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23話:脱獄犯

島左近清興だ。ガルバ町にて、ある手配書が配られた。そう指名手配されている名前、人相、背格好、特徴等を事細かに記されていた


「左近様、脱獄犯ですな・・・・・はあ~。」


「そうだな・・・・・はあ~。」


ワシらは指名手配書を見ながら、指名手配犯の名前を見て、ワシらは溜め息をついた。その指名手配犯の名前はチャブム・ブレス、元勇者である


「あの者、脱獄したのは聞いてはいましたが、指名手配書がここに届くということは奴は近くに来ているということですな。」


「ああ、できれば再会したくないな。」


「どういたします?」


「任務でここを離れるしかないな。」


「左様ですな。」


ワシらは任務を求めてギルドに立ち寄り、掲示板を見て、軽い任務ばかりの物しかなかった。ワシらは仕方なく、草刈りと牧場の柵の修理の任務をすることにした。理由としてはチャブムが収監されている元刑務所から遠く離れていたからだ。とにかくあの男と鉢合わせしないようにせねば・・・・


「サコンさん、この任務にするのですか?」


「左様だ。」


「あの、本当によろしいのですか?」


「構わん。」


ビルデは怪訝そうな顔でワシらを見つめた。ワシらはこの異世界で既に勇名を馳せており、危険な任務を難なくこなす歴戦の猛者と位置づけられていたことから、まさか軽い任務を受けるとは思わなかったのだ


「はい、受理しました。場所はここです。」


ビルデが渡したのは目的地の地図だった。地図を再び確かめるとチャブムがかつて収監されている刑務所とは正反対の場所にあり、ワシらとしては幸先が良かった


「よし行くぞ、与一。」


「御意!」


ワシらは意気揚々とガルバ町を離れ目的地へと進むのであった。一方、脱獄したチャブムはひたすらガルバ町へと一直線に向かっていた。その姿は不精髭を生やし、年齢よりも老けた顔つきをしていた


「くぅ!まさか僕が指名手配されるなんて誤算だった!」


犯罪者が脱獄すれば、どこの世界でも問題視されるのだが・・・・


「サコンさん、待っていてください!愛しのチャブムが参ります!」


肝心の左近がガルバ町から離れていることを知らずに向かうチャブム、その道中は険しいものだった


「おい、金を出せ!」


「邪魔!」


「ぶふ!」


途中から山賊の集団が現れ、金を要求されたがチャブムは意も介さず、山賊どもを血祭りにあげた。山賊たちは見た目が弱そうなチャブムに目をつけたが、蓋を開ければ、見た目とは裏腹に腕っぷしが強く、山賊は瀕死の状態まで追い込まれたのだ


「あぁ~、せっかく左近さんに会いに行くのにゲスどもの血で汚れちゃった。」


チャブムは山賊の返り血で汚れた衣服を脱ぎ始め、替えの服に着替えた。ちなみに替えの服は洗濯して干してあった服をぬす・・・・借りたのである


「やれやれ、警備隊から逃げないと行けないのに、山賊にも遭遇するなんて幸先悪いな。」


チャブムは血塗れの服を脱ぎ捨て、山賊も放置したまま先へ進んだ。ガルバ町へ行く手前にとある町を見つけたが、門には警備の兵士がいる。手配書が回っている事を知っていたチャブムは何とか入れないか思案していた


「どうすれば入れるかな。」


チャブムは迷っていると、偶然にも肥料に使う3つの肥溜め壺を大八車に運ぶ農民を見つけた。道筋を辿るとあの町へ行くようだ。しかも途中で休憩に入り、農民が遠くへ行ったようだ。これはチャンスと思ったチャブムは肥溜め壺を開けると3つの中で1つだけ空だった。チャブムはこれ幸いと中に入る。肥溜め壺の中で待っていたチャブムは、大八車が動き出した


「ん、今日は重いな。」


農民はやけに重くなったと気付きつつも、気のせいだろうと思い、町の門へと向かった


「肥料を取りに参りました。」


「よし、通ってよい。」


門番の許しを得て、町へ入っていった。農民は目的地へ到着した途端に止まり、大八車から離れた。農民が離れた瞬間、チャブムは隙を見て壺から逃げ出し、その場を逃走した。町さえ入ってしまえばこちらの物だ。チャブムはボロボロの羽織を着て、不精髭を生やした浮浪者の格好をした。そんな浮浪者の格好をしたチャブムに町の人々は近寄らずにいた。チャブムにとっては好都合だった。まさか脱獄犯がすぐ近くにいるとは思わないだろう。チャブムはガルバ町へ行く方面の向かうと、そこにはガルバ町へ行く方面へ行く門があった。試しに近づいてみると、門番は不在だったのでチャブムはすぐに門を出た


