20話:幕切れ
島左近清興だ。我等はジュリアス王国の間者が潜んでいる隠れ家に潜入し、そこで間者2名と遭遇し、ワシが先頭にたって間者二人を刺し殺した。そこへカリンと思われる女子の間者らが現れた
「何者だ!」
早速、ワシが何者か聞いてきた。ワシは朱槍は振るいつつ、静かに名乗ることにした
「我が名はサコン・シマ。」
ワシが名乗った瞬間、連中の顔が更に強張り始めた。どうやらワシの事を知っているようだな。まあそれは置いといて、一つカマをかけるか
「主らの母国であるジュリアス王国の野望、ここで終わらせてやる。」
「くっ!」
「待て!」
ワシがそういうと連中の顔が歪んだ。どうやら間違いないようだな。すると黒装束の一人がワシに斬りかかってきた。カリンの制止を振り払ってまで口封じがしたいようだな、だが遅い!ワシは短槍を手足の如き扱い、すぐに賊を刺し殺した。ワシが刺し殺したと同時にベルら騎士たちが駆け込んだ
「我等はブリュッセル辺境伯家の者である。賊ども、神妙にしろ!」
ベルの号令とともに騎士たちは剣を抜いた
「くっ!知られたからには全員、殺せ!」
それと同時にカリンが号令を放ち、自分たちの得物を用意し、ついに戦闘に入った。騎士と黒装束らが互いの武器を持って激突した。騎士と黒装束たちは武器と武器がぶつかり合い、刃毀れし、血脂で剣が切れなくなり、武器を捨てる。両者の間には血の雨が降り注いだ。与一も忍刀を使い、黒装束らを瞬殺していった
「カリンとやら、もはやお主たちの野望は終わったのだ。」
「終わって等おらん!主が死んでもその遺志は消えぬ!終わらせぬ!」
「終わらせる、ワシの手でな。」
ワシは朱槍を振るい、カリンも自分の得物である戦闘用の大型刃物【大型ナイフ】を取り出した。カリンは巧みなナイフ捌きでワシを惑わそうとした。ワシも間合いを取りながら、朱槍【短槍】を振り回す。個人戦や室内戦等の閉所では短槍の方が有利に働くが、カリンの持つ大型の刃物も個人戦や室内戦に向いている。ワシらは互いに間合いを取りあいながら、徐々に近づく
「ふん。」
「はっ!」
ワシの朱槍【短槍】とカリンの大型刃物【大型ナイフ】が激突した。ワシは朱槍をカリンの大型刃物にぶつけた。武器と武器とぶつかり合い、火花が散った。ワシは槍をぶつけてカリンの持つ大型刃物を刃毀れさせようとした。刃毀れしたら、斬れなくなるので徹底的にぶつけた
「くっ!」
カリンは一歩、後ろに下がり、自分の得物を注視した
「ちっ!」
どうやら刃毀れがあったようだ。カリンは得物を仕舞い、次の大型刃物を取り出した。するとカリンは今までと打って変わり、足捌きが早くなった。そして驚くべき瞬発力でワシに接近し、大型刃物を振り回したが、ワシは辛うじて皮一枚で避け切った
「ん。」
いつの間にか腕に掠り傷ができており、傷口から血が流れた。痛みもなく傷をつけるとは。向こうも本気を出してきたようだ。相変わらず人を惑わせるような巧みな捌きだ。ワシは槍の撓りを生かしながら、間合いを詰めていった
「はっ!」
カリンは先程の瞬発力で再びワシに接近し、巧みな刃物捌きで攻撃をしてきた。ワシも槍の撓らせ【柄】による攻撃を展開した。武器の長さ的にワシの方が勝っており、【柄】はカリンの脇腹付近に当たった
「ぐう!」
カリンは激痛で顔を歪めた。肋骨には当たっていないものの、肉体には相当なダメージを負ったようだ。すると懐から注射を取り出し、腕に指した
「ふう~。」
注射し終わった後、何事もなかったように再び襲い掛かった。先程の大怪我を負ったにも関わらず巧みな刃物捌きを展開する
先程の刺針は治療用の物か!ワシは朱槍を撓らせ、再び刃物にぶつけ、刃毀れさせようとした。だが向こうもワシの狙いを分かっていたのか、再び後退した
そこからは駆け引きである。互いに距離を詰めつつ、機会を伺っていた。ワシらは互いの額に汗が溢れ、1滴の汗が地面に落ちた瞬間・・・・
「「はぁ!」」
