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31話:聖女

島左近清興だ。ワシは与一と急遽、ある人物の護衛をすることになった


「道中の警護を担う事になったサコン・シマだ。」


「サコン様の配下のヨイチ・ソウマだ。」


「よ、よろしくお願いします。」


護衛をする人物は元聖女ルーミア・アスファルト、年齢は10代後半、金髪碧眼、身長は155㎝の色白の美少女である。彼女は元は修道院に勤務する修道女の一人であるが、神託によって聖女に選ばれたのであるが、ある事がきっかけで聖女を辞めさせられたのである


「ルーミア様、共々、よろしくお願いします。」


もう一人は聖女だったルーミアに仕え、ルーミアが姉のように慕う修道騎士のマリナ・スカルノ、年齢は20代前半、赤髪金眼、身長は160㎝の色白の美人である。実はルーミアと同じ故郷出身で、ルーミアと共に故郷へ帰るのである


なぜ彼女たちの護衛を務めることになったのか、ワシらは尋ねると、ルーミアはありのままを教えてくれた


「婚約破棄にござるか。」


「は、はい。」


「婚約破棄が流行っておるのか、この世界は・・・・」


聖女に選ばれたルーミアはクリミア王国を治めるホイットニー・クリミアの息子であり、王太子であるソテロ・クリミアと強制的に婚約したが、ソテロは浮気相手を聖女にしようと画策し、ルーミアに濡れ衣を着せて、婚約破棄を断行したのである。肝心の国王は何をしていたかというと重病の身だったため、王太子の独断を止めることができなかったという。聖女を辞めさせられたルーミアは何とか故郷を戻るためギルドに依頼した。その護衛役に選ばれたのがワシらと言うことである。というか他の者は別の任務で出払っており、ワシらしかいなかったのだ・・・・


「聖女殿も大変苦労しておりますな。」


「いいえ、それに私はもう聖女ではありませんので、名前で呼んでください。」


「分かりました、ルーミア殿。」


「ではルーミア殿、故郷までの道中、御供仕る。」


「よろしくお願いします。」


「ルーミア様、故郷までの道中、クリミア王国からの追手が来るやもしれません。くれぐれも聖女だと、ばれないようにご注意のほどを・・・・」


「は、はい。」


どうやら王太子であるソテロは婚約破棄の上でルーミアを暗殺しようとしたらしい。それを知ったマリナはルーミアを連れて密かにクリミア王国を脱出したのである。道中、追手から身を隠しつつ、女の二人旅を始め、何とかガルバ町に到着したのだとか・・・・


「それにしてもソテロという男は執念深い輩ですな。婚約破棄をした上で暗殺などとは・・・・」


「はい、どうやら王太子の寵愛を得たい側近たちが讒言したものと思われます。王太子殿下は忠言する家臣を遠ざけ、甘言を弄する輩をそばに置きますゆえ・・・・」


「肝心の国王は王太子の所業を放置されておられたのか、病の身になる前から止めることができたものを・・・・」


「国王様はソテロに甘く、それをいいことにソテロが頭に乗っておられるのです。」


「国王も王太子もろくな人間ではござらぬな。」


ワシも与一もクリミア王国はいずれ滅亡すると悟った。国を背負う立場のある者が、己の私欲のために国を滅亡へ導く。ワシが現世にいたころ、太閤秀吉公御存命の頃に起こった実子である鶴松と豊臣秀頼の出生疑惑、朝鮮出兵、関白秀次公の切腹、秀次公とその一族を処刑するなど、晩節を穢したのである


「ルーミア殿、マリナ殿、とりあえず服装を変えたほうがいい、それに髪型もな。」


「そうだな、一旦【イザナミ】へ行くか。」


「あの【イザナミ】とは?」


「娼館だ。」


「「娼館!」」


「勘違いするな、主らの髪型と服装を別人にしてもらうんだ。」


ワシらは一旦、二人を娼館【イザナミ】へと連れて行くことにした。二人は最初、警戒したが、そこで衣装と髪型を変えるのだと説明し、二人は素直に受け入れた。【イザナミ】に到着すると、そこへアリーナとユカリが出迎えた


