36話:帰還
島左近清興だ。我等は追手の魔の手を逃れると共に、ルーミア嬢も体調が回復し、ようやく出発したのだが、一難去ってまた一難というのか・・・・
「おい!食料と女を置いてきな!」
ワシらの前に盗賊たちが待ち構えていた。やれやれと思いつつ、与一に二人の護衛を任せて、ワシは盗賊たちの相手をした
「悪いが貴様らにはやれん。」
「何だと!」
「まあいい、てめえらを殺して奪えばいいだけの話・・・・」
盗賊の一人が言い終わる前に、盗賊の額に棒手裏剣が突き刺さり、額から血が溢れ、前のめりの状態で倒れた。盗賊たちは仲間が突然、やられた事に怒り狂った
「野郎、やりやがったな!」
「こうなりゃ、やっちまえ!」
盗賊たちが一斉に襲い掛かり、左近は日本刀を出現させた。盗賊たちは突然、武器が現れた事に驚き、き、勢い余ってその場で立ち尽くすと・・・・
「遅い!」
左近は一瞬して盗賊の一人のそばに近づき、一瞬にして盗賊の首が宙にまった。盗賊の生首をキャッチし、一人の盗賊に目掛けて投げた
「ひいいい!」
仲間の生首を見てビビる盗賊に左近は切り捨てた。投げた盗賊の生首が地面に落ちたと同時に一人二人と斬り殺していく。盗賊たちは何とかバラけ、左近の前方に竹槍を持った盗賊、後方に剣を持った二人組の盗賊と三方から左近を取り囲んだ
「へへ、これで逃げられねえぜ!」
前方にいた盗賊が竹槍を突き刺そうとした瞬間、左近は日本刀を垂直に立て、竹槍を縦から真っ二つにした
「なっ!」
驚いた盗賊はそのまま斬られ、真っ二つになった竹槍はそのまま後方にいた二人組の盗賊の心臓に直撃した
「「ぐぁ!」」
「ば、化け物・・・・」
左近は竹槍垂直斬りを行い、一瞬にして3人の盗賊を殺したのである。最後の1人となった盗賊が左近を恐れ、逃げ出そうとした時、左近は手元に朱槍(投槍)を出現させ、逃げ出す盗賊に向けて投げた
「がはっ!」
盗賊の体は朱槍によって貫かれ、勢いよく飛び、そのまま岩に突き刺さった。盗賊はそのまま宙ぶらりんの状態で息絶えた
「ふう、またつまらぬ者を斬ってしまった。」
左近は日本刀を鞘に収め、馬車へ戻った。辺り一面、盗賊の躯と血溜まりに溢れかえっていた
「与一、そちらは何もないか?」
「ははっ!御両名とも無事にござる。」
「そうか。御二方、ワシがいいと言うまで外を見るな。盗賊どもの躯と血の雨だらけだからな。」
「は、はい。」
「はい、見ません!」
馬車の中へ返事をするルーミアとマリナに左近は与一と共に周囲を確認した後、馬車に乗り、出発した。その道中は何事もなく順調に進みつつ、天然の要害と呼ばれるほど険しい地形が続いた。その途中で、とある滝に差し掛かった
「サコン殿、この滝を過ぎれば、ルーミア様と私の故郷に到着します。」
マリナが馬車の中から声を発し、ルーミアも馬車窓口を開けて、滝を眺めていた
「この滝を見れたのは何年ぶりかしら。」
「えぇ、私も同感です。」
二人は懐かしさから、ウキウキした気分で故郷へ到着するのを心待にしていた
「もしかして、あれがそうか。」
ワシが指差す方向にルーミアとマリナは歓喜の表情で答えた
「はい、彼処が私たちの故郷です!」
「懐かしや、我が故郷。」
ルーミアとマリナはようやく安寧の地に到着することができてホッとしたようである。ワシらはそのまま進み、先程の険しい地形とは打って変わって、牧羊的な雰囲気を醸し出すほど穏やかな天候と地形が我等を出迎えた
「この先へ行けば、私たちの住んでいた町に到着します。」
「そういえばルーミア殿とマリナ殿は同じ故郷でも住んでいる場所は別なのか?」
「はい、ルーミア様と私は同じ町に住んでいても別々の地区に暮らしていたので、お互いの事を知らず、クリミア王国の神殿にて同郷だと知りました。」
「私もまさか同郷の人がいるとは知りませんでした。それがきっかけでマリナと馬が合い、仲良くなりました。」
ワシらは二人の出会いやこれまでの経緯を聞きながら進むと、とある町が見えた
「あの町です!故郷、【ビスカル町】です!」
