの妻のローナと申します。」
「祖父がお世話になりました。孫のボーロです。僕の隣にいるのは双子の妹のロールです。」
「孫娘のロールです。祖父母が大変お世話になりました。」
「ワン!」
「ラッシー、久し振りだな。元気にしておったか。」
「ワン!」
互いに自己紹介を済ませた後、ワシらはボブテスたちの家に入り、新たな牧草地について聞いてみた
「それで新たな牧草地についてだが宛はあるのだろうか?」
「はい、実は西の方角に牧草向きの草花を占める広大な面積を誇る山地があると聞きました。ただそこは人が手を加えられていない未開の地ですのでサコンさんたちに護衛をお願いしたのです。」
「左様か、未開の地なれば、そこに住む獣たちが住んでいる。彼の者たちの縄張りに土足で入るようなものですな。」
「はい、ですが私の所有している牧草地の草花も減少していく一方ですので、危険を承知で行こうと思っています。」
ボブテスは危険を承知で牧草地確保に乗り出すようだ。妻や息子夫婦や孫たちも悲痛な表情をしている。よくよく話し合っての決断なのだろう。そのために昔、任務で訪れたワシらに依頼を頼んだのだから・・・・
「ボブテス殿、我等も依頼をお引き受けした以上、必ずや大願成就のため尽力致す。」
「ありがとうございます、サコンさん。」
話し合いが終わった後、ワシらは休息を取っていた。ボブテスらは予め荷物の準備をしており、馬車に入れていった。休息を取った野馳にワシらは先に馬車に乗った。ボブテスは家族と別れの挨拶をしていた
「留守を任せたぞ。」
「ええ、貴方も気を付けて。」
「うん、ボール、頼んだぞ。」
「父さんも。」
「ボーロ、ロール、爺ちゃんは行ってくる。」
「じいちゃん・・・・」
「そんな顔をするな。爺ちゃんは不死身だ。」
「うん、そうだよね。爺ちゃん、頑張って!」
「おお!任せとけ。サコンさん、ヨイチさん、お待たせしました。」
「お気になされずとも良い。」
ボブテスが馬車に乗り込んだ後、馬車を出発させた。ボブテスは家族に手を振り、家族もボブテスに合わせて手を振った。いつ戻るかも分からない旅路を見送る家族の心中はいかばかりか、ワシはそう思った。ワシら一行は羅針盤を使い、目的の西の方角にある山地に向けて馬車を走らせた。道中、野生の狐や兎といった獣を見かけた
「ボブテス殿、ここから先は獣の縄張りだ。心してかかられよ。」
「はい。」
ワシらは野生の獣の縄張りに入った。馬車を走らせつつ、道中で視線と殺気を感じた。ワシらを遠くから虎視眈々と狙っているのだろう。与一も忍び道具を準備し、いつでも迎撃できる態勢を整えた。ボブテスは与一が忍び道具を装備していることで、ただならぬ雰囲気を感じ取り、警戒し始めた
「んん、あれは。」
ワシらの前に2頭の子熊を見つけた。ワシは朱槍(投槍)を装備し、いつでも迎撃できる態勢を整えた。小熊を見かけた際は必ず親熊も近くにいるのだ。かつてボブテスの牧場で羊を襲った熊の親子が良い例だ。子熊2頭が出てきた後、案の定、親熊が出てきた。向こうもワシらに気付き、じっとしている。突然現れた熊に馬は落ち着きつかせ、熊を警戒した
「ヒヒーーーン!」
「どうどう。」
「グルル。」
睨み合いの末、熊の方が根負けし、子熊を連れて、その場を去った。熊が去ったことでワシらも一安心しつつ、再び警戒を続け、先へ進んだ。馬車を進めていくと・・・・
「キュイーン!ブルブル!」
馬が高いいななきを発し、足を止めた。高いいななきを発するということは、この先に何かいるということを警告している。ワシは朱槍(短槍)を出現させ、待ち構えていると、そこへ続々と山犬(狼)の群れが出てきた
「山犬か。」
「グルル。」
山犬の群れが行く手を遮り、ワシらに立ちはだかった。ワシは馬を降りて、山犬たちと対峙した
「与一、ボブテス殿を頼んだぞ。」
「承知。」
「さ、サコンさん。」
「心配無用。」
ボブテスは心配そうに見ていたが、ワシはボブテスを落ち着かせ、山犬の方へと近付いた。すると1匹の山犬がワシに目掛けて近付いてきた
「ウオオオオオオオオオオ!」
ワシが雷鳴のごとき一喝をすると近付いてきた一匹の山犬が驚き、群れの方へと戻っていった。山犬の群れは怯み、後ずさりをし始めた
「命が惜しくないものは掛かって参れ!」
ワシがそう言うと、山犬の群れは一目散に逃げた。辺りはシーンとなり、ワシは馬車の方へと戻った
「お見事です!」
「本当にスゴイ・・・・」
「さあ、先へ参ろう。」
ワシは馬車に乗り、馬を動かし出発した。空はすっかり夕焼けになり、どこか休める場所を探すことにした
「ボブテス殿、どこか安全な場所にて野宿をしようと思うがいかが?」
「はい、その通りにしましょう。」
ワシらは馬車を進ませながら寝床を探していると、洞穴を見つけた。とりあえず彼処に行っていることにした。馬車を洞窟前に停めた。一端、ワシと与一は洞窟に獣がいないか、確かめるために鼠花火を放った。鼠花火はバチバチと爆発音をならしたが、洞窟からは何も異常はなかった
「ボブテス殿、今日は洞窟にて野宿をいたそう。」
「はい。」
ボブテスも馬車から降りて、ワシらは洞窟へ入った。与一は発煙筒を使って明かりをつけると、洞窟の中は広く、大人が3人入れるほどの余裕があった
「さて、まずは火を起こそう。」
ワシらは燃えそうな木々と落ち葉を1ヵ所に集め、マッチに火をつけ、木々と落ち葉を火のついたマッチを入れると、たちまち燃え上がった
「サコンさん、ヨイチさん、これをどうぞ、妻が作ったサンドイッチです。」
「これは忝ない。」
「有り難く頂戴します。」
ワシらはボムカの作ったサンドイッチにかじりついた。サンドイッチをムシャムシャしながら、簡易鍋で水と味噌を入れた。時が経つと鍋がグツグツと煮えており、お玉でかき混ぜた。コップに味噌汁を掬い、3人に回ったら、それを一緒に飲んだ。馬に餌もやらないとな・・・・
「はぁ~、美味い。」
「体に染み渡りますな。」
「左様ですな。」
ワシらはサンドイッチと味噌汁を味わいながら、これからの事を話し合った。未開の地なれば獣たちがワシらを狙っている。中には夜に活動する獣もおり、ワシらは完全に餌である
「ボブテス殿は先に休まれよ。ワシと与一は交代で見張りをいたすので・・・・」
「何かあればお知らせ致す。」
「分かりました、ではお言葉に甘えて。」
ボブテスを寝かせた後、ワシと与一は交代で見張りをしつつ、野宿をするのであった




