39話:虎退治
島左近清興だ、例の自称、勇者コバヤシがアバシリン刑務所に収監されたと情報がこのガルバ町に届いた。そうワシを付け回していたチャブム・ブレスと同じアバシリン刑務所に収監されたのだ
「勇者とは何であろうな。」
「如何されましたか、左近様。」
「ああ、ワシが会ってきた勇者たちはマトモな者は一人もいなかったからな。」
「ああ。」
まあ、それは置いといてワシは今、シュバルツ王国より仕事を任された。ギルド長のオークラ・ホールドに呼ばれてギルドに訪れたが、どうやらワシと与一宛に王命の入った文箱が届いたのである。ワシらを名指しで指名するとゆうことはこれは危険な仕事であることは間違いない
「サコンさん、どのような内容なのでしょうか?」
「うむ、獣退治だ。」
「獣?」
「ああ、どうやら領内で虎が出たらしい。」
「虎?虎ってあの虎にございますか?」
「ああ、どうやらシュバルツ王国に献上するはずだった虎を運ぶ途中で逃げ出したらしい。それがきっかけで多くの民が虎に襲われたとの事だ。」
「何と!」
「ちなみに虎を献上した方は?」
「シュバルツ王国と誼を通じたい部族が献上したそうだ。」
「迷惑な話ですな。」
「つまり王国は、ワシらは虎を始末せよとのことらしい。」
「左近様、虎退治なら軍を派遣すればよろしいのでは?」
「軍を派遣したそうだが、虎は用心深く、常に身を隠していて見つからないそうだ。」
「狡猾ですな、その虎。」
「ああ。」
これは完全に跡始末を我等に押し付けたようなものだ、だが王命ならば致し方ない。ワシがいた現世でも加藤主計頭清正が朝鮮で虎退治をしたと聞いたが、まさかワシも虎退治をすることになるとはな。とりあえずワシらは旅の準備をして最近、虎被害の遭った土地へ行くことになった。馬車に乗って現場に向かおうとしたが、道連れができた
「何しに来た。」
「おうおう、水くせえじゃねえか、獣退治の専門家である俺を誘わないなんてよ。」
「ベーカリー、主を誘った覚えはないが?」
「つれねえ事、言うなよ、ヨイチ。」
道連れとは重戦士のベーカリー・ゴーンズの事である。どこから聞きつけたのか、ワシらの依頼に無理矢理着いてきた
「はぁ~、ベーカリー、主は呼んだ覚えはないのだが?」
「たとえ呼んでいなくても獣害事件があるところに俺がいる。どうせお前らも虎退治するんだろ、だったら1人でも多く仲間を募った方がいいんじゃねえの?」
「ベーカリー、畏れ多くもこれは王命だ、左近様と某が任される事であって主の出る幕はないぞ。」
「そう固い事を言うなよ。自慢じゃないが俺は二度、虎を退治したことがあるぞ。虎の対処法も知っている。連れてっても損はねえぞ。」
「はあ~、好きにしろ。」
「よろしいのですか、左近様!」
「ワシらが誘わなくても、こやつは必ず虎退治に乗り出す。」
「おお、分かってんじゃねえか、それじゃあ馬車探しに行こうぜ♪」
ワシと与一、そしてベーカリー3人だけの花のないむさい男だけの虎退治が始まる前に問題が発生した、それは馬車である。通常の馬車は前よりも大きめのサイズを用意した。なぜかって身長2m超えのベーカリーに合う馬車が必要なため余計な出費をしたのだ。その分、奴から馬車代を毟り取ってやったが・・・・
「いくらなんでも取りすぎだろう!」
「図体のでかいお主に合う馬車が見つかりにくいんだ。」
「本来だったら主を連れていく予定はなかったからな。」
「くぅ~、世知辛いぜ。」
ベーカリーの懐が寂しくなったところで改めて虎退治に出発した。現地へ向かう途中、ベーカリーから虎について語った
「さっきも言った通り、俺は2度、虎を倒したことがある。奴は図体がデカイわりに奇襲が得意でな、特に森林や背の高い草に隠れて獲物を虎視眈々と狙っているんだ。」
「ほぉ~、詳しいな。」
「流石は獣退治をしてきただけはあるな。」