「上手くいったぞ♪」


チャブムは町を脱出し、あとはガルバ町へ向かうだけだった。しかしガルバ町にも手配書が配布されている可能性がある。チャブムはどうやってガルバ町に入るか画策をするのであった




島左近清興だ、現在、目的地の牧場にて草刈りと柵の整備をしていた。ワシは草刈り、与一は柵の整備をしていた


「ふう~。」


「おお、精が出ますな。」


そこへ依頼主であり、牧場主であるボブテスという老人である。彼自身、年のせいか体力も落ちて、草刈りも柵の仕事も苦になってきたという。報酬こそ安いが、乳(牛乳)、醍醐バターチーズヨーグルト、腸詰め(ソーセージ)、卵(鶏卵)等が手に入るため、ワシらは10年前に異世界に来て、この任務を受けたのだ


「これはボブテス殿、如何された?」


「昼食の準備ができたので、知らせに参りました。」


「もうそのような刻限か。忝い、与一、昼餉ひるげだぞ!」


「承知!」


ワシと与一はボブテスに案内され、昼餉をテーブルに置くボブテスの妻であるボムカという老婆が待っていた


「ワン!」


「サコンさん、ヨイチさん、お仕事ご苦労様、昼食をどうぞ。」


「「忝い。」」


ワシらはボブテス&ボムカ老夫婦と牧羊犬のラッシーと一緒に昼餉を一緒に食べた。出された昼餉はパン、サラダ、クリームシチューなる料理である。クリームシチューなる料理は牛の乳に、馬鈴薯、人参、玉葱、獣肉を入れて煮込んだ料理である。ワシらもこの異世界で初めて味わったが、これほど美味な物があったのかと衝撃を受け、カレーライスと共に大好物になった。それを食べながら、世間話をした


「いやあ、まさか彼のサコン・シマさんらが引き受けてくださるとは思いもしませんでしたな。」


「我等も牛の乳が恋しくなりましてな、この仕事をお引き受けした次第でござる。」


「心配しなくても御礼に差し上げますよ。」


「それは忝のうございます。」


「いいえ、お引き受けしてくれたおかげでワシらは助かりました。息子夫婦と孫らが出稼ぎに出ていましてな、ワシら夫婦も困っておりましてな。」


「息子夫婦らは出稼ぎに出ておるのか?」


「ええ、牧場の経営だけでは食っていけませんからな。牛や馬や山羊や羊や豚や鶏等の餌代もかかりますし、牛たちを狙う獣もいて、様々な獣避けをしていますから・・・・」


「確かに、最近は物騒になりましたからな、ワシらも任務の途中で山賊や盗賊の他に、肉食の獣やらと遭遇しますからな。特に熊は人と違って無駄に頑丈ですからな。」


「熊ですか、そういえば最近、この近くで親子連れの熊を見かけましたね。」


「親子連れの熊?」


ボブテス夫婦から聞いた話だが、仕事中に親子連れの熊を見かけたらしい。老夫婦はマタギ(猟師)に頼んで駆除をお願いしたのだが、親子熊はなかなか見つからずに終わったそうだ


「ふうむ、その熊、特に親熊は賢いかもしれんな。」


「左様ですな、マタギたちの追跡を振り切って逃げ切る等、その熊、なかなかやりますな。」


ワシも与一も、その親子熊はマタギたちの追跡を掻い潜った事を褒めつつ、放っておけば厄介な存在になりつつあることを予感した。すると牧場の方から大量の羊たちの鳴き声が聞こえた。すると牧場犬のラッシーが牧場に向かっていく


「ラッシー、どうしたのじゃ?」


「ワシと与一が向かうのでここでお待ちくだされ!」


ワシと与一は牧場の方へ駆け足で向かうと、そこには羊を襲う熊がおり、ラッシーは必死に吠えていた


「ワン!ワン!ワン!」


「左近様!」


「うむ。」


ワシらは草刈りや柵の修理の他に、独断で熊退治をするのであった




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