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33話:序曲

ルーミアとマリナの所在を掴めぬまま、【ガルバ町】に滞在していた追手たちは次第に町の人々から警戒され始めた。追手たちも自分たちを警戒する眼に気付きつつも、どうすることができずにいると、クリミア王国より使者が【ガルバ町】にやってきた。追手たちは早速、使者を招き入れ、クリミア王国よりの知らせを聞いた


「何!ルーミアを生け捕りにせよと。」


「ええ、ルーミア嬢を再び聖女に任命すると。」


「一体どういう風の吹き回しだ。」


「はい、実は・・・・」


使者が言うにはクリミア王国内で現在、天変地異が相次ぎ、現聖女であったモニカが雷にうたれ死亡した事が知らされたのである。追手たちはまさか祖国がそのような事が起きているとは知らずに【ガルバ町】で途方に暮れていたのだ


「それでルーミア嬢の手掛かりは?」


「ない。」


「な、ないですと!」


「ああ、この町の人間に聞いて回り、探索を続けたが、何一つ手がかりがなかった。」


「どうするのですか!このままだと国が滅びてしまう!こうなればクリミア王国以外の三方をくまなく探しなさい!」


「ちっ、分かったよ。」


追手たちはとりあえず三方向に向けて人数を割き、向かうのであった。その頃、島左近らはある問題に直面した


「ルーミア様!」


「うぅ。」


何とルーミアが途中で高熱を発したのである。とりあえず解熱薬とポーションを飲ませ、一旦安静にする他なかったのである


「一応、解熱薬とポーションを飲ませた。恐らく長旅の疲れが影響したのだろう。追手も心配だが今はこの娘の体を直す方が先決だ!」


「そうですね、やっと国を脱出したのに・・・・」


「マリナ殿、気持ちは分かるがルーミア殿を死なせてしまっては、せっかくの苦労が水の泡になる、ここは焦らず、ルーミア殿の治療に専念しよう。」


「はい。」


ワシらはルーミアの安否のために故郷へ向かわず、一旦近場の町へ休もうと決めた。羅針盤によって近場に町がある事が分かり、そこで医者の診断を受けることにした。町の名は【ドリトル町】という四方を城壁に囲まれた比較的大きな町だった


「まずは医者に見せてもらおう。」


町の人に病院の場所を教えてもらい、我等は真っ直ぐ病院へ向かった。ようやく病院に辿り着き、幸運にも他の患者がおらず、すぐに診察を受けることが出来た


「恐らく過労でしょうね、消化が良く栄養のある物を食べさせて、休ませれば治ります。解熱薬とポーションを服用したおかげで軽症にとどめています。」


「そうでしたか、ありがとうございます!」


マリナも安心したのか、その場で座り込んだ。医者から薬を貰い、宿を手配しそこで休ませることにした。ワシと与一、ルーミアとマリナと別々に部屋を取ることにした。流石に男女一緒の部屋はマズイので用事がある以外、別々の部屋で過ごすことにした


「左近様、追手は来ますかね?」


「まあ変装はさせているが、あの二人の顔を知っている者がいれば、厄介だな。」


「町自体も大きく、人混みに紛れれば身を隠すことは可能だが、人が多すぎてどれが追手なのかも判別しにくい、その前にルーミア嬢が一日でも早く快方に向かえばよいが。」


左近たちが【ドリトル町】に滞在する一方、【ドリトル町】方向の道には追手が迫っていた。昼夜問わず駆け回り、血眼になって探し回っていた


「この先は【ドリトル町】だ、まずはそこへ休息を取ろう。」


「そうだな、まずは買い出しをせねば・・・・」


運悪く追手も【ドリトル町】へ向かっていた。左近たちはこのまま追手と鉢合わせをせずに済むのか・・・・





その頃、クリミア王国では国民の国外逃亡が相次ぎ、軍を使ってまで押し留めていた


「くっ!恩知らずどもめ!」


「如何なさいますか?」


「決まっておる!国外逃亡を企てた者は処刑せよ!」


「いや、しかし。」


「しかしも案山子もない、即刻行え!」


「は、ははっ!」


命じれたものの役人殺しが多発しているため、ソテロの命は聞くふりをし、国民の逃亡を見逃していた。そう貴族や大臣の中にはもはやこの国は終わると確信し、領地へ帰還しようとする動きを見せ始めた。そうとも知らないソテロはひたすらルーミア捕縛の知らせを待ち続けた


