43話:平穏その2
島左近清興だ、ワシは与一と共に傷心中のベーカリーを飲みに誘い、泣き上戸&絡み酒に巻き込まれつつ、奴の泊まっている宿へ行き、奴を寝かせた後、ワシらは長椅子で一夜を過ごした。そして日の光が部屋に差し込んだと同時に目を覚ました
「ん、ここは・・・・ああ、思い出した。ワシと与一はベーカリーの部屋に泊まっておったんだ。」
「左近様。」
「与一、起きたか。」
「はい。」
ワシが起きたのと同時に与一も目覚めた。ワシらはベーカリーのいる寝室へ向かうと奴はいびきをかきながら、寝ていた。ワシらの苦労も知らずにこの男ときたら・・・・
「起こしますか?」
「いや寝かしておいてやれ。」
ワシらは部屋で顔を洗い、無限収納箱で替えの着物に着替え、身嗜みを整えつつ、武器の手入れ等をしていると、ベーカリーが部屋から出てきた
「いてて、飲み過ぎ・・・・うわぁ!サコン、ヨイチ!」
「おお、起きたか。」
「なんでお前らがここにいるんだ!」
「忘れたのか、昨日飲みに行った時、お前が酔っ払ってた事を。」
「んん、思い出せん。」
「とりあえず水だ。」
「ああ、わりぃ。」
与一はコップに水を注いだ後、ベーカリーに渡した。ベーカリーは水を飲み、少しだけ酔いを覚ました
「さてワシらはこれから朝餉に向かうが主はどうする?」
「あぁ、勿論行くよ、その前にションベン!」
ベーカリーが廁に行っている間、ワシら部屋の外で待っていた。するとベーカリーは新しい着物に着替えており、身嗜みも整えていた
「待たせたな。」
「それでは行くか。」
ワシら3人はそのまま朝餉を取るため、食堂へ向かった。朝日が眩しく、小鳥の囀りが響き渡った
「おはようございます。」
「「「おはようございます。」」」
近所の人々から朝の挨拶を済ませ、ワシらは真っ直ぐ、食堂へ向かった。その道中でベーカリーが何やら言いたげな表情をしており、ワシは試しに聞いてみた
「ベーカリー、如何した?」
「サコン、ヨイチ、昨日はすまなかったな。」
「どうした急に?」
「いやあロゼットに好みのタイプじゃないって言われて、落ち込んでいたところでお前らが飲みに誘ってくれたじゃねえか。俺を酔っぱらってそのまま寝たから、二人が宿へ送り届けてくれたじゃねえか。だからすまん。」
ベーカリーは申し訳なさそうにワシらに詫びた。まあ付き合ったのは、こやつがヤケを起こして問題を起こさないよう見張っていただけなのだがな・・・・
「まあ、気にするな。ワシらが勝手にやった事だ。」
「左近様に感謝しな。」
「ああ、あんがと。」
話しているうちに食堂へ到着した。食堂は数人ほど並んでおり、ワシらはその列に加わった。それから少し時が過ぎて玄関が開いた
「おはようございます、さあ、どうぞ!」
店主が朝の挨拶と共に出迎え、ワシらは食堂に入り、空いている席に座った。ワシらはお品書きを読み、注文した
「ワシはオムレツ定食。」
「某は卵焼き定食。」
「俺はハムエッグ定食。」
「はいよ!」
ワシらは卵を使った料理を頼むことにした。ちなみに現世にいた頃、卵料理は滅多に食べることがなく、「鳥の卵を食べると祟りが起きる」という迷信が信じられていた。まぁ、この世界に来てから卵料理を食べたが特に祟りとかの類いは起きなかったこともあり、やはり迷信だと気付かされる。改めて思うと現世の日ノ本は矛盾と不便だらけだな
「はい、オムレツ定食、卵焼き定食、ハムエッグ定食、お待ち!」
店員がオムレツ定食、卵焼き定食、ハムエッグ定食を運び、テーブルに置いた
「「「いただきます!」」」
ワシらは卵料理に手をつけた。ワシは肉刀でオムレツの表面に切ると、とろりと卵の黄身が垂れて、ワシは思わずごくりと喉を鳴らした。そこにケチャップを絡ませ、肉匙で刺し、口に運んだ