互いに動いた。先に動いたのはカリンの方で瞬発力を生かし、大型刃物を突き付けた。しかも真正面である。このままいけば体にそのまま突き刺さるが、ワシは円を描くように回転し、大型刃物を間一髪で避け、ワシは朱槍の【穂】近くまで一旦離してから再び握りしめ、カリンの脇腹に刺した
「グアアアアアア!」
カリンは悲鳴を上げ、手に持っていた大型刃物を落とした。ワシは素早く槍を戻し、後退し、間合いを取った。カリンの脇腹から血が溢れ出し、地面に膝がついた。するとカリンは先程の刃毀れした大型刃物を取り出した
「それで戦うつもりか?」
ワシが尋ねるとカリンは鼻で笑った
「ふっ!貴様の手にかかるくらいなら、ふん!」
カリンは大型刃物の先端で自分の首の刺した。刺した部分から血がドバッと溢れ出し、そのまま息耐えた
「自ら命を絶ったか。」
ワシは片合掌をし、カリンの冥福を祈った。女子の身なれど自分の母国のために忠義を貫いた忠臣であることには変わりない
「左近様!」
そこへ与一とベルら騎士たちが駆けつけた。与一も多少の掠り傷を負い、ベルら騎士たちも包帯等で巻かれた状態で人数が減っている。こちらも無事ではないようだ
「討ち死にした者は?」
「はい、3人ほど戦死しました。」
「・・・・そうか。」
「サコン殿、ロゼオ元王太子は!」
そうだ、あのロゼオ元王太子が捕まっておった。ワシらは先へ進み、ある部屋にたどり着いた。ワシは朱槍を構えつつ、与一が扉に手をかけ、互いに合図を送り、与一は力強く開けた
「あれは。」
ワシが目にしたのは柱に縛られた状態の一人の若者が立っていた。しかし身体中、鞭で叩かれたのか、衣服が破れ、血痕が残っており、痛々しい状態だった。それを見たベルは・・・・
「サコン殿、ロゼオ元王太子です!」
どうやら行方不明の元王太子のようだ。ワシらはすぐに回復用のポーションを飲ませた。かなり衰弱しており、足の筋が切られていたため、二度と歩ける状態ではなかった。ロゼオは担架で運ばれ、近くの病院へと運んだ。衰弱しているが命に別条はなく、安静している状態である。ロゼオの救出を知らせるためベルが使者として王宮に派遣された。数刻が経ち王宮の使者が駆けつけ、身元を確かめると間違いなくロゼオ元王太子だと確認が取れた。ベルと使者はロゼオについて話し合っていた
「元王太子殿下は今は安静にしなければいけないので一旦はこの病院に預けましょう。」
「左様か。陛下にはそのように報告いたします。」
使者が王宮に戻り、国王でありロゼオの父であるロバートにロゼオが救出された事や、命に別状はないが足の筋を切られ歩行困難等の重傷を負っていることも報告した
「・・・・そうか、ご苦労。」
ロバートは一言だけで済ませた。現王太子であるロミオを含め、周囲の大臣らはやはり廃嫡した我が兄(息子)の所業を未だに許せずにいると思っていた
「(・・・・親不孝者が。)」
そのころ、ジュリアス王国では未だに御家騒動が続いていた。第2王子であるジルト・ジュリアスは亡き父の遺志を継ぐべく、兄であるギルトから王太子の座を奪い、やがて国王になるべく暗躍し続けた
「で、状況はどうなってる?」
「ははっ!我が方が優勢にございます!」
「ふふふ、兄上も俺に王太子の座を譲れば命だけは助けてやるのに、さて。」
「殿下、どちらへ?」
「トイレだ。」
ジルトはそのままトイレに入り、小便をした。ジルトが小便をしていると天井の戸板を外れ、隠密がのぞき込んでいた。隠密が糸付きの毒針を用意し、ジルトの首にめがけて放ち、毒針が首筋に当たった
「ん。」
すぐに毒針を回収し天井の戸板を戻した。ジルトは首をさすりながら、何事もなく部屋へ戻った。その後、ジルトは食事を取っている途中・・・・
「うう!」
「殿下、如何なさいましたか!」
ジルトは突然、苦しみだし、そのまま倒れた。すぐに医者を呼んだが、時既に遅く、ジルトは息絶えていた。ジルトが死んだことで、ギルト側が勝利し、この御家騒動は終焉を向かうのであった




