34話:変心
島左近清興だ。我等は今、【ドリトル町】にいる。ルーミアが故郷へ向かう途中で高熱を発したのである。幸いワシらは解熱薬とポーションを持っていたおかげで重症には至らず、ルーミアは徐々に快方へ向かっていた
「左近様。」
「与一、どうだった?」
「はっ!今のところ、怪しき者は見当たりません。」
「そうか。」
この【ドリトル町】は四方を城壁で囲まれており、出入り口は1ヶ所しかない。追手が来るとしたら、そこしかなく与一に夜遅くまで見張りをさせていたのである。夜になると門は閉まる仕組みになっている
「それでルーミア嬢の様子は?」
「あぁ、徐々に快方に向かっているとのことだ。食欲も取り戻しつつある。」
「しかし追手はここまで来るでしょうか?」
「まぁ、来ないことを祈るしかあるまいて。」
その頃、追手は【ドリトル町】に到着したが既に夜になっており、門は閉まっていた
「門は閉まっているか。」
「仕方がない。ここで野宿しかないな。」
門外の旅人たちはテントを張っており、追手たちもテントを張り、朝が来るのを待っていた。そのころ左近と与一はルーミアとマリナのいる部屋を尋ねていた
「御気分の方がどうだ?」
「はい、今日は粥を残さず食べれました。」
「うむ、だが油断はするな、いつまたぶり返すか分からないからな。」
「はい、すいません。ご迷惑をおかけして・・・・」
「ルーミア殿、今は自分の体を治すことが先決だ。後の事は我々に任せられよ。」
「はい、ありがとうございます。」
「マリナ殿、ちょっと話が・・・」
「はい。」
ワシはマリナ殿を連れて今後の話をした。追手がこの町に来る可能性があるため、用事の方は改めて我等に任せて、なるべく外へは出ないように忠告した
「分かりました。」
「主らの顔を知る者がいるかもしれんからな、不便をかけるが・・・・」
「いいえ、王国を出た時から私は覚悟を決めていました。ルーミア様は心優しく国のために聖女の職務に尽力する御方です。その御方のためなら、この命、捧げる覚悟にございます。」
「マリナ殿はルーミア嬢を慕っておるのだな。」
「私だけではありません。神殿に所属している者は皆、ルーミア様を敬愛している者が多く、王国を脱出する際は力を貸してくれました。例え居場所を聞かれても全員知らぬ存ぜぬを通します。」
「左様か。」
「サコン殿らには御迷惑をおかけしますが、これからもよろしくお願いいたします。」
「心配無用だ、我等は全力を持って御守り致す。」
ワシらは明日に備えて、就寝し、そして朝が来た。与一は城門を開く前から起床し、先に行っていた
「さて奴等はどこまで来ているか。」
その頃、追手も起床し、城門が開くのを待ち、ついに城門が開いた
「おお、ようやく城門が開いたぞ。」
その頃、城門内にいた与一は城門を開いた同時に簡易的な食料と厠を用意し、門を見張った。そこから旅人が入っていき、一人一人注視した。そして追手の順番が来ると、与一の目が光った
「あれだな。」
与一の長年の忍びの勘が追手たちを見据えた。与一は早速、鳩を出現させ、手紙を足に括り付けて飛ばした。鳩は左近たちが泊まっている宿にめがけて飛び立った
「ん、あれは?」
左近は乾パンと金平糖を頬張りながら窓の外を見ると一羽の鳩が真っ直ぐこちらへ向かっていくのが見え、鳩はそのまま左近の泊まっている部屋の窓際に座った。足を見ると手紙が括り付けられていた。左近は早速、手紙をほどき、広げた
【追手5人きたる、これより追跡す。】
「ついに来たか。」
ワシは早速、ルーミアとマリナが泊まっている部屋を行き、扉をノックした。ノックの音に気付いたルーミアとマリナは、先にルーミアにベッドに隠れさせ、マリナは扉の門鏡を覗き、左近だと分かると鍵を開け、扉を開いた
「サコン殿。」