「それだけじゃねえ、虎は木登りや水泳もできる。普段は夜に活動する事が多いが、たまに昼間でも活動する事がある。だから奴を引っ付けるにはあるものを用意しないとな。」
「あるもの?」
「勿論、餌だけではなく、マタタビも必要だ!」
「マタタビ?猫が好きなあれか?」
「そうだ。」
「マタタビって虎に効くのか?」
「あぁ、図体がデカイが奴も猫の仲間だからな。それを使って虎を誘きだし、マタタビの香りで虎の動きに麻痺させるんだ。」
「ほぉ~、それは良き事を聞いた。」
「どうだ、連れてきて正解だったろう?」
「あぁ、連れてきて正解だ。」
「こればかりは認めざるおえん。」
「そうだろ、そうだろう、ん?おい止めてくれ!」
ベーカリーの制止で一旦、馬車が止まり、奴はある物を見つけた。そうマタタビである
「ちょうど良かった。こんなところでマタタビが生えてるなんてよ!おい、マタタビを回収するぞ!」
「相分かった。」
「やれやれ。」
「おい左近、与一、袋一杯に詰めるぞ!ギャハハハハハハ!」
ワシらはベーカリーの指示の下、マタタビを回収した。袋にマタタビを入れて、馬車へ乗り込んだ
「いやぁ、大量!大量!待ってろよ!虎!」
「相変わらず喧しい男だ。」
「同感ですな。」
ワシらがマタタビを手に入れ、現地へ向かっているころ、現地では男二人組が鎌や鍬を持って、周囲を警戒しながらパトロールを続けていた
「なあ、鎌と鍬だけで虎を倒せるのか?」
「分かんねえよ、ないよりはマシだ。」
「ああ、だが不安だ。」
二人組は虎の襲撃に怯えながらも、パトロールを続けていると・・・・
「キャアアアアアアア!」
「おい!」
「ああ!」
二人組は悲鳴のあった場所へ駆けつけると、そこには虎に襲われている女性の姿を見つけた。二人組は身震いしながらも鎌と鍬を持って虎に立ち向かった
「こ、これでも食らえ!」
「おい、勝手に行くな!」
男は鍬を振り回し、虎に攻撃しようとしたが、虎は女から離れて、素早い速さで男に接近した。男はなりふりかまわず鍬を振り回したが、虎はすぐには飛びかからず、男が振り回しすぎて疲れたところを襲い掛かり、男の喉笛に噛み付き、力強くひねった
「ぐあ。」
男はその場で息絶え、次に鎌を持った男に狙いを定めた。男は鎌を振り回しながら、後退りした
「来るな、来るな!」
男は恐怖に震えながら、後退りをしていたが、小石にぶつかり、こけてしまい、鎌を落とした。そこへ虎が襲い掛かり、男の喉笛に噛み付き、力強く捻った。男二人組はその場で力尽きた。虎に襲われた女は何とか逃れ、泥沼に潜み、泥にまみれながら身を隠した。虎は先程、襲った女を探したが、泥の臭いで血の臭いが紛れ、見つけることができなかった。虎はその場で仕留めた男たちを貪り始めた
「ううう。」
女は悲鳴を堪えつつ、虎の咀嚼音に怯えながら、息を殺し、早く終わってほしい事を願い続けた。その後、虎は粗方食べ尽くした後、その場を悠々と去っていった
「はぁ~、はぁ~。」
女はすぐに泥沼から脱出し、そのまま二人組の死体を見ずに村の方へ真っ直ぐ向かった。ようやく村に到着した時、村人の1人が女に駆け付けた
「ソナン、お前ソナンか!どうしたんだ、泥塗れで・・・・」
「と、虎に。」
「虎、虎が現れたのか!」
ソナンは弱々しく頷いた。それだけではなく虎と対峙した二人組が虎に食い殺された事も報告した。村人たちは農具や工具を手に現場に駆け付けると辺りは血溜まりと食い荒らされた二人組の死体が見つかった
「これはひでぇ。」
「うう。」
村人たちは二人組の死体を回収し、軽い葬儀を済ませた。ソナンは虎に教われたショックでPTSDになり、村全体は人食い虎への恐怖に震えるしかなかった
「グルルルル。」
その頃、虎は巣穴で休んでいた。久し振りの狩りで得た食事に満足した。1人捕り逃した事は残念に思いつつも、人間と言う獲物に再び狙いを定めるのであった