「あら、旦那。」


「サコン殿、どうしたのです?それにそちらの二人は?」


「ああ、この二人の衣装と髪型を変えてくれないか?道中までの警護のためにな。」


「分かりました。こちらへ。」


アリーナとユカリはワシが任務で動いていることに気付き、ルーミアとマリナを【イザナミ】に招き入れた。ワシと与一は【イザナミ】の待合室で茶を飲みながら待つと、二人が現れた


「ど、どうですか?」


「うむ、それならばれずに済むな。」


ルーミアとマリナの髪型が変わり、髪色も黒く染められ、服装も旅装束に変わっていた


「なんだか不思議な気分です、まるで別人みたい。」


「私もです。」


ルーミアもマリナも鏡を見た時、一瞬誰と思い、思わず二度見したらしい。アリーナは念入りにやってくれたらしく、二人は礼を言った


「「ありがとうございます。」」


「礼を言うなら旦那に言っておくれ。」


「「はい、ありがとうございます。」」


「礼を言うなら目的が済んでからだ、道中は危険だからな。」





一方、クリミア王国では国王代行を務める王太子、ソテロは未だにルーミアが見つからないことに苛立っていた


「まだ見つからぬのか!」


「ははっ!」


「くそ!」


「殿下、まだ見つからないのですか?」


そこへ浮気相手であり現聖女のモニカ・サラマンドが現れた。ソテロは愛しの人が現れた事で機嫌が良くなり人目を気にせずいちゃつき始めた


「まだ見つからないんだ。」


「ルーミアがいる限り、私たちは安心して暮らせませぬ。」


「分かってる、あの偽物がいなくなったら、僕たちがこの国を治めよう。」


「約束ですよ♡」


「もう良い、下がれ。」


「ははっ。」


ソテロはモニカとの明るい未来を想像したが、神託によって選ばれたルーミアがいなくなったことでクリミア王国が神の怒りに触れたことを知る由もなかった


「おのれ、クリミア王国め、許さん。」


天空にいた神はクリミア王国が勝手に聖女を任命したことに激怒し、クリミア王国に天罰を与えるのであった。神の逆鱗にふれたクリミア王国では天変地異が起きていた


「ん、何だ?雪?」


田畑を耕していた農民が白い浮遊物を手にした。しかし冷たくなく、サラサラしていた。上空を見上げると、黒雲が天を覆い、白い浮遊物があちらこちらに振っていた


「これ雪じゃないぞ。」


「なんか砂っぽいな。」


「おーい!大変だ、クリミア山が噴火したぞ!」


「何だって!じゃあ、これは火山灰か!」


人々はクリミア山が噴火した時は天変地異の前触れという迷信を信じられていた。それだけではなく不作・不漁が連日続き、人々は聖女に助けを求めるのであった


「何、天変地異が連日、続いているだと?」


「はっ!クリミア山が噴火した事がきっかけで各地で不作・不漁が続いていることにございます!」


「こうなればモニカに祈ってもらうほかない!」


ソテロは早速、モニカを呼び、王宮内で五穀豊穣の儀式を行った。モニカは儀式の手順通りに行い、生贄となる牛を殺したが、天から稲妻の音が響き渡った


「どうなってるんだ、これは!」


ソテロはますます天候が悪化する事態に驚く一方で、稲妻が落ち、モニカに直撃したのである


「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」


「も、モニカ!」


「殿下、なりません!」


「は、離せ!モニカが!」


ソテロは近衛兵たちの拘束を振りほどき、モニカの下へ向かった


「モニカ・・・・う!」


ソテロが目にしたのは体が黒焦げ、もはや誰なのかすら分からないほど原型を留めていないほど変わり果て息絶えたモニカの姿だった


「う、うおおお。」


ソテロは変わり果てたモニカの姿に我慢できず嘔吐した。現聖女が雷に打たれて死んだことで城内は神託を無視した天罰だと噂されるようになった


「くっ!すぐにルーミアを連れて参れ!」


「お、畏れながら。元聖女はもうこの国におりませんし、それに始末するよう命を受けて追手が向かっていますが・・・・」


「辞めじゃ!命を取らず連れ戻すのだ!」


ソテロは直ちにルーミア暗殺を中止し、生け捕りにするよう命じるのであった

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