「追手が来た。」
「とりあえず中へ。」
それを聞いたマリナは左近を部屋に入れて、ルーミアに追手が来たことを報告した
「追手が!」
「与一は奴等を追跡しているところだ。そなたらは部屋には一歩出ないように。」
「分かりました。」
「それで追手はどうするつもりですか?」
「何事もなく過ごせれば良いが事と次第によっては始末する所存。旅の最中で行方不明になることはよくある事だからな。」
ワシは次の知らせが来るまで部屋で待機をしていると次の鳩が部屋の窓際に止まった。足に括り付けてある手紙を再びほどき、広げた
【追手5人は宿に泊まる】
「うむ、奴等は別の場所で宿を取ったようだな。」
ワシは与一が戻るまで待機していると、扉からコンコンと音がなり、門鏡を覗くと与一が待機していた。ワシは扉を開けて与一を迎え入れた
「左近様、ただいま戻りました。」
「で、奴等の居場所は?」
「はい、東方面の地区の宿に泊まりました。」
「そうか。」
「それで如何致しますか?」
「何事もなければいいが、事と次第によっては追手を始末するつもりだ。」
「左様にございますか。」
「とりあえずルーミア嬢の下へ行こう。」
ワシらはルーミアたちの部屋を尋ねた。マリナはすぐに我等を部屋に入れて、追手の所在を報告した
「そうですか。」
「ルーミア殿とマリナ殿は一歩も外を出ず、買い出しは我等に任せられよ。」
「心得ました。」
「某は追手の見張りをいたします。何か分かったら知らせますゆえ。」
「「よろしくお願いします。」」
一方、東方面地区の宿に泊まった追手たちは今後について話し合いが行われていた
「なあ、このまま逃亡しないか?」
「何を言うのだ、突然!」
「考えてもみよ、どこにいるかも分からないし、クリミア王国は天変地異で疲弊し、国民は他国へ逃亡している。このまま見つからなければ間違いなく国は滅びるぞ。」
「ううん。」
「確かに。」
「我等だけで逃亡したとしても他の追手たちはどうするんだ。我等が逃亡したとあれば、裏切り者として処断されるぞ。」
「旅の最中で行方不明になることは、よくあることだ。」
追手たちはルーミア・マリナ捜索を諦め、逃亡計画を着々と進めた。そのころ、他の方面の追手たちはどうなったかというと・・・・
「なあ、ここは逃亡しねえか。」
「貴様、何をほざいているんだ!」
「だってよ、いつ見つかるか分からないのに探す必要があるか?」
「これは王命だぞ!」
「王命っていたって馬鹿王太子が勝手に命じたんだろう、国が天変地異で疲弊しているのに従う必要があるか?」
「それはそうだが・・・・」
「だが他の部隊はどうするんだ?」
「なあに行方不明扱いにすればいいだろ。」
「使者はどうする?」
「殺せばいい、もうあの国に未練などないわ。」
追手たちはルーミア・マリナ追撃を諦め、使者の跡を追いかけた。そのころ、クリミア王国へ帰る途中で使者は迷っていた
「ううん、やはり逃げるかな。」
やはり使者もこのまま国に帰る事に抵抗を感じていた。国に帰っても天変地異で国は疲弊し、待っているのは馬鹿王太子であるソテロの逆鱗のみ、幸いにも自分は独り身で家族はいない。このまま逃亡しようとした矢先・・・・
「御使者殿!」
「ん、そなたらは。」
ルーミア・マリナ探索の任についていた追手たちだった。なぜここにいるのか尋ねた
「何しに来た?ルーミア嬢の探索は?」
「決まっておろう、御使者殿にはここで死んでもらう。」
追手は一斉に剣を抜き、使者を取り囲んだ。使者は突然の反逆行為に戸惑った
「き、気は確かか!」
「無論だ、我等はもはや馬鹿王太子の犬ではないわ!」
「ギャアアア!」
使者は追手の剣の錆となり、そのまま息絶えた。追手たちは使者の躯を隠した後、そのまま逃亡するのであった