「殿下!」


「どうした!」


「陛下の御呼びにございます!」


「ち、父上が!」


重病の床についていた国王であるホイットニー・クリミアが現れるのだった。ソテロはとりあえず父のいる部屋へ向かった


「殿下、お待ちしておりました、さあ、中へ。」


従者に促されるままにソテロは中に入り、父に拝謁した。父の様子は病気で痩せこけていたが、表情は怒りに満ちていた


「父上、ご機嫌麗しゅう・・・・」


「何て事をしてくれたんだ!」


「ち、父上。」


どうやらホイットニーはルーミアがいなくなったことや、自分に許可もなく婚約破棄を断行した事に激怒したのだ。普段は息子に甘いホイットニーだが、今回の事でそうもいっていられなかったのだ。ソテロ自身もまさか父に叱られるとは思っておらず、困惑していた


「何のために聖女ルーミアをお前に娶せたと思っているんだ!」


「・・・・申し訳ありません。」


「婚約破棄だけではなく暗殺まで企んでいたとは!」


「そ、それは側近たちが勝手に仕向けたことで・・・・」


「喧しい!お前が直々に命を下したことはワシの耳にも届いておるわ!この大馬鹿者!」


「い、今は全力を持って探索を続け、生け捕りにする所存・・・・」


「見つかる前に国が滅んでいなければよいがな。」


「・・・・うぅ。」


息子の情けない姿に父であるホイットニーは昔を思い出し、溜め息をついた


「はぁ~、王妃が亡くなって、1人取り残されたお前を不憫に思ってつい甘やかしたが、こんな事になるとは・・・・」


親心ゆえ息子の我が儘を許してしまい、結果、クリミア王国が崩壊の危機に瀕している事に、ホイットニーは心底、後悔していた。こんなことだったら厳しく教育すれば良かったと・・・・


「もう国は終わりだな。」


「父上、必ずルーミアは見つけだします!」


「ソテロよ。」


「は、はい!」


「お前に王位を譲る、ワシは隠居することにした。」


父から突然の譲位宣告にソテロは困惑した。今にも国が崩壊寸前なのに父は国王の職務を勝手に放棄したのだから・・・・


「父上、何を勝手な・・・・」


「もうワシは疲れた。ワシは国王としても1人の父親としても失格だ。」


「だからルーミアを連れ戻そうと・・・・」


「戻らぬよ。お前がルーミアを暗殺しようとした事がルーミアの耳に入ったから逃亡したのだ、いい加減諦めよ。」


父から弱気な発言を聞いたソテロは・・・・


「終わってない!私はまだ諦めるつもりはない!」


「そうか、勝手にしろ。ワシも勝手に致す。」


「父上、私はまだ王位を継承するつもりはありません!では私は忙しいのでこれで・・・・」


ソテロはそのまま部屋を出ていき、取り残されたホイットニーは・・・・


「すまぬが1人にしてほしい。」


「へ、陛下。」


「頼む。」


側近たちを部屋を退出させた後、重病の体に鞭を打って、ホイットニーは立ちあがり、剣掛け台に向かった。ホイットニーは掛け台から剣を取り、鞘を抜いた。手入れをされており、剣は鏡のように反射し、自分の顔を写した


「我ながら醜い顔だ。」


重病を患い痩せこけた顔にホイットニーは、剣を自分の首筋に当てた


「御先祖様、申し訳ありません。あの世にて御詫び致します。」


ホイットニーは頸動脈を切り、自害した。ホイットニーが自害したことを知ったソテロは呆然としたが、そのまま国王の座に就くが、誰からも祝いの言葉がなく、国の崩壊が進むのであった

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