「うん、美味い。」
「卵焼きが甘すぎないのがいいですな。」
「醤油とミックスしたハムエッグが一番だ。」
ワシはオムレツの美味さに舌鼓を打ちながら、白飯を掻き込んだ。他の二人も卵料理に舌鼓を打ちながら、一心不乱に掻き込んだ。そんなこんなで食べ終わり、勘定を済ませ、食堂を出た
「いや、美味かった!」
「左様ですな。」
「わりぃな。朝食まで奢ってもらって!」
「気にするな。」
その後、ワシらは別れ、ワシと与一は自分達の宿へ戻った。レイクはワシらを出迎え、鍵を借りてワシらの部屋へ向かった。扉を開けて、部屋に入った
「はぁ~。」
「御疲れにございますか?」
「あぁ、あやつの世話は骨が折れるわい。」
「某は風呂屋に参りますが左近様は如何致しますか?」
「あぁ、そうだな。ワシも行くか。」
ワシらは鍵をレイクに返して、真っ直ぐ風呂屋へ向かった。ワシがいた現世では蒸し風呂や行水や湯治等が主流であり、この世界も同じだった。ただ1つだけ違うとすれば入浴である。貴賎問わず肩までお湯に入る文化があるのだ。体を洗う際は南蛮のシャボン(石鹸)を使うなど、この世界は現世よりも住みやすく、日ノ本で信じられた迷信も無意味なのだ
「今日は空いておりますな。」
「ああ。」
風呂屋は運よく空いており、ワシらは番頭に代金を払い、着物を脱ぎ、鍵付きの箱に入れ、戸を開けると、南蛮風(古代ローマ)の様式と広々とした空間と熱い湯をはった浴槽と源泉を出す獅子の顔をした像が出迎えた。ワシと与一が風呂に入る前に体を洗う事にした。シャボン(石鹸)を現世と違い格安で売ってくれるので、ワシや与一でも買う事ができた。頭と体を洗い、肩まで旅の垢を落とした。洗い落とした後、ワシと与一は真っ直ぐ、風呂に浸かった
「はあ~。生き返る。」
「お湯の丁度良いですな。」
いつ来ても風呂屋はいい。長年の疲れが取り除かれる心地だ。だがあまり長湯をしているとのぼせてしまう前に風呂から上がり、蒸し風呂に入った
「「ふう~。」」
ワシらの他にも他の客も蒸し風呂に入っており、身体中から汗を流した。他の客は蒸し風呂から出ていくがワシらは蒸し風呂から出ずに座り続けた
「だらしがないですな、左近様。」
「まあ、そういうな。」
他に客がいないころにはワシらも蒸し風呂から出た。出た瞬間、心地よい風がワシらを包んだ
「涼しいな。」
「御意。」
その後、ワシらは再び風呂に浸かった後、風呂から出て脱衣所へと向かった。手拭い(タオル)で体を拭き、鍵を開けて着物に着替えた後、風呂屋から出た
「はあ~、さっぱりした。」
「そうですな。」
「あ、旦那。」
ワシらが風呂屋から出た辺りからアリーナとウルザとロゼットたちとバッタリ会った
「旦那方は風呂上りですか?」
「ああ、そうだが。」
「これから予定はあるのですか?」
「いや、ないな。」
「だったら、これから私たちと一緒に【イザナミ】に行きましょうよ♪」
「まだ早いのではないか?」
「【イザナミ】は朝も夜も関係ありませんよ!もしよろしかったら私が左近の旦那の宝刀のお世話を・・・・」
「ロゼット?貴方は学習能力が欠如しているようね?」
「あはは(汗)」
ワシに色仕掛けをするロゼットを牽制するアリーナ、ワシは苦笑いを浮かべ、与一とウルザは「またか」と見慣れた光景に若干、呆れていた
「それで旦那はどうするの?」
「うん、行くか。」
「サコンの旦那、大好き♡」
「ロゼット、旦那は私の客だ!あんたはベーカリーがいるでしょ!」
「私の本命はサコンの旦那です♡」
ワシは両腕をアリーナとロゼットが占め、互いを牽制し合いながら、そのまま【イザナミ】へと向かう事になった。与一もウルザもその跡を追うのであった。両手に華というが、正直嬉しいか嬉しくないかといえば、微妙である