マリナが馬車の窓口から顔を出し、目的の地に着いたことをアピールした。ワシらは町の前に止まると、そこへ門番が駆けつけた
「旅の者か!」
「あぁ、我等は・・・・」
「クランツ!」
ワシが名乗る前にマリナが門番に話し掛けた
「なぜ俺の名を?」
「私よ!マリナ・スカルノよ!」
「マリナ・スカルノよ?どこかで聞いたような?」
「だったら思い出させてあげる!あんたが寝小便して一緒に隠したじゃない!」
それを聞いたクランツという門番はアワアワと口を震わせながら顔を真っ赤にさせた
「ほんとに、あのマリナか!」
「だから言ってんじゃないのよ!寝小便垂れのクランツ!」
「その名で呼ぶな!」
クランツはようやく思い出し、一応、用件を伝えると門を開き、町へ入れた。すると町の人々が続々と門の前に現れた。そこへ町の代表者である町長のノリスという男が出迎えた
「ようこそ【ビスカル町】へ、私はこの町の町長を勤めるノリスと申します。外から客人がお越しになられるとは何年ぶりでしょうか。」
「こちらこそ歓迎痛み入る。」
「私としても驚きました。まさか聖女様自らがこの町にお越しになられるとは思いもよりませんでした。」
「いいえ、私は元はこの町で生まれ育ったのですから。」
「それは我等としても大歓迎です!」
町長の話だと、この町は聖女の伝承が残っており、多くの女子が修道院に入るため町を出たとか。ルーミアも聖女に憧れてこの町を出たとか・・・・
「ルーミア殿、まずは家に帰ろう、これからどうするかはその後で決めよう。」
「はい。」
ワシらはルーミアと共にルーミアの実家へ向かった。あれからずっと帰っておらず、現在はどうなっているのか分からない。ルーミアの家族はどうなっているのか、期待半分不安半分を胸に秘めて、ルーミアの実家へ向かった
「あ、ああ。」
ルーミアが見たものは、何も変わらずに今も残っている我が家だった。ルーミアにとっては懐かしい我が家に不思議と、涙が溢れた。ワシは懐から手拭いを出し、ルーミアに渡した
「あ、ありがとうございます。」
ルーミアは手拭いを受け取った後、涙を拭いた。するとルーミアの家の扉が開くと、40代くらいの女性が出てきた。その女性は左近らの姿を見て・・・・
「あの、ウチに何か御用でも?」
「ああ、ほらルーミア。」
「え、ルーミア。」
「た、ただいま、母さん。」
すると女性がルーミアに近づき、軽くルーミアの頬を撫で、そこから両手でルーミアの顔を触り始めながら・・・
「ほんとにルーミア・・・・」
「うん。」
「る、ルーミアアアアアアアアア!」
ルーミアを力強く抱き締め、久しぶりの我が子の帰還を喜んだ。何年ぶりの故郷への帰還と母との再会にルーミアも涙を流し、抱擁し返した。そして抱擁が終わり、会話が始まった
「ルーミア、お前、聖女に認定されて、王太子殿下の婚約者になったのに、なんでここに?」
「う、うん。ちょっと事情があってね。」
「不躾なところ、申し訳ないが・・・・」
「ん、あ、すいません、お客様がいらっしゃる前で・・・・」
「いいえ、こちらこそ突然お尋ねして申し訳ない。」
「申し遅れました。私はルーミアの母のヨーデルです。」
「某はサコン・シマと申します。こちらは某の配下のヨイチ・ソウマ、ルーミア殿と共に帰還したマリナ・スカルノです。」
「そうですか、さあどうぞ、中へ。」
ルーミアの母であるヨーデルに招きにより我等はルーミアの自宅へ入ると、そこへ一人の40代の男性が出迎えた
「ん、ヨーデル、御客さんか?」
「貴方、ルーミアが帰ってきたのよ!」
「え、ルーミアが!」
「ただいま、父さん。」
「ルーミア!本当にルーミアなのか!」
「う、うん。」
「貴方、御客さんが・・・・」
「あ、ああ、これは申し訳ない。私はコルトと申します。」
「某はサコン・シマと申します。こちらは某の配下のヨイチ・ソウマ、ルーミア殿と共に帰還したマリナ・スカルノです。」
ルーミアの両親と再会を果たしたルーミアとワシらは、とりあえず何があったのかを喋る前に一旦、休憩をするのであった




